円高急進155円台前半 日銀の1月利上げ見通し急浸透 円安再進行も
ドル円相場は日銀の植田総裁発言や米国の経済指標などを受け、約1日で3円の円高が進行。ただしトランプ氏の大統領就任は円安要因になる可能性もある。
ドル円相場で円高が急進した。16日のニューヨーク市場の終値は1ドル=155.16円で、約1か月ぶりの円高水準。15日につけた158円台前半から約1日で約3円の円高が進んだことになる。日本銀行の植田和男総裁らの発言が23、24日の金融政策決定会合での利上げ見通しを急速に強めたことが要因。さらにアメリカの経済指標や米連邦準備制度理事会(FRB)幹部の発言も円高材料になった。ただしFX市場では20日のドナルド・トランプ次期大統領の就任でドル買いが強まる可能性もある。この場合、日銀が利上げを決めても円高効果が小さくなるとも考えられ、ドル円相場の今後の見通しでは円安再進行の筋書きも想定されそうだ。
ドル円相場は一時、154.98円 1日で3円の円高が進行
ドル円相場(USD/JPY)は16日には一時、1ドル=155.10円をつけた。ブルームバーグによると、2024年12月19日につけた154.44円以来の円高水準だ。ドル円相場は15日には158.08円をつける場面もあっただけに、約1日で3円の円高が進んだことになる。ドル円相場は17日の東京市場での取引では、一時154.98円をつける場面もあったが、おおむね155円台前半で推移している。
植田総裁のあいさつが円高の引き金 1月利上げ見通しは9割に
円高急進のきっかけは日銀首脳の発言だ。植田氏は15日の全国地方銀行協会の賀詞交歓会でのあいさつで、24日までの決定会合で追加利上げを行うかどうか判断すると述べたと報じられた。氷見野良三副総裁も前日14日の神奈川県での講演で「利上げを行うかどうか政策委員の間で議論し、判断したい」と述べていた。
植田氏は12月19日の決定会合後の記者会見では利上げへの慎重姿勢を強調。今後の賃上げの動向やトランプ次期政権の経済運営などを、経済情勢の見通しに関する不確実性として挙げていた。ブルームバーグによると、植田氏は地銀協でのあいさつの中で、賃上げの動向については、9日の日銀支店長会議の報告などで前向きな話が多かったとの認識を示したという。
こうした日銀首脳の発言を受けて、金融市場では「1月利上げ」見通しが急速に強まった。ブルームバーグによると、1月利上げについて投資家の動向から算出される確率は、17日午前8時すぎには約99%まで高まり、その後も90%程度で推移している。13日までは50%程度の確率が見積もられていたが、1月利上げが一気に織り込まれた形だ。
アメリカの小売売上高もドル安材料 FRB理事からは利下げに前向きな発言
一方、円高進行の背景にはドル側からの材料もある。15日に発表された12月の消費者物価指数(CPI)は食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率が市場予想を下回るなど過熱感を感じさせない結果。また16日に発表された12月の小売売上高も伸び率が前月比0.4%となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の0.6%を下回った。自動車と部品を除いたベースの伸び率の0.4%もやはり、市場予想(0.5%)よりも小さく、物価上昇圧力が高まるとの見通しを強めなかった。
さらにFRBのクリストファー・ウォラー理事は16日の米CNBCでのインタビューで、物価上昇に関する良いデータが出る限りは、「市場が織り込んでいる以上に早い時期に利下げすることがありえることは確かだ」と述べた。ドル円相場では日本時間16日夜の段階では1ドル=156円台前半まで円が売られていたが、小売売上高の発表やウォラー氏の発言を受け、改めて155円台前半まで円高が進んだ。
こうした中、日米の金利差は縮まり始めた。ブルームバーグによると、日米の長期金利(10年物国債利回り)の差は15日の終値段階で3.406%ポイントまで縮小。12月17日の3.325%ポイント以来、約1か月ぶりの小ささとなった。日本の長期金利が1.2%台まで上昇するとともに、米国の長期金利が4.6%台まで低下したことが要因だ。
ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、20日のトランプ氏の大統領就任というイベントが控える。トランプ氏の就任演説などの内容がFRBの利下げにブレーキをかけるドル高材料とみなされれば、これまでの円高基調が急変する可能性もある。この場合、日銀が金融市場の予想通りに利上げに踏み切ったとしても想定内と受け止められ、ドル円相場が改めて円安方向に動くことも考えられそうだ。
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