S&P500激震再び トランプ発言が火種 エヌビディア2か月で28%安
S&P500は10日に2.70%安で、2か月半ぶりの下落率。トランプ氏がインタビューで景気後退を否定しなかったことが悪材料となり、見通し悪化が続いている。

アメリカの株式市場が再び激震に見舞われた。S&P500種株価指数の10日の終値は前週末比2.70%安で、約2か月半ぶりの下落率。1%を超える下落率は最高値をつけた2月19日以降では6度目で、値下がりが止まらない状況だ。ドナルド・トランプ大統領が9日放送のインタビューで景気後退の可能性を否定しなかったことで投資家の不安が一気に高まった。株式市場での人工知能(AI)ブームを象徴する半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価が2か月前の最高値から28%安になるなど、大手ハイテク株もそろって値下がりしている。一方、S&P500の急落が割高感を和らげていることは株式市場にとっては好材料。しかしS&P500は2023年以降、急騰を続けてきただけに、今後の見通しをめぐっては、急落リスクが引き続き意識されることになりそうだ。
アメリカのS&P500は2.70%安 2か月半ぶりの下落率で最高値から大きく後退
S&P500(SPX)の10日の終値は5614.56。前週末比での下落率の2.70%安は米連邦準備制度理事会(FRB)が2025年の利下げ見通しを後退させた2024年12月18日(2.95%安)以来の大きさだ。S&P500の1%超の値下がりは、2月19日に最高値(6144.15)をつけてから6回目。この間、1%超の値上がりも2回あったとはいえ、10日終値は最高値から8.62%安の水準まで落ち込んでいる。

トランプ氏、景気後退を否定せず エヌビディアは最高値から28%安
急落の火種となったのはトランプ氏の発言だ。トランプ氏は9日放送のFOXニュースでのインタビューで2025年中の景気後退を想定しているかと問われ、「そうした予想をするのは嫌いだ。移行期間はある。われわれがやっていることは非常に大きな事だからだ」と述べた。米メディアでは「トランプ氏が景気後退を否定することを拒んだ」などと報じられ、S&P500の見通しを悪くしていた。
トランプ氏の発言を受けた10日の株式市場ではS&P500の牽引役が総崩れとなった。エヌビディアの株価(NVDA)は前週末比5.07%安の106.98ドルとなり、1月6日の最高値(149.43ドル)からの下落率は28.41%安に到達。また、イーロン・マスクCEOのトランプ氏との蜜月関係が知られる電気自動車(EV)大手のテスラの株価(TSLA)は前週末比15.43%安の222.15ドルで、2024年12月17日の最高値(479.86ドル)からの下落率は53.71%安となった。このほか、アップル(AAPL)、アルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(META)、マクロソフト(MSFT)、アマゾン・コム(AMZN)も2%台から4%台の値下がりとなり、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7銘柄がそろって大幅下落となった。


S&P500の急落で割高感は緩和 予想PERは2020年以降の平均値並みに
一方、株価の急落はS&P500の割高感を和らげている。ブルームバーグによると、S&P500の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は10日段階で20.8倍程度。2020年以降の平均値(20.7倍程度)と同水準となった。S&P500が最高値をつけた2月19日の23.8倍程度から一気に低下したといえ、見通しへの期待をつなぐ材料といえる。

S&P500の見通しへの不安は治まらず 2月CPIも下落要因になる可能性
ただしS&P500は2023年に24.23%高、2024年に23.31%高という急騰を続けただけに、株式市場は反動への不安が高まりやすい状況だ。トランプ氏の高関税政策をめぐる混乱も見通しの不透明感を強めている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の10日の終値は27.86で、前週末比19.21%高と跳ね上がった。VIX指数はS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど値動きが激しくなることへの警戒感が強いことを示す。

S&P500の今後の見通しをめぐっては、12日に発表される2月の消費者物価指数(CPI)にも注目が集まる。金融市場では物価上昇の減速が予想されているが、結果が上振れた場合には、景気後退と物価上昇が同時に進む、米国経済にとっての悪いシナリオが意識され、S&P500の下落につながる可能性もありそうだ。

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