原油価格、急落 WTIは75ドル台 トランプ氏就任で見通し不透明
原油価格は75ドル台まで下落。トランプ氏の原油増産姿勢が材料視された。一方、カナダに対する強硬姿勢は原油輸入に影響を及ぼす可能性もある。
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原油価格がアメリカでのドナルド・トランプ大統領の就任に下落で反応した。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は23日は1バレル=75ドル台で取引されており、15日につけた直近の高値から5ドル以上の値下がり。トランプ氏が20日の就任演説で米国内の原油開発を後押しする姿勢を強調し、供給増加見通しが強まったことが影響した。ただ、トランプ氏はカナダとメキシコからの輸入品への高関税にも言及。カナダは米国が輸入する原油の6割を供給しているだけに原油市場の見通しには不透明感も強い。足元の原油需要をめぐっては強さも感じられており、原油価格は上下に動きやすい状況といえそうだ。
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WTIは75ドル台前半 トランプ氏の大統領就任で大幅に下落
WTI(翌月渡し、WTI原油)は日本時間23日午前の取引では1バレル=75ドル台前半で推移した。原油価格は1月に入ってから、米国での厳冬や米政府によるロシアの石油産業に対する経済制裁などで急騰。ブルームバーグによると、15日には80.77ドルをつける場面もあったが、急激な値下がりに見舞われた形だ。
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原油価格を下落させたのはトランプ政権の始動だ。トランプ氏は20日の就任演説で、物価高対策を見据えた原油やガスの増産を行うと強調。連邦政府が所有する土地でのエネルギー開発を容易にすることなどを盛り込んだ大統領令に署名した。米国の原油増産の可能性は価格下落圧力とみなされ、翌21日のWTIの終値は3連休前比で2.56%安となった。原油価格は22日も0.59%安となっている。
また、2025年の石油需要をめぐっては、上昇の緩やかな減速が見込まれている。石油輸出国機構(OPEC)が15日に発表した1月の月報では、2025年の世界の石油需要について日量1億0520万バレルとの見通しが示され、2024年よりも日量145万バレル増えるとされた。2024年は日量159万バレル増だったと見積もられており、需要増のペースが鈍化することになる。需要の見通しの弱さはやはり原油価格の下落要因といえる。
トランプ氏の高関税政策はカナダからの原油輸入に波乱も
ただ、トランプ氏の大統領復帰は原油価格の見通しをいっそう不透明にしている。トランプ氏は20日に、メキシコとカナダに対する25%の関税を2月1日からかけることを検討しているとも発言。米国がカナダから輸入している原油についても例外扱いにはならないとみられている。米エネルギー情報局(EIA)によると、米国が2023年に輸入した原油は日量648.9万バレル。このうち約6割にあたる日量388.5万バレルはカナダから輸入されている。
米国がカナダへの高関税に踏み切った場合は、カナダが対抗措置として米国への原油輸出に制限をかけることも考えられる。米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、カナダのジョナサン・ウィルキンソン・エネルギー天然資源相はインタビューで、対立が激化した場合を念頭に、「長期的にはあらゆる選択肢が排除されていない」と述べたという。
足元の原油需要には強さも 原油価格の見通しは不透明に
さらに足元の原油需要をめぐっては強さが意識される可能性もある。EIAが15日に発表した10日段階での原油在庫(戦略備蓄除く)は1週間前比196.2万バレルの減少で、ブルームバーグがまとめた市場予想の85万バレル減少よりも大きな在庫の取り崩しとなった。23日午前10時30分(日本時間24日午前0時30分)に発表される17日時点のデータは40万バレルの減少となると予想されている。
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トランプ氏が目指す原油などのエネルギー増産をめぐっては、エネルギー企業側が投資に慎重姿勢を示す可能性もある。また、カナダとの通商関係の見通しでも曲折が予想される中、原油価格は上下に急変する可能性がありそうだ。
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