有事の円買い復活か　中東緊迫で円高ドル安　S&P500は値上がり

中東情勢の緊迫化にドル円相場が円高で反応した。イスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃を受けた9日の外国為替市場ではニューヨーク時間に入ってから円買いが加速。東京時間の10日午前までの間に約1円の円高ドル安が進行した。外国為替市場で近年指摘されてきた「有事のドル買い」とは逆の動きが出た形だ。アメリカの株式市場でもエネルギー株が買われてS&P500種株価指数が値上がりするなど、有事を意識した値動きがみられる。ドル円相場は日本政府による為替介入への警戒もあって円安にブレーキがかかっており、中東有事を機に相場の流れが転換する可能性もある。

ドル円相場は一時、１ドル＝148.15円まで円高ドル安に

ハマスは7日にイスラエルへの攻撃を開始。イスラエルもハマスが実効支配するパレスチナのガザ地区への大規模な攻撃を開始した。週明けの9日のドル円相場（USD/JPY）は、日本が休日だったこともあり、1ドル＝149.20円程度での小幅な値動きが続いたが、ニューヨーク時間に入ってから円高ドル安が進行した。金融情報会社リフィニティブのデータによると、10日午前には一時、148.15円をつけ、1円程度の円高ドル安となった。

S&P500は0.63％高に

外国為替市場では世界情勢が悪化すると安定資産とされる円が買われる傾向がある。リーマン・ショックがあった2008年は、前年末の1ドル111円台から90.90円までの円高ドル安が進行。東日本大震災があった2011年には、日本の社会や経済が深刻な痛手を受ける中でも、一時、75.55円まで円高ドル安が進んだ。一方、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が始まった2020年は極端な円高は進まず。ロシアがウクライナに侵攻した2022年はむしろ、ドルが買われて円が売られる展開となっている。

今回のハマスによるイスラエル攻撃で高まった緊張がどこまで継続するかは不透明だ。しかし9日のニューヨーク商品取引所（NYMEX）では原油の指標価格であるWTI（WTI 原油）が上昇。前日比3.59ドル高の1バレル＝86.38ドルを付けるなど、中東情勢の悪化を見込んだ動きが出ている。株式市場ではシェブロンなどエネルギー関連企業の株が買われ、S&P500（SPX）の終値は前週末比0.63％高となった。

円高ドル安は為替介入警戒で進みにくい状況

このところのドル円相場では3日に一時、1ドル＝150.16円まで円安ドル高が進んだ直後、一気に147円台まで円高ドル安方向に振れるなど、日本政府の為替介入に対する警戒感が強まっている。相場が円安ドル高方向には動きにくい環境の中、中東情勢の緊迫化が「有事の円買い」を連想させれば、円高ドル安の流れがさらに進む可能性もある。

2022年以降の円安ドル高は、2月のロシアのウクライナ侵攻だけでなく、3月からの米連邦準備制度理事会（FRB）による利上げ開始に動かされた側面も強い。今後のドル円相場の先行きは、中東情勢の進展とともに、引き続き日米の金融政策の先行きにも大きく左右されることになりそうだ。