円高一服148円台 米国景気後退不安やや後退 日本の金利高は続く
ドル円相場は12日に148円台をつけ円安が進行。ただし米国の景気後退不安は根強く、日本の長期金利上昇も円高圧力として働き続けている。

ドル円相場での円高が一服した。12日の東京市場では一時、1ドル=148円台をつけ、前日の146円台半ばから約1.6円の円安が進行。アメリカとカナダの通商関係の急激な悪化に歯止めがかかったことがドル買いにつながった。ドナルド・トランプ大統領は景気後退不安を払拭する姿勢もみせており、一定の安心感につながったようだ。ただしトランプ氏は12日に鉄鋼やアルミニウムの輸入に対する高関税を発動する姿勢は崩しておらず、米国経済の見通しに対する不安は根強い。また日本の長期金利(10年物国債利回り)は依然として上昇傾向で、円高圧力は続いている。今後のドル円相場の見通しをめぐっては、米国で12日から週明けにかけて注目度が高い経済指標が発表されることもあり、円高が改めて動き出す可能性もありそうだ。
ドル円相場は一時、148.15円 前日から1.6円の円安が進行
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間12日午前の取引で一時、1ドル=148.15円をつけた。ブルームバーグによると、ドル円相場は11日には146.54円をつけ、2024年10月4日(145.92円)以来の円高水準を更新していたが、相場の流れが円安方向に反転した形となった。

トランプ氏はカナダからの鉄鋼・アルミ輸入への「50%」関税を撤回
円高を一服させたのは米国とカナダの通商関係悪化にブレーキがかかったことだ。トランプ氏は11日午前に自身のSNSトゥルース・ソーシャルへの投稿で、12日から発動する鉄鋼とアルミニウム輸入に対する25%関税について、カナダに関しては50%にすると表明。しかし数時間後にカナダも他国と同様に25%関税になる可能性を示唆した。
トランプ氏がカナダの鉄鋼やアルミニウムに対する関税を50%に引き上げるとした理由は、カナダのオンタリオ州のダグ・フォード首相が10日に米国のニューヨーク州、ミシガン州、ミネソタ州への電力供給に際して25%の追加料金を課すと発表したため。しかしフォード氏は11日になって追加料金の一時停止を表明していた。
またトランプ氏は景気後退不安の払しょくにも乗り出している。11日には景気後退の可能性について「まったく感じていない」と発言。9日放送のインタビューでは景気後退の可能性を問う質問に、「そうした予想をするのは嫌いだ」などと述べるにとどめ、景気後退を否定することを拒んだと報じられていたが、軌道修正した形だ。
トランプ氏の高関税政策は継続 景気後退への不安は拭いきれず
ただし、ブルームバーグによると、ホワイトハウスは11日午後、鉄鋼とアルミニウムの輸入に関して、カナダを含むすべての貿易相手国・地域について12日午前0時から25%の関税を発動すると発表。カナダに対する関税上乗せは見送られたものの、製造業のサプライチェーンの混乱につながる可能性がある。
こうしたトランプ氏の高関税政策をめぐる混乱は米国経済の見通し不安を強める円高要因だ。経済の先行きへの不安は、ニューヨーク連銀が10日に発表した2月の消費者調査でも表れた。調査結果によると、1年後の家計が現状よりも悪くなっていると予想する世帯の割合は27.4%で、前月(1月)の21.0%から大幅に悪化。2023年11月(28.7%)以来の高い数字となっている。
日本の長期金利は16年5か月ぶりの高さに 円高圧力消えず
一方、ドル円相場をめぐっては日銀の追加利上げ見通しも円高圧力として働いている。ブルームバーグによると、金融市場では日銀が9月の金融政策決定会合までに利上げに踏み切る確率は約97%と見積もられており、6月までの利上げの可能性も約5%あるとされている。こうした中、日本の長期金利は10日には1.578%まで上がり、2008年10月22日(1.605%)以来、約16年5か月ぶりの高水準となった。日米の長期金利差は10日には2.642%ポイントまで縮小している。

日銀は長期金利上昇を静観 米国の2月CPIなどで円高進行の見通しも
日銀はこうした長期金利の上昇を静観しているもよう。植田和男総裁は12日の衆院財務金融委員会に出席し、長期金利の情勢について市場の予想を反映して変動することが自然だとの見方を示すにとどめた。内田真一副総裁も5日の静岡県での講演で、「想定される程度のペースの利上げであれば、経済の反応を確認しながら進めていけるだろう」と話しており、足元での長期金利上昇を問題視する姿勢はみせていない。
このためドル円相場の今後の見通しをめぐっては、引き続き米国経済への不安と日銀の追加利上げ姿勢が円高要因として意識されそうだ。米国では12日に2月の消費者物価指数(CPI)、13日に2月の卸売物価指数(PPI)、週明け17日には2月の小売売上高が発表される。物価上昇の落ち着きが示された場合には米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しの強まりを通じた円高も想定されるほか、小売売上高で消費の弱さが感じられた場合にも円高が進むことが考えられそうだ。
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