米国株、CPIに安堵 S&P500急上昇 エヌビディアは見通しに波乱も
S&P500は15日に急上昇。12月CPIで過熱感がみれらなかったことが好感された。ただしトランプ氏の大統領就任を控え、見通しには不確定要素も多い。
アメリカの株式市場に安堵感が広がった。S&P500種株価指数の15日の終値は前日比1.83%高で、大統領選挙翌日以来、約2か月ぶりの高い上昇率。朝方に発表された2024年12月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を下回ったことが好感された。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が6営業日ぶりに反発するなど、大手ハイテク株や半導体株も大きく値上がりしている。ただ、ドナルド・トランプ次期大統領が20日の就任後に打ち出す政策は米国経済の先行きを大きく揺らすとの見方は強い。中国に対する強硬姿勢はエヌビディアなどの成長ペースに影響する可能性もあり、S&P500の今後の見通しが晴れ渡っているわけではなさそうだ。
アメリカのS&P500は1.83%高 長期金利は4営業日ぶりに低下
S&P500(SPX)の15日の終値は5949.91で、伸び率は2024年11月6日(2.53%高)以来の大きさ。13、14日の小幅高の後での大幅上昇となり、3日間での上昇率は2.11%高となっている。ブルームバーグによると、15日のニューヨーク債券市場での長期金利(10年物米国債利回り)の終値は4.654%。4営業日ぶりに前日から低下し、株式市場の安心材料となった。
12月CPIはコア指数の伸び率が低下 市場予想も下回る
S&P500を値上がりさせたのは15日朝に発表された12月CPIだ。総合指数の伸び率は前年同月比2.9%で、前月の2.7%から物価上昇が加速したものの、ブルームバーグがまとめた市場予想(2.9%)と同じ水準だった。また、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は3.2%となり、前月の3.3%から低下。市場予想(3.3%)も下回った。
12月CPIで物価上昇率に過熱感が出なかったことは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待をつないだ。CMEグループのデータによると、2025年中の利下げ回数が2回以上になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間16日午前10時段階で約50%。前日朝の33%から高くなっており、S&P500の見通しを明るくしている。
エヌビディアは3.40%高で6営業日ぶり反発 テスラも8%の急騰
FRBの利下げ見通しが持ち直したことは、S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株をそろって上昇させた。エヌビディアの株価(NVDA)の15日の終値は前日比3.40%高で、6営業日ぶりの反発。電気自動車(EV)大手テスラの株価(TSLA)は8.04%高の急騰となった。メタ・プラットフォームズ(META)は3.85%高、アルファベット(GOOGL)は3.11%高となっている。
S&P500の見通しには12月小売売上高やTSMC決算発表も影響か
ただ、S&P500の今後の見通しは、米商務省が16日午前8時30分(日本時間16日午後10時30分)に発表する12月の小売売上高でも揺れる可能性がある。ブルームバーグがまとめた市場予想では、小売り売上高の前月比伸び率は0.6%増になる見通し。自動車と部品を除いたベースでは0.5%増となるとみられている。発表される結果が予想よりも強ければ、物価上昇への懸念が再燃するおそれもありそうだ。また、これに先立ち、日本時間16日午後3時に行われる、半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC、TSM)の2024年10-12月期決算発表も、半導体株の見通しを左右する可能性がある。
トランプ氏の大統領就任で波乱も 対中強硬姿勢はエヌビディアの見通しを下押しも
さらに、20日に大統領に就任するトランプ氏の経済政策をめぐっては、高関税や減税路線が物価上昇圧力として働くとみられており、FRBにとっては利下げを難しくする要因となりそうだ。また中国との対決姿勢は、中国向けの輸出が収入源となっているエヌビディアなどの業績を下押しする可能性もある。エヌビディアの株価は13日に米政府が公表した人工知能(AI)開発向け高性能半導体をめぐる輸出規制の見直し案を受けて大きく値下がりしてきただけに、トランプ次期政権下でも中国に対する厳しい姿勢が続くことが分かれば投資家の不安は拡大しそうだ。
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