米国株にリスク山積 S&P500週次反発 米中対立で経済悪化不可避か
S&P500は週次で5.70%高。エヌビディアは17%超高だった。トランプ氏の相互関税の一部停止が好感されたが、米中対立は悪化の一途だ。

アメリカの株式市場が急反発した。S&P500種株価指数の11日の終値は1週間前比で5.70%高となり、3週ぶりの反発。ドナルド・トランプ大統領が9日に相互関税の一部停止を決めたことで買い戻しが入った。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価が週次17%超値上がりするなど、大手ハイテク株がそろって上昇している。さらに11日に発表された3月の卸売物価指数(PPI)は市場予想を下回り、現状ではトランプ氏の高関税が実体経済に与える悪影響は表面化していない。しかしトランプ氏は中国との対決姿勢を強めており、投資家心理は悪化したまま。週明け以降に発表される経済指標や注目企業の決算発表で経済活動への打撃が明らかになる恐れは消えず、S&P500の今後の見通しをめぐっては、急落リスクを抱えたままの値動きが続きそうだ。
アメリカのS&P500は週次5.70%高 相互関税の一部停止を好感
S&P500(SPX)の11日の終値は前日比では1.81%高の5363.36。2月19日につけた最高値(6144.15)からの下落率は12.71%安となり、4月8日の18.90%安から回復した。週次での5.70%高は2023年10月30日-11月3日週(5.85%高)以来、約1年5か月ぶりの大きさだった。トランプ氏が9日、完全発動させたばかりの相互関税の一部を90日間停止すると決めたことが買い戻しのきっかけとなった。

エヌビディアは週次17.62%高 大手ハイテク株がそろって値上がり
S&P500への影響度が高い大手ハイテク株の一角であるエヌビディアの株価(NVDA)は11日の終値で110.93ドルとなり、週次で17.62%高。4週ぶりの急反発で、1月6日の最高値(149.43ドル)からの下落率は25.76%安となった。8日には最高値から35%超安となり、底値の見通しがつかない状態だったが、混乱が一服したといえそうだ。大手ハイテク株ではこのほか、アマゾン・コム(AMZN)が週次8.11%高、マイクロソフト(MSFT)が週次7.95%高となるなど、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手7社がそろって5%超の週次上昇となっている。

米国の物価の異変は現れず CPIとPPIの伸び率は前月から低下
また、直近の経済指標では高関税の経済への悪影響は表面化していない。米労働省が11日に発表した3月PPIの伸び率は前年同月比2.7%で、2月の3.2%から低下。ブルームバーグがまとめた市場予想の3.3%を大きく下回った。原油価格の値下がりを背景としたエネルギー価格の低下が影響している。トランプ氏は2月から中国への追加関税をかけ始め、3月には米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準を満たさないメキシコ・カナダからの輸入品への25%関税や、鉄鋼・アルミニウム輸入に対する25%関税を発動させているが、PPIは上振れしなかった形だ。輸入企業が関税負担を価格に転嫁しなかった可能性がある。米国の物価動向をめぐっては、10日に発表された3月消費者物価指数(CPI)の伸び率も前月から低下している。

米中対立は改善の見通しつかず VIX指数は高止まりが続く
しかしトランプ氏は中国との対決姿勢は強めており、米中対立は悪化する一方だ。トランプ氏は9日、中国製品への関税を125%に引き上げるとし、3月までに発動した20%関税と合わせた税率は145%となっている。これに対して中国も対抗措置を実施。ブルームバーグによると、中国政府は11日、米国からの全輸入品にかける関税を125%とし、すでに発表していた84%から引き上げると発表した。中国財務省は声明で「米国製品はもはや中国で売り物にならない」として、米国がこれ以上関税を引き上げても取り合わないとしている。
こうした中、株式市場の見通しに対する投資家の不安は高まったままだ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の11日の終値は37.56で、11営業日連続で20を超えた。VIX指数はS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが激しくなることへの警戒が強いことを意味する。また、米国の金融市場では安全資産であるはずの米国債も売られて価格が低下。結果として長期金利が上昇している。ブルームバーグによると、11日の長期金利の終値は4.492%で、5営業日連続で前日よりも高くなった。

3月小売売上高やTSMC決算に注目 S&P500の見通しは不安定な値動きか
ただ、S&P500の今後の見通しをめぐってはリスクが山積している。トランプ氏は相互関税のうち約100の国や地域からの輸入品を対象にした10%の一律関税は4月5日に発動済み。中国に対する関税が145%まで上がる中、物価には上昇圧力がかかり続けている。また経済の見通しへの不安が消費者の節約志向を強めていれば、16日に発表される3月の小売売上高で悪い結果が出る懸念も拭えない。
さらにトランプ氏の中国との対決姿勢は、中国が主要市場のひとつである半導体企業の経営環境を複雑にしている。半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が17日に行う2024年1-3月期決算発表でも、経営陣が慎重な見通しを示すなどすれば投資家心理を悪化させることも考えられる。
S&P500は新型コロナウイルスの感染拡大が世界の経済活動の見通しをつかなくした2020年には値上がりと値下がりを繰り返しながら、最高値から33.93%安まで下落した。トランプ氏は相互関税の90日間の停止期間の後、改めて貿易相手への態度を硬化させる可能性もあり、S&P500は不安定な値動きが続くことが想定されそうだ。

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