米国株、混乱継続も S&P500週次3%安 エヌビディア135兆円消失
S&P500は半年ぶりの週次下落率。高関税不安や雇用統計が冴えない結果だったことが影響した。週明けの株式市場でも米国経済の実態が問われそうだ。

アメリカの株式市場が乱気流に見舞われた。S&P500種株価指数の7日の終値は1週間前比で3.10%安。9月上旬以来、半年ぶりの急落となった。ドナルド・トランプ大統領の高関税政策をめぐる混乱が投資家心理を冷やしたうえ、7日発表の2月雇用統計も冴えない結果だったことが株価の見通しを暗くした。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は1月につけた最高値から約25%安。時価総額は約9100億ドル(約135兆円)も失われており、株式市場のムードは一変している。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は7日の講演で米国経済の堅調さを強調し、株式市場に落ち着きを取り戻させた。ただし週明け以降は米国の物価情勢を占う経済指標の発表も予定され、S&P500の今後の見通しでは、改めて大きな値動きが続くことも想定されそうだ。
アメリカのS&P500は半年ぶりの週次急落 1%超の乱高下が続く
S&P500(SPX)の7日の終値は前日比では0.55%高の5770.20。前日まで6営業日連続で続いた1%超の値動きは治まった。しかし6営業日連続の乱高下は2020年10月28日から11月5日にかけての7営業日連続以来。4年4か月ぶりの荒れた値動きは投資家心理の乱れを示している。また、週次での3.10%安は、8月雇用統計に株式市場が悲観的な反応を示すなどした2024年9月2-6日週(4.25%安)以来の急落だった。

トランプ氏の高関税政策で混乱 2月雇用統計も予想よりも悪い結果に
S&P500を襲った乱気流の要因はトランプ氏の高関税政策だ。トランプ氏は4日にカナダとメキシコに対する25%関税を発動しつつも、6日までにはアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準に適合した輸入品は高関税の対象外とするなどと軌道修正。一方、中国製品に対する追加関税は20%に引き上げ、4月2日の「相互関税」発動も改めて口にしている。米国の貿易相手の上位3か国との通商関係の混乱は経済の見通しを不透明にしている。
また7日に発表された2月雇用統計も冴えない結果だった。非農業部門の就業者数は前月比15.1万人増で、ブルームバーグがまとめた市場予想の16.0万人増を下回る結果。失業率は4.1%となり、やはり市場予想(4.0%)よりも悪かった。また平均時給の伸び率は前年同月比4.0%で、市場予想の4.1%を下回っている。いずれも労働市場が予想ほどは強くないことを示す結果だ。トランプ氏は連邦政府の運営効率化を目指し、政府職員の人員削減を進めており、労働市場の見通しがさらに悪くなる可能性もある。

エヌビディアの株価は1月の最高値から25%下落 時価総額は135兆円減少
こうした中、株式市場での不安は拡大。人工知能(AI)ブームを象徴的する銘柄であるエヌビディアの株価(NVDA)は7日までの週次で9.79%安にあたる112.69ドル。3週連続での値下がりとなった。1月6日の最高値(149.43ドル)からの下落率は24.59%に達している。ブルームバーグによると、足元のエヌビディアの時価総額は2兆7496億ドルで、最高値当時の3兆6595億ドルから9099億ドル(約135兆円)もの企業価値が失われたことになる。
エヌビディアの半導体を大量に購入するなどしてAI関連投資を進めてきた大手ハイテク株も不振が続く。メタ・プラットフォームズ(META)は7日までの週次で6.37%安、アマゾン・コム(AMZN)は7日までの週次で6.14%安となり、いずれも3週続落だ。電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)は週次10.35%安で、7週続落となった。時価総額の大きい大手ハイテク株の下落はS&P500にとっての重荷といえる。

半導体株も勢いづかず VIX指数の高水準は投資家心理の悪さを象徴
また、エヌビディア以外の半導体株も勢いづかない。ブロードコム(AVGO)は6日に発表した2024年11月-2025年1月期決算で、総収入と1株当たり利益(EPS)がともにブルームバーグがまとめた市場予想を超えたが、株価の7日までの週次での騰落率は2.24%安となって3週続落。S&P500構成銘柄ではないものの、英国半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価は週次4.66%安で4週続落だ。

S&P500の今後の見通しでも、荒れた値動きが続きそうだ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の7日の終値は23.37。6日の24.87からは低くなったが、依然として高水準といえる。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが激しくなることへの投資家の警戒が強いことを示す。

FRBのパウエル議長は米国経済に好評価 2月CPIなどでS&P500の見通し悪化も
一方、週明けの米国株式市場ではS&P500の値下がり不安が後退することも考えられる。FRBのパウエル氏は7日、ニューヨークで行った講演で「不確実性の度合いは高まっているものの、米国経済は引き続き良い状態にある」と指摘。2月雇用統計の結果についても、2024年9月以降の平均値でみれば非農業部門の就業者数が毎月19.1万人のペースで増えていることを踏まえ、「労働市場は強固だ」とした。S&P500は雇用統計発表後に前日比マイナス圏まで値下がりしていたいが、パウエル氏の経済分析が市場に伝わるとプラス圏へと戻っていった。
ただ、米国経済の見通しは12日に発表される2月の消費者物価指数(CPI)や13日発表の2月卸売物価指数(PPI)でも試される。物価上昇圧力が予想以上に強いとみなされれば、S&P500に下落圧力がかかることも想定されそうだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。