米国株、半導体輸出規制案で動揺 S&P500見通し懸念 15日にはCPI
S&P500の13日の反発は小幅に終わった。米政府による半導体輸出規制の見直し案でエヌビディアは4日続落。15日にはCPIが発表される。
アメリカの株式市場が半導体輸出規制をめぐる懸念で揺れた。S&P500種株価指数の13日の終値は前週末比0.16%高。12月雇用統計が悪材料視された前週末の急落からの反発は弱く、見通しへの不安が残った。S&P500の足を引っ張ったのは大手ハイテク株の下落。背景には米政府が発表した半導体輸出規制の見直し案があり、NVIDIA(エヌビディア)が内容を批判する声明を発表する混乱となっている。20日に就任するドナルド・トランプ次期大統領の見直し案への対応は不明だが、投資家心理を暗くしているようだ。一方、15日に発表される12月の消費者物価指数(CPI)は総合指数の伸び率が加速する見通し。物価上昇の根強さが意識される結果となれば、S&P500の今後に見通しにとっては逆風になりそうだ。
アメリカのS&P500は小幅反発 長期金利の高さが重荷に
S&P500(SPX)の13日の終値は5836.22で、前週末10日の1.54%安からの反発は小幅に終わった。10日の急落は12月雇用統計で非農業部門の就業者数の伸びが大きかったことが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しを後退させたことが要因。ブルームバーグによると、13日のニューヨーク債券市場の長期金利(10年物米国債)の終値は10日よりも0.02%ポイント高い4.780%で、金利水準の高さが株価の重荷となる状況が続いている。
エヌビディアの株価は4日続落で合計10.84%安 大手ハイテク株が不振
また13日は大手ハイテク株の下落が目立った。エヌビディアの株価(NVDA)は前週末比1.97%安の133.23ドル。6日に最高値(149.43ドル)を付けた後、4営業日続落となり、この間の下落率は10.84%に達した。13日はメタ・プラットフォームズ(META)も1.22%安、アップル(AAPL)も1.03%安になるなどしている。
米政府が半導体輸出規制見直し案発表 中国への迂回輸出を問題視
大手ハイテク株の見通し悪化の背景には、米政府が13日に公表した人工知能(AI)開発向け高性能半導体をめぐる輸出規制の見直し案がある。商務省の発表資料によると、厳格な安全性が確認できる環境でなければ最先端のAIモデルの中核技術が米国外に存在することができないようにすることなどを目指す。現行の中国向け輸出規制の下で、中国企業が第三国を迂回して高性能半導体を輸入する余地があることを問題視している。ジーナ・レイモンド商務長官は「AIに関連した安全保障上のリスクから米国を守ることを可能にする」ルールだと説明している。
一方、見直し案では、相手先を3つのカテゴリーに分け、日本や韓国、オランダ、英国などを含む18か国・地域への輸出は規制の対象外とした。同盟国によるAI開発に配慮したとみられる。見直し案には120日間の意見募集期間が設けられている。
エヌビディアは見直し案を批判 AMDやブロードコムの株価は値上がり
これに対してエヌビディアのネッド・フィンクル副社長は13日に見直し案を批判する声明を発表。見直し案が200ページ以上にも及ぶ複雑な内容で、正式で公的な立法審査もなく起案されたと指摘し、「米国の最先端の半導体、コンピューター、システム、ソフトウエアがどのように設計され、世界で販売されるかについて官僚機構による管理を押し付ける、広範囲に及ぶ越権行為だ」としている。また、米政府が中国のAI開発を抑え込む狙いがあるとしていることについても、「米国の安全を高めることには一切寄与しない」と断じている。
13日の株式市場ではエヌビディア以外の半導体株は値動きが分かれた。半導体開発でエヌビディアと競合するアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)は前週末比1.10%高、ブロードコム(AVGO)は0.44%高と値上がり。一方、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)は0.46%安となった。また、S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手のアーム・ホールディングス(ARM)は2.43%安となっている。
VIX指数は上昇 15日発表の12月CPIでS&P500の見通し悪化も
ただ、米政府がジョー・バイデン大統領の退任間際に出した見直し案の行方は不透明だ。トランプ氏の対応も明確ではなく、半導体各社の業績への影響の見通しははっきりしない。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の13日の終値は19.19で、10日に続き、19台の高水準となっている。政権移行期の混乱が表面化する中、S&P500の値動きが激しくなることへの投資家の不安は高いままだといえそうだ。
こうした中、米労働省は15日午前8時30分(日本時間15日午後10時30分)に12月CPIを発表する。ブルームバーグがまとめた事前予想では、総合指数の伸び率が前年同月比2.9%となり、11月の2.7%よりも高くなる見通し。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は11月と同じ3.3%になると見積もられている。
S&P500は12月雇用統計の好調さが物価上昇圧力の高まりを意識させて急落に見舞われたばかり。12月CPIの結果でも物価上昇がFRBが目標とする2%へと低下していくことの難しさを感じさせれば、S&P500の今後の見通しに改めて暗雲が漂うことも考えられそうだ。
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