米国株、トランプ政権の見通しに期待　S&P500上昇　高関税懸念後退

アメリカの株式市場がドナルド・トランプ大統領の就任に期待を示した。21日のS&P500種株価指数の終値は3連休前比で0.88％高。3週間半ぶりに6000の大台に復帰した。トランプ氏が20日の就任初日に高関税の発動を回避したことが好感された形だ。半導体大手NVIDIA（エヌビディア）などの半導体株も値上がりしており、トランプ氏が人工知能（AI）関連投資を後押しすることへの期待も影響したとみられる。ただし大手ハイテク企業が2024年10-12月期決算発表を控える中で、株価の値動きには慎重姿勢も感じられる。S&P500の今後の見通しでは、トランプ氏の言動をめぐる不確実性とともに、企業業績への懸念が上昇の足を引っ張ることも考えられそうだ。

アメリカのS&P500は3連休前比0.88％高　3週間半ぶりの6000台復帰

S&P500（SPX）の21日の終値は6049.24。2024年12月26日（6037.59）以来の6000台復帰となった。ブルームバーグによると、長期金利（10年物米国債）の21日のニューヨーク市場の終値は4.577％で、2日（4.560％）以来の低さとなり、株価の見通しを明るくした。

21日のS&P500の上昇は幅広い銘柄の値上がりに支えられたといえる。S&Pグローバルが公表している、時価総額を考慮せずに算出したS&P500は21日の取引で3連休前比1.17％高。時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすい、通常のS&P500の0.88％高を上回る成績だった。

トランプ氏は就任初日の高関税発動を回避　VIX指数は低下

株価上昇の背景にはトランプ氏が20日の就任初日に高関税発動を見送ったことがある。トランプ氏は就任演説では不法移民対策や、原油やガスの増産に重点を置き、中国をはじめとする貿易相手国への高関税には時間を割かず。その後、記者団に対して、「メキシコとカナダに対する25％の関税を検討している」「2月1日（の実施）を考えている」などと言及したと報じられたが、中国との対決姿勢の強まりは感じられなかった。ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数（VIX）の21日の終値は15.06で、12月26日（14.73）以来の低さとなっており、投資家の安心感につながったようだ。

エヌビディアなど半導体株は上昇　アーム・ホールディングスは3.98％高

米中関係の悪化見通しがひとまず後退し、中国向け輸出が収入源となっている半導体株は上昇。21日のエヌビディアの株価（NVDA）は3連休前比で2.27％高となった。クアルコム（QCOM）も1.65％高、ブロードコム（AVGO）も1.21％高となっている。またS&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス（ARM）の株価も3.98％高となった。

トランプ氏、ソフトバンクグループの孫正義会長らと5000億ドルAI投資を発表

21日の半導体株の上昇にはトランプ氏が巨額のAI投資を発表するとの見通しがあったことも影響したようだ。実際、トランプ氏は21日の取引時間終了後、ホワイトハウスで、アームの親会社であるソフトバンクグループ（9984）の孫正義会長、対話型生成系AI「ChatGPT」の開発で知られるオープンAIのサム・アルトマンCEO、オラクルのラリー・エリクソン会長とともに共同記者会見を開催。3社が「スターゲート・プロジェクト」と銘打った共同事業で、「最低でも5000億ドルのAIインフラ投資」を行うと発表した。

ソフトバンクグループはスターゲートについて、オープンAIのために新たなAIインフラを米国内で構築するため、今後4年間で5000億ドルを米国内に投資すると説明。数十万人の雇用を米国で創出するとの見通しを示している。初期の主要テクノロジーパートナーとして、アーム、マイクロソフト（MSFT）、エヌビディア、オラクル（ORCL）、オープンAIを挙げた。

アップルやテスラは下落　企業決算への警戒はS&P500の見通しの重荷に

ただ、トランプ氏の大統領復帰に株式市場の見通しが晴れ渡ったわけではない。21日の終値ではアップルの株価（AAPL）が3.19％安。電気自動車大手テスラ（TSLA）の株価も0.57％安となった。マイクロソフトも0.12％安となっている。

大手ハイテク各社は決算発表を間近に控えており、投資家の間では慎重ムードもあるようだ。29日には、マイクロソフトとテスラに加え、SNS大手のメタ・プラットフォームズ（META）も10-12月期決算を発表。アップルは30日、アルファベット（GOOGL）は2月4日に決算発表を予定している。

S&P500の今後の見通しをめぐっては、企業決算に加え、米国の物価や雇用の情勢を踏まえた米連邦準備制度理事会（FRB）の動向の重要性も高い。また、就任初日に安全運転をみせたトランプ氏も、1期目と同様に中国との対決姿勢を強めていく可能性は拭えず、株式市場がトランプ氏からの情報発信に過敏に反応する展開も想定されそうだ。