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米国株急落 S&P500、利下げ見通し後退重荷 エヌビディア転落継続

S&P500は18日に2.95%安。エヌビディアは5日続落となった。FRBの利下げ見通しが要因で、トランプ次期政権が波乱要因になる可能性も懸念される。

米国株急落 S&P500に利下げ見通し後退重荷 エヌビディア転落継続 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場が急落に見舞われた。S&P500種株価指数の18日の終値は前日比2.95%安で、約4か月半ぶりの下落率。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)も5営業日続落となるなど、投資家心理が大幅に悪化している。急落の要因は米連邦準備制度理事会(FRB)が18日に2025年の利下げ回数の見通しを2回に引き下げたこと。ジェローム・パウエル議長は9月以降に急激に利下げを進めたことを踏まえ、今後はペースダウンするのが自然だとしている。一方、パウエル氏は米国経済の好調さも強調しており、株式市場をめぐる環境が大幅に悪化したわけではない。ただし、2025年1月に就任するドナルド・トランプ次期大統領の政権運営は経済環境を大きく揺るがすとみられ、FRBの利下げへの慎重姿勢はS&P500の今後の見通しの不確かさを予感させている。

アメリカのS&P500は2.95%安 長期金利は5月末以来の高さに

S&P500(SPX)の18日の終値は5872.16で、14営業日ぶりに6000の大台を割り込んだ。下落率は、雇用統計の悪化が円高やキャリートレードの巻き戻しにつながった8月5日(3.00%安)以来の大きさだった。また、ブルームバーグによると、18日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.516%で、5月30日(4.547%)以来の高さ。長期金利上昇は株式の投資先としての相対的な魅力を下げ、S&P500にとっての逆風といえる。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

エヌビディアは5日続落で最高値から13.41%安 VIX指数も急上昇

大手ハイテク株では、2024年のS&P500の上昇の原動力となってきたエヌビディアの株価(NVDA)が18日に前日比1.14%安となり、5営業日続落。11月7日の最高値(148.88ドル)からの下落率は13.41%に広がった。このほか電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)は8.28%安、アマゾン・コム(AMZN)は4.60%安となるなど、マグニフィセント・セブン株はそろって下落している。

エヌビディア、テスラ、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、アルファベット、アップル、マイクロソフトの株価の推移のグラフ

株価急落は投資家心理を悪化させた。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の終値は27.62で、前日から11.75ポイント上昇。8月7日(27.85)以来の高さとなった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数値が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを意味する。

VIXとS&P500の推移のグラフ

FRBは2025年の利下げ回数の見通しを2回に 3回連続利下げで中立金利に接近

S&P500急落の引き金を引いたのは、FRBが示した2025年の利下げ見通しだ。FRBは18日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げを決め、政策金利を4.25 -4.50%に設定。同時に、FOMC後に示した経済見通しでは2025年末の政策金利の水準が3.9%になるとし、0.25%利下げが2回行われるとの方向性を示した。FRBが9月に示した経済見通しでは4回の利下げが想定されていた。利下げ見通しの後退は米国の金利の先高観を強め、S&P500にとっての下落圧力になった形だ。

FRBの利下げ見通しの変化

パウエル氏は18日の記者会見で、FRBが9月以降の3会合連続での利下げで政策金利が1%ポイント下がり、景気を冷やすことも刺激することもない「中立金利」に向かって前進したことを強調。これまでの利下げペースが急激だったことを踏まえれば、今後のペースが緩やかになることが自然だとの考えを示した。同時に政策金利の水準は「依然として引き締め的だ」として、今後の金融政策の変更は引き続き利下げ方向であることも示唆している。

物価上昇率の横ばいや労働市場の堅調さを強調 利下げを急がない姿勢

また、FRBの慎重姿勢の背景には物価上昇の根強さもある。パウエル氏は記者会見で、11月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率が総合指数で前年同月比2.5%、食品とエネルギーを除いたコア指数で2.8%になるとの見通しに言及。「物価上昇率は横ばい状況にある」と述べた。パウエル氏は同時に、失業率が低位で安定していることなどを踏まえ、「米国経済は極めて良い状態にある」とも繰り返し、利下げを急ぐ必要がないとの立場も示した。「労働市場が健全である限りは、追加利下げを考慮する際に慎重でいることができる」とも話している。

アメリカのPCE物価指数(総合、コア)の伸び率の推移のグラフ

トランプ次期政権は経済の不確定要素 S&P500の見通しにも影響か

パウエル氏が米国経済の健全さに太鼓判を押していることは、S&P500にとっては安心材料だといえる。ただし2025年1月20日に大統領に就任するトランプ氏は即座に関税引き上げや不法移民対策を打ち出すとしており、米国経済に起きる波乱が大きくなる可能性は拭えない。パウエル氏はトランプ氏の政策の影響は具体的な内容を踏まえて包括的に検討する考えだが、トランプ氏の政策と金融政策の変化はS&P500の今後の見通しにとって大きな不確定要素だといえそうだ。


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