米国株、トランプ氏警戒 S&P500週次続落 エヌビディア見通しに影
S&P500は週次で0.24%安。エヌビディアはディープシーク後の急落は一服したものの、トランプ氏の対中強硬姿勢は懸念材料だ。
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アメリカの株式市場でドナルド・トランプ大統領に対する警戒が続いている。S&P500の7日の終値は週次0.24%安で、2週連続での下落。大手ハイテク企業の決算発表が投資家の期待に応えられなかったうえ、7日に発表された1月の雇用統計で物価上昇圧力の高まりが感じられたことも悪材料となった。一方、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は前週の急落から反発しており、中国の人工知能(AI)開発をめぐる混乱は一服している。しかしエヌビディアには、トランプ氏の中国との対決姿勢という不安要素も残る。トランプ氏は7日の日米首脳会談後の共同記者会見で、早ければ10日にも新たな関税政策を打ち出す考えを示しており、S&P500の今後の見通しの重荷となりそうだ。
アメリカのS&P500は週次0.24%安 トランプ氏への楽観が後退
S&P500(SPX)の7日の終値は前日比では0.95%安の6025.99。中国のAI開発企業「DeepSeek(ディープシーク)」による低コストでの高性能AI開発が金融市場を揺らした前週(1月27-31日)の1.00%安に続く値下がりとなった。S&P500はトランプ氏の就任直後の言動を好感し、1月23日には最高値(6118.71)をつけていたが、楽観的な見通しは後退したといえそうだ。
![S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/SP500_and_US_10year_government_note_yield_20250208.jpg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
アルファベットやアマゾンが下落 決算発表で投資家の期待に応えられず
S&P500の見通しの悪さは大手ハイテク株の値動きにも表れている。アルファベットの株価(GOOGL)は週次9.16%安で、4日に発表した2024年10-12月期決算でのクラウド事業の成長減速が悪材料となった。アマゾン・コムの株価(AMZN)も週次3.59%安となっており、やはり6日の10-12月期決算発表が投資家に評価されなかった。また販売不振の懸念が強まっているテスラ(TSLA)も週次10.62%安。アップル(AAPL)も週次3.55%安となっている。一方、1月29日の決算発表が好感されたメタ・プラットフォームズ(META)は7日まで15営業日続伸と気を吐いている。
![エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ、アマゾン・コム、アルファベット、アップル、マイクロソフトの株価の推移のグラフ](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/big_seven_stock_price_evolution_since_end_of_2023_20250208.jpg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
企業業績への期待後退は、ブルームバーグがまとめたS&P500構成銘柄の今後12か月の予想1株当たり利益(EPS)のデータでも感じられる。7日段階での予想1株当たり利益は260ドル程度で、1月中旬につけていた264ドル程度から徐々に低下しているようだ。
![S&P500とEPSの推移のグラフ](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/SP500_EPSNTM_20250208.jpg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
1月雇用統計は平均時給の伸びが市場予想超え FRBの利下げ見通しは後退
7日のS&P500の下落の背景には、1月雇用統計の結果もある。平均時給の伸び率は前年同月比4.1%となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の3.8%を大きく上回る結果。賃金上昇の強さは物価上昇圧力の強さともいえ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しを弱め、株価にとっての下押し圧力となったようだ。CMEグループのデータによると、2025年の利下げ回数が2回以上になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間8日午前の段階で44%。前日の57%程度から大きく低下した。
![アメリカの雇用統計(就業者数、失業率、平均時給伸び率)の推移のグラフ](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/US_nonfarm_payroll_change_and_unemployment_rate_and_wage_change_20250208.jpg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
一方、1月雇用統計は経済の堅調さも示しており、S&P500の見通しに一定の安心感も与えている。非農業部門の就業者数は前月比14.3万人増で、ブルームバーグがまとめた市場予想の17.0万人増を下回ったものの、2024年11月と12月の就業者数の増加幅は合計10.0万人上方修正されており、堅調な結果とも受け止められている。失業率は4.0%で、前月の4.1%から低下した。
エヌビディアの株価は週次8.14%増 トランプ氏の中国への対決姿勢が見通しに影
またS&P500の上昇を引っ張ってきたエヌビディアの株価(NVDA)の7日の終値は129.84ドルで、週次で8.14%の上昇だった。前週には、ディープシークの登場が米国の半導体企業の優位性を揺るがすとの見通しから15.81%安の急落に見舞われていたが、極端な悲観は後退したといえる。
![エヌビディア、アーム・ホールディングスなど半導体株の株価の値動きの推移のグラフ](http://a.c-dn.net/c/content/dam/publicsites/igcom/jp/images/news-and-analysis/2025/US_listed_chip_firms_20250208.jpg/jcr:content/renditions/original-size.webp)
ただ、エヌビディアにはトランプ氏の中国への対決姿勢という不安要素も残る。エヌビディアは高性能半導体の中国向け輸出に関する米国政府の規制に従いつつも、性能を抑えた半導体を中国に輸出している。トランプ政権はこうした輸出に照準をあてた新たな規制を検討していると報じられている。
トランプ氏は10日にも「相互的な関税」を発表か 日米首脳会談後の記者会見で言及
トランプ氏は7日の日米首脳会談後の石破茂首相との共同記者会見では、10日か11日に新たな関税について発表すると発言。米国からの輸入に関税をかけている国に対する「相互的な関税」になるとしている。
トランプ氏は1日に決定したメキシコ、カナダへの高関税発動を1か月間停止する一方、中国への10%の追加関税は予定通りに4日に実施。中国は米国産の石油などに対する報復関税を課すとしている。また、トランプ氏は1月31日に記者団に対し、半導体や石油、鉄鋼などへの関税も検討していると明かしており、サプライチェーンが混乱するとの見通しも拭えない。
S&P500の今後の見通しには、12日に発表される1月の消費者物価指数(CPI)も影響を与えるとみられる。トランプ氏の政策と米国経済の行方の不透明感が増す中、株式市場で疑心暗鬼が続く可能性もありそうだ。
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