円安に根強さ150円台 米国長期金利上昇 自動車関税は円高要因か
ドル円相場は約3週間ぶりの円安水準で推移。米国の財務状況への不安が長期金利上昇を招いていることが要因だ。ただ、円高に転進する可能性も残る。

ドル円相場で円安の根強さが感じられている。ドル円相場の26日のニューヨーク市場での終値は1ドル=150円台半ばで、約3週間ぶりの円安水準が継続。背景にはアメリカの長期金利(10年物国債利回り)の上昇があり、米国政府の財務状況への不安がくすぶり始めたことが影響しているとみられる。一方、日本の金利水準をめぐっては日本銀行が引き続き利上げを見据えており、こちらも金利の先高観が強い。今後のドル円相場の見通しをめぐっては、28日に発表される東京都区部の消費者物価指数(CPI)やドナルド・トランプ大統領が26日に発表した輸入自動車への追加関税などが米国経済に悪影響を及ぼすとの懸念が、円高圧力として働く可能性もありそうだ。
ドル円相場は150円台で推移 円安圧力に根強さ
ドル円相場(USD/JPY)の26日のニューヨーク市場の終値は1ドル=150.57円だった。27日の東京市場でも150円台で取引されている。ブルームバーグによると、ドル円相場は25日の取引時間中には150.94円をつけ、3日(151.30円)以来、約3週間ぶりの円安水準に到達。11日につけた146.54円からは約2週間で4.40円の円安進行となっていた。

アメリカの長期金利は4.353%まで上昇 約1か月ぶりの高水準
円安の背景になっているのは米国の長期金利の上昇だ。米国の長期金利は26日に一時、4.353%まで上昇。ブルームバーグによると、2月24日につけた4.401%以来、約1か月ぶりの高水準だ。米国の長期金利はトランプ氏による高関税政策が経済の見通しを暗くした3月4日には4.104%まで下がっていたが、金利の流れが反転したといえる。トランプ氏は24日、相互関税についての強硬姿勢を軟化させており、過度な景気後退不安は落ち着いた。投資家のリスク回避姿勢が弱まったことが、米国債の売却と価格低下につながり、利回りを上昇させたとみられる。
また長期金利をめぐっては新たな上昇要因も出てきた。スコット・ベッセント財務長官は25日、米上下両院の共和党指導部らと会談。トランプ氏が前回の大統領任期中の2017年に実現した減税策の恒久化について協議した。ベッセント氏は「生産的な会合の結果、迅速な時間軸での実現が可能だとの自信を得た」としている。減税の恒久化は米国政府の財政赤字を悪化させかねず、財政健全性への信任が揺らいで米国債が売られる中での長期金利上昇を呼び込む可能性がある。
また、財政赤字の拡大懸念は、債務上限問題の再燃も引き起すおそれがある。議会予算局(CBO)は26日、米国の債務は8月か9月に上限に達するとの見通しを発表。債務を上積みする必要性が強まった場合には5月後半か6月にも上限に到達する可能性があるとしている。共和党指導部は減税を含む予算案に債務上限の引き上げを盛り込む方向で協議しているが、共和党内には歳出拡大に否定的な議員も多く、調整が難航するリスクは拭えない。米国債のデフォルトが意識される状況になれば、やはり長期金利は上昇しやすくなる。
日本の長期金利は1.589%まで上昇 26年5か月ぶりの高水準を更新
ただしドル円相場の今後の見通しをめぐっては、日本の長期金利の上昇基調という円高要因もある。日本の長期金利は27日に一時、1.589%をつけ、2008年10月22日(1.605%)以来の高水準を更新。日銀の植田和男総裁が26日の衆院財政金融委員会での証言で、利上げを見据える姿勢に変化をみせなかったことなどが材料視されている。米国と日本の長期金利がともに上がりやすくなる中、日米の長期金利差は横ばい傾向。ブルームバーグによると26日終値段階での日米金利差は2.775%ポイントで、8営業日連続での2.7%ポイント台が続いている。

東京都区部CPIは28日に発表 物価上昇率上振れなら円高見通しも
こうした中、ドル円相場では28日午前8時30分に発表される東京都区部CPIの3月中旬速報値に注目が集まる。ブルームバーグがまとめた事前予想では、総合指数の伸び率は前年同月比2.7%、生鮮食品を除いたコア指数の伸び率は2.2%、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数の伸び率は1.9%になる見通しだ。実際の結果が予想よりも上振れた場合は、日銀の追加利上げの確度を高める円高要因となりえる。

また、ドル円相場では引き続き、トランプ氏の動向が波乱要因となりえる。トランプ氏が26日に発表した輸入自動車への25%追加関税や、4月2日に発表する相互関税が米国経済の先行きへの不安を強めた場合、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しが強まる結果として円高が進むことも考えられそうだ。
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