原油価格、経済制裁で急騰　WTI、一時79ドル台　生産は拡大見通し

原油価格が急騰している。原油先物市場の指標価格であるWTI（翌月渡し）は13日に一時、1バレル＝79ドル台まで上昇。5か月ぶりの高さとなった。アメリカ政府が10日に発表したロシアの石油産業に対する経済制裁強化が値上がり要因として意識されたためだ。一方、2025年の原油市場をめぐっては、需要減少や供給拡大といった原油価格の下落を思わせる発表も相次いでいる。米国で20日に就任するドナルド・トランプ次期大統領は原油生産を後押しする立場を強調しており、原油市場の今後の見通しでは過剰な供給が値下がり材料とみなされる可能性もありそうだ。

原油価格は5か月ぶりの高さ　13日に79.27ドル

WTI（翌月渡し、WTI原油）は日本時間15日午前の取引では1バレル＝77ドル台後半で推移している。ブルームバーグによると、13日には一時、79.27ドルをつける場面もあり、2024年8月13日の高値（80.15ドル）以来の高水準となっている。2024年末には71ドル台だったWTIは年明け以降、厳冬による需要増加見通しなどから上昇しており、さらに値上がり傾向が鮮明になった形だ。

アメリカ政府による経済制裁が値上がり要因に　中国の輸入は減少

原油価格上昇を加速させたのは米政府が10日に発表したロシアに対する経済制裁の強化だ。ロシア石油大手のガスプロムネフチとスルグトネフテガスが対象に含まれ、ロシアの石油輸出による収入獲得を阻む狙いがある。ジャネット・イエレン財務長官は発表文の中で「ロシアの石油輸出を支える輸送や金融業務を含む、ロシアの石油貿易に関わるリスクがさらに高まる」としている。WTIのニューヨーク市場での終値は10日に前日比3.58％高、週明け13日も2.94％高となった。

一方、原油市場では需要減少を連想させるデータも出ている。13日に発表された中国の12月の原油輸入量は4784万トンで、前年同月比1.1％減。2024年の通年でみても輸入量は1.9％減となり、中国経済の弱さが原油需要を下押ししているといえそうだ。

2025年の石油市場は供給超過予想　EIAが見通しを修正

また米エネルギー情報局（EIA）が14日に発表した1月の短期エネルギー見通し（STEO）では、2025年の世界の石油市場が日量26万バレルの供給超過になるとされた。12月段階の見通しでは日量8万バレルの需要超過とされていたが、生産量の見通しが日量12万バレル上方修正されると同時に、需要量が22万バレル下方修正された。EIAは2026年についても日量74万バレルの供給超過になるとみている。

こうした中、EIAが15日午前10時30分（日本時間16日午前0時30分）に発表する10日時点の原油在庫量（戦略備蓄除く）では、在庫の取り崩し幅が小さくなる見込み。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、原油在庫量は1週間前より85万バレル少なくなるとみられている。予想通りになれば8週連続での在庫減少となるが、減少幅は前週の95.9万バレルよりは小さくなる見通しだ。

トランプ氏は原油増産を支援　20日の大統領就任当日に着手か

原油需給をめぐっては石油輸出国機構（OPEC）や国際エネルギー機関（IEA）も15日に見通しを発表する予定。EIAと同様に供給増加や需要の減少の見通しが強まれば、原油価格にとっては下押し圧力になりそうだ。

また米国で20日に大統領に就任するトランプ氏は初日から原油増産に向けた動きをとるともみられている。米紙ウォールストリート・ジャーナルは14日、トランプ氏は20日に数十の大統領令に署名をしてエネルギーや移民、教育などについての政策の大転換を図ると報じた。トランプ氏は大統領選挙戦中から米国内での原油やガスなどの化石燃料採掘を支援する姿勢を強調しており、原油市場の今後の見通しを下落方向に揺らす可能性もありそうだ。