米国株、大混迷の乱高下 S&P500反発に弱さ 雇用統計見通しは?
S&P500は5日まで5営業日連続で1%超の値動き。トランプ関税が投資家の不安を強めている。雇用統計などの結果次第で、さらなる下落も想定される。

アメリカの株式市場が乱高下に見舞われている。S&P500種株価指数の5日の終値は前日比1.12%高で、3営業日ぶりの反発。1%を超える値動きは5営業日連続で、2024年7月雇用統計が円キャリートレードの巻き戻しを起こした2024年8月上旬以来の荒れ具合だ。5日はドナルド・トランプ政権がメキシコ、カナダへの25%関税について自動車輸入を除外すると表明して安心感につながったが、反発には弱さも感じられ、投資家の不安は解消されていない。S&P500の今後の見通しをめぐっては、米国の労働市場に関する経済指標が焦点で、6日発表の失業保険関連統計や7日発表の2月雇用統計が弱含めば、S&P500がさらに下落する展開も想定されそうだ。
アメリカのS&P500は5営業日連続で1%超の値動き 8月上旬以来の乱高下
S&P500(SPX)の5日の終値は5842.63。2月19日につけた最高値(6144.15)からは4.91%安となっている。2月27日からの5営業日では1%超の値上がりが2回、1%超の値下がりが3回。この間の下落率は1.90%安で、5日の反発にも関わらず下落基調から抜け出せていない。5日連続での1%超の値動きは、2024年7月の雇用統計で失業率が2年9か月ぶりの高さとなり、円キャリートレードの巻き戻しがドル円相場と日米の株価を大きく揺らした、7月31日から8月6日にかけて以来だ。

メキシコ、カナダへの高関税で自動車輸入は例外扱い 1か月の猶予期間
S&P500の5日の反発はトランプ氏の高関税政策の厳しさが緩んだことが要因だ。ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は5日の記者会見で、トランプ政権が4日に発動したメキシコとカナダからの輸入品に対する25%関税について、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準で北米生産とみなされる自動車については、関税を1か月猶予すると述べた。前日までのS&P500の急落はトランプ氏の関税政策が背景となってきただけに、自動車の例外扱いは株式市場の見通しへの不安の高まりを一服させた。
トランプ政権の決定を受け、5日の株式市場では自動車大手の株価が上昇。ゼネラル・モーターズ(GM)は前日比7.21%高、フォード・モーター(F)は5.81%高、ステランティス(STLA)は9.24%高となり、それぞれ3営業日ぶりに反発した。トヨタ自動車の米国預託証券(ADR)も6.47%高となっている。
エヌビディアなど半導体株や、大手ハイテク株も上昇
トランプ氏の高関税政策に交渉の余地が残されているとの見方は半導体株の上昇にもつながった。半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)の5日の終値は前日比1.13%高の117.30ドル。ブロードコム(AVGO)は2.19%高となっている。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングスの株価(ARM)も1.87%高だ。


トランプ氏の高関税は揺るがず 製造拠点の米国への移転を迫る見通し
ただ、トランプ氏は自動車輸入への高関税に猶予期間を設けたものの、引き続き自動車各社に製造拠点を米国内に移すよう迫る見通し。トランプ氏は5日の米議会での施政方針演説で、4月2日に「相互関税」を実施すると改めて表明。自身の高関税政策が経済に「多少の混乱」をもたらすことを認めつつも、「耐えることができる」としている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の5日の終値は21.93という高水準のままで、投資家のS&P500の見通しに対する警戒感は強い。

週次の失業保険関連統計や2月雇用統計でS&P500急落のリスクも
こうした中、株式市場の関心は米国の経済の現状に向かいそうだ。6日午前8時30分(日本時間6日午後10時30分)に発表される週次の失業保険関連統計は、2月23-3月1日週の新規失業保険申請件数が焦点。ブルームバーグがまとめた事前予想は23.3万件で、前週の24.2万件から低下するとみられているが、上振れた場合には米国経済の見通しへの不安がS&P500を下押ししそうだ。

また7日午前8時30分(日本時間7日午後10時30分)には2月雇用統計の発表も控える。ブルームバーグによると、非農業部門の就業者数は前月比16.0万人増となり、前月(1月)の14.3万人増から雇用拡大が加速する見通し。一方、失業率は4.0%、平均時給の前年同月比伸び率は4.1%となる見通しで、いずれも前月から横ばいになるとみられている。投資家の注目度が高い雇用統計で下振れがみられた場合には、S&P500が急落する展開も考えられそうだ。

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