米国株、トランプ関税で見通し混迷 S&P500続落 発動停止でも不安
S&P500は3日に0.76%安。トランプ氏はメキシコ、カナダへの高関税発動を停止したが、投資家の不安は拡大した。エヌビディアも2.84%安となっている。
アメリカの株式市場がドナルド・トランプ大統領の高関税政策で混乱に陥った。S&P500種株価指数の3日の終値は前週末比0.76%安。1日に決定したメキシコ、カナダ、中国への高関税が悪材料視された結果だ。トランプ氏は3日の取引開始後、高関税発動を1か月停止すると発表したものの、株式市場の不安は完全には解消されなかった。また、サプライチェーンの不安定化への懸念が続く中、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が2.84%安となるなど、大手ハイテク株の値動きも冴えない。S&P500の今後の見通しをめぐっては、引き続き、トランプ氏への警戒感が下押し圧力として働くことも考えられる。
アメリカのS&P500は0.76%安 トランプ氏の高関税政策を悪材料視
S&P500(SPX)の3日の終値は5994.57で、前週末1月31日(0.50%安)に続く下落。トランプ氏の就任直前の取引日にあたる1月17日(5996.66)以来の6000割れとなった。23日につけた最高値(6118.71)からの下落率は2.03%となっている。S&P500は24日以降の7営業日中、5営業日で値下がりしており、見通しは暗い。
トランプ氏はメキシコ、カナダへの高関税を1か月停止 中国とも協議
S&P500の3日の取引は前週末比1.6%安の水準でスタート。トランプ氏が1日にメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税、中国からの輸入品に10%の追加関税を4日からかけるとする大統領令に署名したことが悪材料になった。S&P500はその後、2.4%安まで下げ幅を拡大したが、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領が高関税は1か月先送りされると述べたと伝わると、下げ幅を縮めていった。
トランプ氏は3日午前10時41分に自身のSNSへの投稿で、シェインバウム氏と会談したことを明かし、メキシコ製品への高関税を1か月停止すると発表。午後4時57分にはカナダのジャスティン・トルドー首相との会談の結果として、カナダ製品についても関税の発動を30日間停止するとした。トランプ氏は両国について合成薬物フェンタニルや不法移民の米国への流入を阻止する手立てをとることで合意したとしている。ブルームバーグによると、トランプ氏は3日午後、記者団に対して中国とは24時間以内に協議を行うとの見通しを示した。
投資家の不安は拡大 エヌビディアなど半導体株も大きく下落
ただ、メキシコとカナダへの高関税政策の発動が停止されたとはいえ、投資家の見通しへの不安は高まったといえそうだ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の3日の終値は前週末より13.33%高い18.62で、1月14日(18.71)以来の高水準。取引時間中には20を超える場面もあった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数値が大きいほど値動きが荒くなることへの投資家の警戒が強いことを意味する。
こうした中、3日の株式市場ではエヌビディアの株価(NVDA)が前週末比2.84%安の116.66ドルとなった。トランプ氏は1月31日に半導体への高関税にも言及しており、サプライチェーンの混乱につながるとの見通しがくすぶっている。エヌビディアの株価は中国のAI開発企業「DeepSeek(ディープシーク)」が米国企業の優位性を脅かすとの懸念でも急落しており、6日の最高値(149.43ドル)からの下落率は21.93%に達した。3日にはブロードコム(AVGO)も1.60%安、クアルコム(QCOM)も1.56%安に沈んでいる。S&P500構成銘柄ではないものの、5日に2024年10-12月期決算を発表する英半導体大手アーム・ホールディングスの株価(ARM)も2.44%安だ。
メタ・プラットフォームズは11日続伸 新端末投入報道が追い風
3日の株価下落は大手ハイテク株でも大きく、電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)は前週末比5.17%安と急落。アップル(AAPL)も3.39%安となった。これに対してSNS大手のメタ・プラットフォームズ(META)は、2025年にAI機能を備えた6つのウェアラブル端末を公開するとの報道が好材料となり、1.20%高だった。メタは29日の10-12月期決算発表も好感されており、11営業日続伸となっている。
S&P500の今後の見通しにはトランプ氏の予測不能性が重荷か
一方、3日に発表された経済指標では米国経済の見通しの明るさも確認されている。米サプライマネジメント協会(ISM)の1月の製造業景況感指数(PMI)は50.9となり、2022年9月(51.1)以来2年4か月ぶりの高さ。ブルームバーグがまとめた市場予想の50.0も上回った。
とはいえ、トランプ氏の予測不能の言動は、企業の景況感を悪化させる方向にも働きかねない。株式市場に疑心暗鬼が広がる中、S&P500の今後の見通しをめぐっては、下押し圧力の強さが意識されそうだ。
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