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日銀利上げに円高反応 155円台前半 トランプ氏発言も見通しに影響

日銀の植田総裁は中立金利までの距離に言及し、追加利上げを示唆。今後のドル円相場は米国の経済やトランプ氏の言動に左右されそうだ。

日銀利上げに円高反応 155円台前半 トランプ氏発言も見通しに影響 出所:ブルームバーグ

ドル円相場が日本銀行の利上げに円高で反応した。24日の東京市場でのドル円相場は日銀の利上げ決定後、おおむね1ドル=155円台前半で推移。植田和男総裁の記者会見後も同じ水準を維持した。植田氏が今回の利上げ後も中立金利までは距離があるとの見方を示し、追加利上げの可能性を示したことが円高材料とみなされたようだ。また、24日のFX市場ではアメリカのドナルド・トランプ大統領の発言を受けたドル安の流れが出ていることも円高の背景となった。今後のドル円相場の見通しは米国発の情報に左右される局面が増えるとみられ、経済指標やトランプ氏の言動が注目される。

日銀は約半年ぶりに利上げ 植田総裁は追加利上げの見通しを示唆

日銀は24日午前12時20分ごろに0.25%幅の利上げを発表。政策金利を0.5%にするとした。日銀の利上げは2024年7月31日以来。政策金利が0.5%に達するのは、2007年2月21日の決定会合から、リーマンショックを挟んだ2008年10月31日の決定会合にかけての期間以来、約16年3か月ぶりだ。

植田氏は24日の記者会見で、経済や物価が見通し通りに推移すれば政策金利を引き上げるとの方針について、今回の利上げ後も「基本的な考え方は変わっていない」と説明した。また経済を過熱させることも冷やすこともない中立的な金利の水準の範囲については、過去の日銀の推計を踏まえて「1-2.5%」と言及。利上げ後の政策金利が0.5%であることから、「(中立金利までは)まだ距離がある」と指摘し、追加利上げの余地があるとの見方を示唆した。一方、今後の利上げのペースについては「予断を持っていない」としている。

ドル円相場は155円台前半で推移 0.8円程度の円高が進行

ドル円相場(USD/JPY)は決定会合の結果発表後、円高方向に動き、植田氏の会見開始直前には1ドル=155.20円程度となった。結果発表直前の156.00円程度から0.80円程度の円高が進んだ形だ。その後、植田氏の会見中にも一方的な値動きはみられず、ほぼ155円台前半で推移した。金融市場では日銀の利上げが素直に円高材料として受け止められたようだ。

ドル円相場の日足チャートと主な出来事のグラフ

今回、日銀が利上げを決めたのは、賃上げの勢いやトランプ政権下での金融市場の動きをめぐる不透明感が和らいだためだ。日銀は決定会合後の声明文で、春闘の動向について「昨年に続きしっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれている」と言及。また、20日のトランプ政権発足後もドル円相場などに大きな混乱がでなかったことを念頭に、「様々な不確実性は意識されているものの、国際金融資本市場は全体として落ち着いてる」とした。植田氏は2024年12月19日の決定会合後の記者会見では利上げ見送りの背景として、賃上げの動向とトランプ政権下での経済の不確実性を挙げていた。

日銀は物価上昇の見通しも引き上げ 2025年度もコアコア指数で2.1%上昇

また声明文と同時に発表された「経済・物価情勢の展望」では消費者物価指数(CPI)の伸び率の見通しも引き上げられた。2024年度は生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数の伸び率が2.2%とされ、2024年10月段階の見通し(2.0%)よりも高くなった。また、コアコア指数の2025年度の伸び率は2.1%とされ、やはり前回の1.9%から引き上げられている。

日銀の物価上昇見通しは、24日朝に発表された経済統計でも裏付けられた。2024年12月CPIでは、コアコア指数の伸び率は前月と同じ2.4%で、2%超の水準での安定が感じられる。また、毎月勤労統計の11月確報値では実質賃金が前年同月比0.5%増とされ、4か月ぶりにプラスに転じた。

日本の消費者物価指数の伸び率の推移のグラフ

トランプ氏は中国への高関税に慎重か FX市場のドル安要因に

一方、24日の円高には「ドル安」の側面もある。24日のFX市場では円だけではなく、豪ドルやポンド、ユーロもドルに対して強くなっているためだ。ドル安のきっかけは、日本時間24日午前11時すぎに、トランプ氏が米フォックス・ニュースのインタビューで中国からの輸入品に対する高関税について「むしろ使いたくない」と述べたと伝わったこと。高関税が回避されれば米国内の物価上昇圧力が弱まるとの思惑が、ドル安見通しを強めたもようだ。

円、ユーロ、豪ドル、ポンドの対ドル相場の推移のグラフ

こうした中、日米の長期金利(10年物国債利回り)の差はじわじわと縮まっている。ブルームバーグによると、日本時間24日夕方段階での長期金利差は3.391%ポイントで、13日の終値段階での3.586%ポイントから小さくなっている。

日米の長期金利差とドル円相場の推移のグラフ

ドル円相場の見通しはFOMCやアメリカの物価動向が左右へ

ドル円相場の今後の見通しは米国の動向に左右される局面が増えそうだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が28、29日の連邦公開市場委員会(FOMC)に際して行う情報発信や、30日の2024年10-12月期のGDPや個人消費支出(PCE)物価指数の結果が相場を動かす可能性がある。また世界の注目を集めるトランプ氏の言動も引き続き、ドル円相場の不確定要素といえそうだ。


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