米国株に物価上昇不安 S&P500最高値遠のく 雇用統計見通しは?
S&P500は8日に小幅反発。トランプ氏の大統領就任を控えた不安が感じられる。12月雇用統計では経済の過熱感が焦点になりそうだ。
アメリカの株式市場で物価上昇をめぐる不安が材料視されてきた。S&P500種株価指数の8日の取引は小幅高にとどまり、前日の大幅安を取り戻すには力不足。株価の逆風である長期金利(10年物米国債利回り)上昇が4日連続で続いており、先月6日の最高値が遠のき始めた。ドナルド・トランプ次期大統領の就任まで1週間あまりとなる中、トランプ氏の政策運営が物価上昇圧力を強めかねないことなどが材料視されているようだ。こうした中、株式市場の関心は10日に発表される2024年12月雇用統計に集まる。労働市場の過熱感がみられた場合には、物価上昇圧力が高まることへの懸念がS&P500の今後の見通しを暗くする可能性も否めない。
アメリカのS&P500は小幅反発 前日の大幅安は取り戻せず失速感
S&P500(SPX)の8日の終値は前日比0.16%高の5918.25。前日の1.11%安から反発したものの、2024年12月6日につけた最高値(6090.27)までの距離を感じさせた。S&P500は半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が牽引役となった1月3日と6日の連騰で6000台復帰や最高値更新が近づいていたが、失速感が出ている。
エヌビディアの上昇期待は高まらず ファンCEOはAI開発プラットフォームを発表
8日の取引ではエヌビディアが前日比0.02%安となり、前日の6.22%安から復活できず。ジェンスン・ファンCEOは6日午後の講演でロボットや自動運転車向けの人工知能(AI)開発のプラットフォーム「Cosmos(コスモス)」などを発表。しかしエヌビディアの株価は講演前から、期待が先行する形で上昇を続けてきただけに、株価上昇の見通しを一気に高めることはなかったようだ。
長期金利は4日連続で上昇 トランプ氏の過激な政策の本気度は?
S&P500の見通しを悪くしているのは長期金利の上昇だ。ブルームバーグによると、8日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.691%で、4営業日連続での上昇。2024年4月25日(4.705%)以来の高さとなった。金利水準の高まりは株式の投資先としての魅力を相対的に低くする株安要因とされる。
長期金利上昇の背景にはトランプ氏の存在がありそうだ。トランプ氏は7日の記者会見で、グリーンランドの購入やパナマ運河の返還の実現のためには軍事力の行使も否定しない立場を表明。またカナダに対して経済的な圧力を強める姿勢をみせるなど、過激な発言を繰り返している。トランプ氏が就任初日の20日に輸入品への高関税といった政策に向けて動きだせば、トランプ氏の「本気度」が金融市場を揺らすことも考えられる。高関税が物価上昇圧力になるとのシナリオは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースを緩める要因となる。
実際、FRBはトランプ氏の就任が経済の波乱要因になることを警戒しているようだ。FRBが8日に公開した2024年12月17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、「貿易や移民、財政、規制に関する政策の変化の有無や、規模、タイミング、さらに経済に及ぼす潜在的な影響」をめぐる不確実性が増しているとされた。ジェローム・パウエル議長は18日の記者会見で、12月までの3会合連続での利下げが合計1%幅に及んだことを踏まえ、今後の利下げペースが緩やかになることが自然だとの考えを示している。FOMCの参加者は2025年末の政策金利は3.9%程度になるとの見通しを示しており、現状の4.25-4.50%から2回の利下げを想定しているもようだ。
12月雇用統計は就業者数が16.5万人増の見通し 過熱感が出ればS&P500下落も
こうした中、株式市場では10日発表の12月雇用統計の重要度が高まっている。ブルームバーグがまとめた市場予想では、非農業部門の就業者数は前月から16.5万人増となる見通し。また失業率は4.2%、平均時給の前年同月比伸び率は4.0%となり、どちらも前月から横ばいになるとみられている。
雇用統計をめぐっては2024年12月6日に発表された11月のデータで就業者数の伸びが好感されてS&P500の最高値につながった。しかしトランプリスクが意識される中で発表される12月のデータでは、強い経済状況がS&P500の今後の見通しを下振れさせる可能性も拭えない。就業者数や平均時給の結果が予想よりも強くなれば、経済活動の過熱感がFRBの利下げペースをさらに遅くするとの見方が、S&P500に下落圧力をかける可能性もありそうだ。
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