円高圧力拡大の可能性 トランプ発言で再び148円台 日米金利差縮小
トランプ氏は3日に日本と中国が通貨安政策を取らないよう牽制。米国経済の見通し不安を背景とした日米金利差縮小も円高要因だ。

ドル円相場で円高が進んでいる。4日の東京市場では一時、1ドル=148円台半ばをつける場面もあり、1週間ぶりの円高水準となった。3日にアメリカのドナルド・トランプ大統領から円安を牽制する発言が出たことで、円高が進みやすくなっている。またトランプ氏はメキシコ、カナダからの輸入品への高関税発動を明言。米国経済の先行き不安は日米の長期金利(10年物国債利回り)の差を2年半ぶりの小ささに縮め、やはり円高圧力として働いている。さらに日本銀行の金融政策に関しては、年内の追加利上げが見込まれる状況に変わりがないことも円高要因だ。ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、5日に予定されている内田真一副総裁の講演などが、円高圧力を強める可能性も考えらえる。
ドル円相場は一時、148.60円 5か月ぶりの147円台の可能性も
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間4日午前10時30分ごろに一時、1ドル=148.60円をつけた。ブルームバーグによると、2月25日につけた148.57円以来の円高水準で、さらに円高が進めば2024年10月上旬以来の147円台も見えてくる。ドル円相場は3日のニューヨーク市場の終値(149.50円)で前日比1.13円の円高が進んでおり、勢いが継続している形だ。

トランプ氏が円安を牽制 米国経済の見通し悪化もドル安要因に
3日以降の円高の要因はトランプ氏から出た円安牽制発言だ。ブルームバーグによると、トランプ氏は3日、ホワイトハウスで記者団に対して、日本と中国が通貨安政策をとるなら米国は不当に不利な立場に立たされると言及。こうした国に関税を課すと示唆した。トランプ氏は大統領選挙を戦っていた2024年7月のインタビューでも円安と人民元安を問題視していたが、大統領就任後も立場に変化がないことが感じられた。
また、3日の円高は「ドル安」の側面も強い。トランプ氏は3日、メキシコとカナダからの輸入品に対する25%関税を4日に発動することを明言。中国製品への追加関税については2月に決めた10%の税率を20%に引き上げた。製造業の景況感が市場予想を下回る悪さだったこともあり、米国の長期金利は3か月ぶりの低さとなる4.156%まで下がった。3日のFX市場では円だけでなく、ユーロやポンド、豪ドルもドルに対して値上がりしている。

日米長期金利の差は2年半ぶりの小ささ 日米の金融政策は逆方向に
米国の長期金利低下は、ドル円相場では、日米の長期金利差の縮小を通じた円高材料となった。ブルームバーグによると、3日終値時点の日米金利差は2.747%ポイントで、2022年8月18日(2.685%ポイント)以来の小ささだ。2022年8月のドル円相場は1ドル=130-139円で推移しており、足元のドル円相場がさらに円高に進むことも想定される。

さらにドル円相場では日銀の利上げ見通しも引き続き円高圧力として働いている。ブルームバーグによると、金融市場では日銀が9月の金融政策決定会合までに利上げに踏み切ることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間4日午後3時の段階で100%を超えている。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策をめぐっては、米国経済の見通し悪化もあり、年内2-3回の利下げが想定されている。日米の金融政策の方向性の違いは、日米の金利差がさらに縮小すること予感させる円高要因だ。
日銀の内田副総裁の講演がドル円相場の今後の見通しを左右か
こうした中、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、5日午前10時30分に予定されている日銀の内田副総裁の講演が注目される。日銀は1月24日に政策金利を0.5%に引き上げたうえ、経済や物価が見通し通りに推移すれば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」とした。内田氏が改めてこうした立場を強調すれば、ドル円相場での円高圧力として働きそうだ。
一方、日本の長期金利はすでに1.4%台まで上がり、2009年11月以来の高水準となっている。植田和男総裁は2月27日の南アフリカでの記者会見で、通常の市場の動きを超えて長期金利が急激に上昇する例外的な状況では、「機動的なオペを打つ、あるいは工夫をするということも考え得る」と述べた。植田氏は21日の国会答弁でも同趣旨の発言を行い、ドル円相場では円安材料として受け止められた。5日の内田氏の講演が長期金利上昇への警戒を示したと受け止められれば、足元のドル円相場で円高にブレーキがかかることも考えられそうだ。
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