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ドル円相場荒れ模様 トランプ氏大統領就任 日銀利上げ見通しは?

ドル円相場はトランプ氏の大統領就任に荒れ模様の反応。ドル円相場は156円台前半から154円台後半を揺れ動いた。トランプ氏は高関税を見据えている。

ドル円相場荒れ模様 トランプ氏大統領就任 日銀利上げ見通しは? 出所:ブルームバーグ

ドル円相場はアメリカのドナルド・トランプ大統領の就任に荒れ模様の反応を示した。日本時間21日午前の取引では一時、1ドル=154円台をつけ、前日夜の156円台半ばから1.5円程度の円高水準。しかしその後は再び156円台まで円安に戻している。トランプ氏が就任初日に高関税政策の発動を見送ったとみられることが物価上昇圧力や米国の金利高への懸念を和らげたが、その後、トランプ氏がメキシコやカナダへの高関税を検討していると述べたと報じられたことが影響した。こうした中、金融市場では日本銀行が23、24日の金融政策決定会合で利上げに踏み切るとの見方も強まっている。ただ、日銀が利上げを決めた場合はさらなる利上げの有無が材料視される可能性があり、ドル円相場の今後の見通しでは円安圧力も続いていきそうだ。

ドル円は156円台前半から154円台後半を往復 カナダ、メキシコに高関税か

ドル円相場(USD/JPY)は日本時間21日午前の取引で一時、約1か月ぶりの円高水準となる、1ドル=154.91円をつけた。20日午後10時台には156.40円程度で取引されていたことを踏まえれば、1.5円程度の円高が進んだことになる。トランプ氏は日本時間の21日午前2時(米国東部時間20日正午)に大統領に就任しており、初日のドル円相場は円高方向でのスタートとなった。

しかし日本時間21日午前10時前にはトランプ氏が、2月1日までにメキシコとカナダからの輸入品に対して25%の関税をかけることを検討していると発言したと報じられ、ドル円相場では一気に円安が進行。1ドル=156円台前半まで円安に振れた。

ドル円相場の日足チャートと主な出来事のグラフ

トランプ氏は就任初日の高関税発動は見送ったもよう

当初の円高進行のきっかけとなったのは、トランプ氏の就任直前、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が初日の高関税発動はないとの見通しを報じたことだ。WSJはトランプ氏が連邦政府に対して、通商政策や中国、カナダ、メキシコとの貿易関係について調査することは命じるが、「就任初日に新たな関税を課すには至らない」とした。

トランプ氏は報道から数時間後の就任演説で「米国の労働者と家族を守るため、通商制度の一新に即時に着手する」とし、海外製品に関税を課す方針を示した。ただ、具体的な政策としては関税などを徴収する新組織の設立に言及するのみだった。また、初日に署名する大統領令では、メキシコ国境警備の強化や不法移民の強制送還、物価高対策を見据えた原油やガスの増産、電気自動車(EV)優遇の廃止などに取り組むとした。

ユーロやポンド、豪ドルも就任初日はドルに対して上昇

トランプ氏が就任初日の高関税発動を見送ったとみられることで、高関税が物価上昇圧力として働き、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが難しくなるとの見通しは後退した。FX市場では円以外の通貨もドルに対して大幅に強くなっており、ブルームバーグによると、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)は20日のニューヨーク市場の終値で前日比1.39%のユーロ高だった。ポンドの対ドル相場(GBP/USD)も同様に1.31%のポンド高、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)も1.32%の豪ドル高となった。

円、ユーロ、ポンド、豪ドルの対ドル相場の推移のグラフ

金融市場の大混乱が回避されれば、日銀の利上げを後押しか

こうしたFX市場の値動きは、日銀が24日までの決定会合で利上げに踏み切るとの見通しを強める方向に働いた。ブルームバーグによると、日銀の利上げ確率は日本時間21日午後8時台に100%に達する場面もあった。トランプ氏の大統領就任が金融市場の大きな混乱につながらない状況が続いていけば、日銀が利上げに踏み切る環境が整うとの見方があるようだ。

日銀の植田和男総裁は2024年12月19日の決定会合後の記者会見で、利上げを決める際の注目点として賃上げの動向と米国の次期政権の経済政策をめぐる不確実性を挙げていた。また植田氏は1月15日の全国地方銀行協会でのあいさつで利上げを議論する立場を改めて表明し、9日の日銀支店長会議などでは賃上げに前向きな話が多かったと述べたと報じられている。

日米の金利差は縮小傾向 ドル円相場の見通しでは円安圧力も継続か

米国での物価上昇懸念の後退と同時に日銀が利上げに踏み切るとの見方は、日米の金利差が縮小する見通しを強める、ドル円相場での円高要因といえる。ブルームバーグによると、日米の長期金利(10年物国債利回り)の差は20日終値段階で3.437%ポイント。13日には3.586%ポイントまで高まっていたが、縮小方向に動いている。

日米の長期金利差とドル円相場の推移のグラフ

ただ、トランプ氏の発言でドル円相場改めて円安に動いたことが象徴するように、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、円安圧力も続きそうだ。日銀が24日に利上げを決めた場合でも、植田氏の記者会見でさらなる利上げについての慎重姿勢が感じられれば、「利上げ打ち止め」観測が円安材料になる可能性がある。またトランプ氏の経済政策が米国の経済活動を刺激することで結果的に物価上昇圧力が強まれば、FRBは利下げへの慎重姿勢を強めざるをえない。米国経済の強さが意識される経済指標が出るなどした場合にも、円安の流れが再燃することが想定されそうだ。


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