米国株の反発見通しは? S&P500週次続落 エヌビディアは下落停止
S&P500は週次で1.99%安。FRBの利下げ見通し後退が悪材料となった。エヌビディアの下落は止まったものの、トランプ政権発足への不安も強い。
アメリカの株式市場をめぐる懸念が続いている。S&P500種株価指数の20日の終値は1週間前に比べて約2%安で、2週連続の値下がり。米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ見通しを後退させたことが投資家心理を一気に冷やした結果だ。一方、不振が続いていた半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)は週次でのプラスを確保。また、20日には長期金利(10年物米国債利回り)の上昇が10営業日ぶりに止まり、反発への期待も感じさせている。ただ、ドナルド・トランプ次期政権の発足を1か月後に控える中、政治や経済をめぐる環境が大きく変化する可能性は高まっており、S&P500の今後の見通しには不安定さがつきまとうことになりそうだ。
アメリカのS&P500は週次1.99%安 長期金利は4.5%まで上昇
S&P500(SPX)の20日の終値は1週間前比1.99%安の5930.85。エヌビディアの下落が重荷となった前週(9-13日)の0.64%安から、週次での下落が加速した。S&P500は6日、2024年に入って57回目の最高値更新で6090.27まで上昇していたが、勢いが失われた形だ。ブルームバーグによると、長期金利は19日に4.564%まで上がり、5月29日(4.614%)以来の高さになった。金利水準の高さは株式の投資先としての相対的な魅力を低くする株安要因とされる。
FRBの利下げ見通し後退が重荷 エヌビディアは週次での上昇確保
S&P500の見通しを一変させたのはFRBの金融政策の方向性だ。FRBは18日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続での利下げを決めつつ、2025年の利下げ回数は2回に留まるとの見通しを示した。FOMC前の金融市場では2-3回の利下げが見込まれていただけに、予想よりも利下げに消極的な姿勢が示されたことになる。18日の金融市場では長期金利が前日比で0.116%ポイント上昇し、S&P500は前日比で2.95%安となった。
一方、S&P500の下落には歯止めがかかったかにもみえる。20日の終値は前日比でみれば4営業日ぶりの反発となる1.09%高で、大統領選挙後にトランプ氏の政権運営への期待の高まりが続いていた11月8日(1.12%高)以来、1か月半ぶりの上昇率。不振が続いていたエヌビディアの株価(NVDA)は20日まで2日続伸となり、週次では0.34%の値上がりを確保している。
また、長期金利も20日は前日比では0.037%ポイントの低下で、10営業日ぶりに上昇が止まった。CMEグループのデータによると、金融市場で見込まれている2025年の利下げ回数は1回が優勢になっており、FRBが示した見通しよりも利下げ期待が弱まっている形。こうした金融市場の動きが過剰反応だとすれば、今後の長期金利には下落傾向が出ることになる。さらにシカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の20日の終値は18.36で、18日につけた27.62からの低下が進んでいる。
トランプ氏の政権運営は波乱要因になる見通し 債務上限問題が火種に
ただ、米国経済が物価上昇の鎮静化と景気後退の回避を両立させるソフトランディング(軟着陸)を実現する見通しには陰りもみえる。20日に発表された11月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数で前年同月比2.4%となり、前月の2.3%から上昇。食品とエネルギーを除いたコア指数では前月と同じ2.8%だったが、横ばい傾向から抜け出せていない。
さらに2025年1月20日に大統領に就任するトランプ氏の減税路線や規制緩和は株価上昇要因とみなされている一方、高関税や不法移民対策の強化は経済の波乱要因でもある。エヌビディアの株価の下落の背景には9日に報じられた中国政府による独占禁止法違反の疑いでの調査があり、米中対立の深刻化が進めば、人工知能(AI)ブームに沸いてきた半導体株にとっては重荷だ。ブロードコム(AVGO)やアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)などのエヌビディア以外の半導体株は20日までの週次で下落している。
米国政治ではトランプ氏の影響力がすでに波乱を起こしている。下院は19日に、21日以降の予算を確保するつなぎ予算法案の可決に失敗。トランプ氏が支持する債務上限を2年間停止させる条項が一部共和党議員の反発を招いたためだ。下院は20日夜、債務上限停止を棚上げしたつなぎ法案を可決したが、トランプ氏の再登板が政治や経済の不透明性を高めることは間違いなく、S&P500の今後の見通しにとっては激しい値動きを予感させる材料といえそうだ。
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