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米国株、経済好調嫌気 S&P500急落 トランプ氏就任控え見通し不安

S&P500は週次1.94%安。10日発表の12月雇用統計の好調さが悪材料視された。20日のトランプ次期大統領の就任を控え、投資家の不安が高まっている。

米国株、経済好調嫌気 S&P500急落 トランプ氏就任前に見通し不安 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場が良好な経済状況に嫌気を示した。S&P500種株価指数の10日の終値は1週間前比で1.94%安。好調だった半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価も週次で下落しており、投資家の楽観ムードは後退した。10日に発表された2024年12月雇用統計で就業者数が大幅に増えたことが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを難しくする悪材料とみなされたためだ。米国の金融市場では20日に就任するドナルド・トランプ次期大統領の政権運営が波乱を呼ぶことへの不安も大きい。週明け以降も12月の消費者物価指数(CPI)などの重要経済指標の発表が相次いで予定されており、S&P500の今後の見通しは神経質な値動きになる可能性がある。

アメリカのS&P500は週次1.94%安 最高値からの下落率は4.32%に 

S&P500(SPX)の10日の終値は前日比では1.52%安の5827.04。FRBが連邦公開市場委員会(FOMC)に際して示した経済見通しで利下げペース鈍化の方向性を示した2024年12月18日の2.95%安以来の大きさだった。S&P500は前週(30日-1月3日)も値下がりしており、12月6日の最高値(6090.27)からの下落率は4.32%まで拡大した。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

エヌビディアも週次で5.91%安 TSMCの好業績にも半導体株は沸かず

S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株では、エヌビディアの株価(NVDA)が週次で5.91%安。ジェンスン・ファンCEOは6日にロボットや自動運転車向けの人工知能(AI)開発のプラットフォーム「Cosmos(コスモス)」を発表するなどしたが、最高値を更新したばかりの株価の再加速にはつながっていない。また、トランプ氏の大統領選挙での勝利以降、株価が急騰してきたテスラ(TSLA)も週次で3.83%安となり、前週の4.92%安に続く大きな値下がりとなった。

エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ、アマゾン・コム、アルファベット、アップル、マイクロソフトの株価の推移のグラフ

エヌビディア以外の半導体株も、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)が1週間前比で7.45%安、ブロードコム(AVGO)が3.54%安となるなど、勢いは乏しい。10日には半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)の2024年10-12月期の台湾ドルベースでの総収入が市場予想を超えるという好材料はあったものの、半導体株の見通しを明るくするまでの効果は生まなかったようだ。TSMCの株価(TSM)は10日に前営業日比0.60%高となっている。

エヌビディア、ブロードコム、アーム・ホールディングスなどの米国上場の半導体株の株価の推移のグラフ

12月雇用統計は就業者数が25.6万人増 トランプ次期政権発足前に物価上昇圧力

S&P500を下落させたのは10日発表の12月雇用統計への反応だ。12月雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月比25.6万人増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の16.5万人増を大きく超える結果だった。また失業率は4.1%で11月の4.2%から低下。平均時給の伸び率も前年同期比3.9%増となり、11月の4.0%増から減速した。いずれも労働市場の安定性を示す良好な内容だったといえる。

アメリカの雇用統計(非農業部門就業者数、失業率、平均時給伸び率)の推移のグラフ

しかしこのところの株式市場では20日に発足するトランプ次期政権による高関税などの政策が物価上昇圧力となり、FRBの利下げ継続を難しくすることが不安視されてきた。米国経済の好調さを示す12月雇用統計の結果は物価上昇を連想させる内容といえ、株式市場では金利水準の高止まりにつながる悪材料とみなされたようだ。

長期金利は1年2か月ぶり高さ 12月CPIなどもS&P500の見通しを揺さぶる可能性

実際、10日の金融市場では長期金利(10年物米国債利回り)が大きく上昇した。ブルームバーグによると、10日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.760%で、2023年10月31日(4.932%)以来、約1年2か月ぶりの高さだ。また、金融市場ではFRBの利下げ見通しが大きく後退。CMEグループによると、FRBの2025年の利下げ回数が1回以下になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間11日朝の段階で69%程度となっており、前日の45%程度から大きく拡大した。

米国では今後も重要な経済指標の発表が相次ぐ。なかでも15日午前8時30分(日本時間15日午後10時30分)に発表される12月CPIは、前日に発表される卸売物価指数(PPI)と合わせて、物価上昇の見通しを左右しそうだ。また16日には12月の小売売上高も発表される。

VIX指数も19台まで急騰 投資家不安高まる

こうした中、金融市場ではS&P500の値動きが激しくなることへの警戒感が強まっている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は10日の終値で19.54で、12月19日(24.09)以来の高さに戻ってきた。投資家の不安が高まる中で経済指標の結果が悪材料視されれば、S&P500の今後の見通しを一気に暗くする可能性もありそうだ。


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