原油価格、米中対立で下落 WTI、一時70ドル台 需要後退見通し
WTIは4日に一時、1バレル=70ドル台まで下落。米中対立悪化が投資家のリスク回避姿勢を強めた。米国の原油需要の後退の兆しも値下がり要因だ。
原油価格に下落圧力がかかっている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は4日の取引で一時、1バレル=70ドル台まで下落。アメリカのドナルド・トランプ大統領が中国製品への追加関税を発動したことに対して、中国が報復関税を課すと表明したことが投資家のリスク回避姿勢を強めた。また米国の原油需要をめぐっても後退の兆しが出始めており、原油価格にとって下落要因となっている。ただ、トランプ氏の言動は予想が難しく、原油価格の今後の見通しも改めてトランプ氏に振り回される可能性がある。
原油価格は約1か月ぶりの安値 WTIが一時、70.67ドル
WTI(翌月渡し、WTI原油)は4日の取引で一時、1バレル=70.67ドルをつけた。ブルームバーグによると、2024年12月30日の安値(70.12ドル)以来の低水準となる。WTIは15日には80.77ドルをつける場面もあったが、値下がり傾向が続いているといえそうだ。5日の東京市場の取引では72ドル台まで買い戻されている。
中国が米国への報復関税を表明 WTIは4日に0.63%安
4日の原油価格下落の要因となったのは米中対立への懸念だ。トランプ氏は2月1日にメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税、中国からの輸入品に10%の追加関税を4日から課すことを決める大統領令に署名。このうちメキシコとカナダへの高関税については3日に1か月の停止が決まったが、中国製品への関税は4日に発動された。これに対して習近平政権は4日に米国からの輸入品に報復関税を課すと表明している。ブルームバーグによると、中国財務省は声明で、石油や農機に対しては10%、石炭や液化天然ガスに対しては15%の関税を課すとしているという。
WTIはメキシコとカナダへの高関税発動停止が決まった3日の終値では前日比0.87%高と上昇。しかし4日の終値は0.63%安と反落した。米中対立に歯止めがかからなかったことは、世界経済の見通しをつきにくくする要因といえ、投資家のリスク回避姿勢を強めたようだ。
アメリカの原油在庫は増加の見通し 原油価格に下落圧力か
また原油市場をめぐっては需要見通しの弱さという下落要因もある。米エネルギー情報局(EIA)が5日午前10時30分(日本時間6日午前0時30分)に発表する1月31日段階での原油在庫量(戦略備蓄除く)は、ブルームバーグがまとめた事前予想によると、1週間前比で190万バレルの増加が見込まれている。29日に発表された前週のデータでの在庫量は346.3万バレル増で、10週ぶりに在庫量が増えていた。2月5日発表分で予想を超える在庫の積み増しが確認されれば、原油価格の下落要因とみなされる可能性もある。
中国の石油需要も2025年は増加率低下見通し トランプ氏による波乱再来も
また、原油需要は世界的にも増加ペースが落ちるとみられている。石油輸出国機構(OPEC)が1月15日に発表した1月の月報では2025年の世界の石油需要の前年比での増加幅は、2024年の実績よりも小さくなる見通し。このうち中国の需要は前年比1.85%増とされ、2024年の3.40%増から減速するとみられている。こうした中で米中対立が中国の輸出に悪影響を与えるなどした場合には、中国の経済成長がより緩やかになり、原油需要を下押しすることも考えられそうだ。
ただ、トランプ氏の高関税政策は相手側から譲歩を引き出すための手段である側面もあり、中国との関係が一方的な悪化に向かうかどうかは不透明だ。今後の原油価格の見通しは、再びトランプ氏の言動で左右されることもありえる。
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