TSMC、半導体株への期待つなげるか 16日決算 市場見通し焦点
TSMCは16日に2024年10-12月期決算を発表。2025年の半導体市場の見通しに関する言及が世界の半導体株の動向を左右する可能性がある。
半導体受託製造で世界最大の台湾積体電路製造(TSMC)が16日に行う2024年10-12月期決算発表は2025年の半導体市場に関する見通しが焦点だ。TSMCが半導体市場に強気な見通しを示せば、短期的には世界の半導体株の追い風になることも考えられる。ただしアメリカでのドナルド・トランプ氏の大統領就任が20日に控える中、株式市場では半導体企業の経営環境の不透明さが増すとの不安も高まりやすい。半導体株には人工知能(AI)の普及への期待という追い風はあるものの、今後の見通しには不安もつきまとう。
TSMCの10-12月期は台湾ドルベースでの総収入の成長ペースを維持
TSMCは16日午後2時(日本時間16日午後3時)に決算会見を開く。ブルームバーグによると、TSMCの10-12月期に関する市場予想は、米ドルベースの総収入が前年同期比32%増の260億ドル程度と見込まれており、7-9月期の36%増から減速する見通しだ。
一方、TSMCは10日に12月の台湾ドルベースでの総収入を発表。これを踏まえた10-12月期の総収入は前年同期比38.8%増の8684.61億台湾ドルとなった。伸び率は4-6月期の40.1%や7-9月期の39.0%と同水準。総収入の水準はブルームバーグがまとめた市場予想の8547億台湾ドルを上回っている。
また10-12月期決算では、TSMCが米国で上場している米国預託証券(ADR)ベースでの1株当たり利益は、前年同期比49%増の2.15ドルと予想されている。ブルームバーグのまとめでは、TSMCは過去15回の四半期決算のうち4回で総収入が市場予想を超えられなかった。1株当たり利益では1回、市場予想を下回っている。
TSMCの株価は2024年に約90%上昇 2025年の見通しに期待
TSMCのADRでの株価(TSM)は8日の終値で207.12ドル。6日には220.01ドルまで値上がりしていた。TSMCは2024年に株価が89.89%高となっており、2025年も好調を維持できるかが注目される。
ブルームバーグによると、TSMCの直近の株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は24倍程度で、3か月前の7-9月期決算発表直前からほぼ横ばいだ。世界の半導体株の代表格でTSMCの顧客でもあるNVIDIA(エヌビディア、NVDA)の36倍程度との比較では、割安とみることができる。アナリストが提示する目標株価の平均は238.26ドルで、2024年12月以降は260ドル台まで引き上げる動きも出ている。24人のアナリストのうち22人は買い、2人は維持を勧めている。
TSMCの2025年の半導体市場の見通しは? 世界の半導体株を動かす要因にも
TSMCの決算会見では経営陣が示す半導体市場の見通しへの注目度が高い。2024年1月18日の決算会見では、魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOがメモリを除く世界の半導体市場が2024年は「10%以上」成長するとの見通しに言及し、TSMCの株価は前日比9.79%高と急騰。エヌビディアも3.66%高となった。翌19日の東京市場でも東京エレクトロン(8035)が6.03%高、アドバンテスト(6857)が8.20%高となっている。逆に4月18日の決算会見では、魏氏がこの半導体市場の伸び率の見通しを「約10%」とし、1月時点から下方修正されたとして半導体株の急落につながった。
TSMCはこれまでのところ、2025年の半導体市場の成長率について具体的な水準には言及していない。10月17日の7-9月期決算会見では、黄仁昭(ウェンデル・ファン)CFOが2025年の見通しについて語ることは時期尚早だとし、「健全な年になる」と述べるにとどめていた。今回の10-12月期決算会見では、TSMCが示す見通しが2024年から上振れするか下振れするかで、世界の半導体株の値動きが左右される可能性がある。
トランプ氏の大統領就任は世界の半導体株の波乱要因になる可能性も
ただ、世界の半導体株の見通しをめぐる思惑はトランプ氏の大統領就任で大きく変化する可能性がある。トランプ氏は大統領選挙を戦っていた2024年7月に台湾防衛に懐疑的ともとれるインタビューでの発言で半導体株を下落させ、「(台湾は)米国の半導体チップビジネスをすべて奪った」とも述べている。大統領就任後に半導体に関連した保護主義的な言動がでれば、世界の半導体産業の先行き不透明感が強まる懸念も拭えない。
半導体株の上昇は2022年11月の対話型AIサービス「ChatGPT」の登場以来、AIの普及が半導体需要を高めるとの期待に支えられてきた。しかし2024年10月のオランダ半導体製造装置大手ASMLホールディング(ASML)の決算発表に際しては2025年の見通しが弱気だとして株価が下押しされるなど、一本調子での値上がりには脆さもみえる。3年目に入った半導体株上昇の継続には困難さもつきまとっていきそうだ。
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