米国株、トランプ関税で再び波乱 S&P500急落 エヌビディア8%安
S&P500は3日に1.76%安となり2か月半ぶりの急落。メキシコ、カナダ、中国への高関税が悪材料となった。製造業の景況感も悪く、株価の見通しは暗い。

アメリカの株式市場が高関税政策への不安で揺れた。S&P500種株価指数の3日の終値は前週末比1.76%安で、2か月半ぶりの急落。ドナルド・トランプ大統領の発言で、メキシコとカナダからの輸入品への高関税が4日に発動される確度が高まったことが投資家心理を冷やした。トランプ氏は中国製品への追加関税引き上げも決めている。また、株式市場の見通しへの不安は、製造業の景況感指数が市場予想を下回る結果だったことでも高まった。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は8%超の値下がりで、大手ハイテク株もそろって下落している。米国の株式市場では注目経済指標の発表が相次ぐだけに、S&P500の今後の見通しをめぐっては、投資家心理の悪化で下押し圧力がかかりやすい状況が続きそうだ。
アメリカのS&P500は1.76%安 2か月半ぶりの急落
S&P500(SPX)の3日の終値は5849.72。下落率の1.76%安は2月21日の1.71%安を超え、2024年12月18日(2.95%安)以来の大きさとなった。2月19日の最高値(6144.15)からは4.79%安の水準で、1月14日(5842.91)以来の安値だ。ブルームバーグによると、長期金利(10年物国債利回り)は4.156%まで下がり、12月6日(4.154%)以来の低さとなっているが、株価への追い風にはなっていない。

メキシコ、カナダへの高関税は4日発動へ 中国への追加関税も引き上げ
S&P500の見通しを暗くしたのはトランプ氏の高関税をめぐる発言だ。トランプ氏は3日、ホワイトハウスで記者団に対して、4日発動が予定されているメキシコとカナダからの輸入品に対する25%関税について「協議の余地は残されていない。明日の発動が決まっている」と述べた。トランプ氏はその後、中国からの輸入品に対する追加関税の税率を2月4日に発動した10%から、20%に引き上げる大統領令に署名している。米国の貿易相手国の上位3か国に対する高関税は自動車をはじめとする米国の製造業のサプライチェーンに悪影響を及ぼす可能性がある。
こうした懸念は製造業の景況感にも影響しているようだ。米サプライマネジメント協会(ISM)が3日に発表した2月の製造業景況感指数(PMI)は50.3。ブルームバーグがまとめた市場予想の50.7を下回った。新規受注のほか、雇用に関する指標も悪化しており、製造業各社が先行きへの警戒を強めている可能性がある。

エヌビディアの株価は8.69%の急落 マグニフィセント・セブンがすべて値下がり
見通しの不確かさは投資家のリスク回避姿勢を強めた。人工知能(AI)ブームの立役者であるエヌビディアの株価(NVDA)は3日、前週末比8.69%安の急落。このほか、巨額のAI投資を続けてきた大手ハイテク株の中では、アマゾン・コム(AMZN)が3.42%安、マイクロソフト(MSFT)が2.14%安となっている。欧州市場での販売不振が悪材料になっている電気自動車(EV)大手のテスラも2.84%安となるなど、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社の株価がそろって下落した。


VIX指数は12月中旬以来の高さ S&P500の見通しには雇用統計など注目指標も
投資家の株価の見通しに対する不安の大きさは、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の値動きからも明らかだ。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの3日の終値は前週末比16.05%高の22.78で、2024年12月19日(24.09)以来の高さ。VIX指数はS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが激しくなることへの警戒感が強いことを示す。

S&P500の今後の見通しをめぐっては、5日にISMが発表する非製造業(サービス業)のPMIも注目される。また6日発表の週次の失業保険関連統計や、7日発表の2月雇用統計などで労働市場の悪化が感じられた場合には、投資家のリスク回避姿勢はますます強まりそうだ。S&P500は2023年に24.23%高、2024年に23.31%高という大きな上昇率を記録しただけに、トランプ政権下での不確実性が強まる中、さらに値上がりが続いていくことへの自信が後退していくことも想定される。
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