原油価格、下落見通しか WTIは73ドル台 トランプ関税で波乱も
WTI(翌月渡し)はトランプ大統領の原油価格引き下げへの意欲を背景に下落。しかしカナダ製品への高関税などの通商問題が相場を揺らす可能性がある。
原油市場で価格下落見通しが強まっている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は日本時間29日午前の取引では1バレル=73ドル台で推移。アメリカのドナルド・トランプ大統領が原油価格引き下げに意欲をみせていることや、投資家のリスク回避姿勢が下落要因として働いた。さらに足元の原油市場では需要の弱まりが意識される可能性もあり、やはり価格下落圧力を高めそうだ。ただ、トランプ氏がカナダなどからの輸入品に高関税をかけるとしている2月1日が近づく中、原油価格の今後の見通しがトランプ氏の言動で改めて揺れる可能性もある。
WTIは73ドル台後半 1月中旬の80ドル台から下落基調
WTI(翌月渡し、WTI原油)は28日の取引で一時、1バレル=72.93ドルをつけた後、29日は73ドル台後半で取引されている。ブルームバーグによると、15日には80.77ドルをつける場面もあったことを考えれば、下落基調が続いている。
トランプ氏がOPECに価格引き下げ要求 中国発AIをめぐる混乱も影響
原油価格下落の見通しが強まった背景にはトランプ氏の動向がある。トランプ氏は23日、スイスで開かれていた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)にオンラインで参加。ウクライナとの戦争を続けるロシアの資金源を断つ狙いに言及したうえで、石油輸出国機構(OPEC)に対して原油価格の引き下げを要求した。WTIは23日に前日比1.09%安となり、トランプ氏の発言が下落圧力として働いた。
また原油価格は、株式市場で中国の人工知能(AI)開発企業「DeepSeek(ディープシーク)」のAIモデルが低コストでの開発で高い性能を獲得したとのニュースが材料視された27日も下落。半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価が前週末比17%安となる混乱の中、投資家のリスク回避姿勢が強まり、WTIは前週末比2.00%安となった。
原油在庫は10週ぶりに増加する見通し 原油需要に弱さか
さらに原油市場では需要の弱まりも、価格下落要因として意識される可能性がある。米エネルギー情報局(EIA)が29日午前10時30分(日本時間30日午前0時30分)に発表する24日時点の原油在庫量は、ブルームバーグがまとめた市場予想によると、1週間前比で218.6万バレル増加になる見通し。23日発表分では、原油在庫は101.7万バレル減少となり、市場予想を上回る大きな在庫の取り崩しだったが、一転して在庫が積みあがる形となる。予想通りになれば在庫量の増加は10週ぶりだ。
トランプ氏の高関税発動の有無は波乱要因 カナダ、中国への対応は?
ただ、原油価格の今後の見通しは改めてトランプ氏の言動で揺れる可能性がある。トランプ氏は就任当日の20日にメキシコとカナダに対する25%の関税を2月1日からかけることを検討していると表明。カナダ産原油は米国が輸入する原油の約6割を占めており、原油市場の波乱要因となりえる。ブルームバーグによると、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は28日、2月1日の期限は変わっていないと説明したという。
一方、トランプ氏は、中国に対する10%の関税の2月1日の実施も口にしており、米中対立の強まりを予感させるリスク要因といえる。トランプ氏は米フォックス・ニュースでのインタビューでは中国製品への高関税は「むしろ使いたくない」とも述べているが、実施が決まれば投資家のリスク回避姿勢を強める可能性もありそうだ。
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