原油価格、2025年の見通しは? 増産でWTI下落か 中国経済不安も
WTIは70ドル台で推移し、方向性が出ない状況。ただ、2025年は産油国の増産や中国経済への不安などが原油安要因として意識される可能性がある。
原油価格の値動きが小さくなっている。原油先物市場の指標価格であるWTI(中心限月)の24日の終値は1バレル=約70ドル。12月に入ってからの値幅は4ドル台でしかなく、方向性が出てこない。ただ、原油市場では2025年はアメリカやOPECプラスの増産が進むとみられ、供給過剰が意識されて原油価格が下押しされる可能性がある。また中国経済の不振が需要の伸び悩みにつながるとの懸念も根強く、やはり原油安の要因といえそうだ。一方、ウクライナや中東をめぐる地政学リスクという原油高要因はくすぶるものの、原油価格は下落方向に動きやすい環境にある。
WTIは70.10ドル 12月の値幅は4ドル台で方向性欠く
WTI(WTI原油)の24日のニューヨーク市場での終値は1バレル=70.10ドル。ブルームバーグによると、12月以降の値動きでの最高値は13日につけた71.42ドル、最安値は6日につけた66.98ドルで、値幅は4.44ドルにとどまっている。WTIの値幅は11月は5.88ドル、10月は11.30ドルあっただけに、値動きの縮小傾向が出ている形だ。
こうした中、投資家の関心は2025年の価格動向に向かう。国際エネルギー機関(IEA)が12日に発表した12月の月報では、2025年の石油市場は日量140万バレルの供給超過になる見通し。一方、米国のエネルギー情報局(EIA)は12月の短期エネルギー見通し(STEO)で2025年は日量8万バレルの需要超過になると予想している。需給バランスをめぐる見方が分かれる中、やはり原油価格の見通しはつきにくい。
2025年はアメリカとOPECプラスの増産見通しがWTIを下押しか
ただ、1月20日に発足するドナルド・トランプ次期政権が原油増産を見据えていることは確かだ。トランプ氏は大統領選挙に際し、規制緩和などを通じて米国内での原油生産を後押しする考えを強調。財務長官に指名した著名投資家のスコット・ベッセント氏も「日量300万バレル相当の原油などの増産」を提言しているという。
また、サウジアラビアやロシアで作るOPECプラス内の8か国は4月からの段階的な減産縮小で、2026年9月までに日量216万バレルの増産を進める方針。アラブ首長国連邦(UAE)にはさらに日量30万バレルの増産が認められている。米国、サウジアラビア、ロシアといった主要な産油国がそろって増産を見据えている状況は、2025年の原油市場にとっては価格下落要因といえそうだ。
中国経済復調のハードルに高さ 需要増加で原油価格上昇シナリオは困難?
一方、需要面では米国と中国の動向が注目される。このうち米国経済は堅調な成長が継続。減税路線や規制緩和などを重視するトランプ次期政権も、経済成長にプラスだとみられている。これに対して中国経済は減速への懸念が強い。このため中国共産党の中央政治局会議は9日に「より積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策」の実行を促す方針を確認しており、経済活動を上向かせようとしている。米国経済が好調を維持し、中国経済が復調に至れば、原油市場では需要増が見込まれ、上昇圧力として働きそうだ。
とはいえ、米国経済は物価上昇率の下げ渋りという課題も抱えており、成長期待が高まれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を高止まりさせ、ブレーキをかけるシナリオも意識されやすくなる。また、中国経済は不動産価格の下落や人口減少、トランプ次期政権との対立激化といった不安材料も多く、見通しに対する楽観は広がりにくい。このため原油需要増加が価格を押し上げる筋書きも、実現へのハードルは高い。
ウクライナや中東の地政学リスクが大きく悪化すれば原油価格上昇要因に
2025年の原油市場をめぐっては、ウクライナ情勢や中東情勢といった不確定要素も引き続き存在している。ただ、ロシアがウクライナを侵攻した2022年2月24日以降、原油市場には上昇圧力がかかったものの、1バレル=80ドルを大きく上回る値動きにはつながっていない。また、2023年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃以降の中東情勢悪化も、原油価格の大幅な上昇は招かなかった。中東やウクライナをめぐる地政学リスクが大きく悪化する新たな展開が起きなければ、2025年の原油価格の見通しでは下押し圧力の強さが材料視されそうだ。
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