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【ドル円の週間見通し】 衆院選後のシナリオ、一過性の円高を警戒も結局は米国の経済指標次第

10月27日に衆議院議員選挙の投開票が行われる。与党の過半数割れとなれば、週明けの日本株は急落でスタートする可能性がある。外為市場ではリスク回避の円高を警戒しておきたい。また、与党が過半数を維持する場合も円高の要因になり得る。しかし、円高へ振れても一時的な動きで終わることが予想される。その理由とは?このレポートでは、衆院選後のドル円のシナリオについて考察する。

Source: Adobe images Source: Adobe images

記事のポイント

・今回の衆院選では、与党が過半数を維持できるのか?が焦点となろう
・衆院選後の2つの円高シナリオ
・衆院選が円高の要因となっても、ドル円のトレンドは「アメリカ次第」である
・ドル円、今週の見通しと注目のチャートポイントについて


衆院選後の展望:2つの円高シナリオ

シナリオ1:政治リスクによる円高

10月27日に第50回衆議院議員総選挙が行われる。選挙の結果を受け週明けの円相場が円高へ振れる場合は、2つのシナリオが考えられる。

ひとつは、株安による円高である。10月の第3週目以降、国内のメディアでは与党過半数割れの可能性についての報道が散見されるようになった。そして選挙の終盤戦では、自民党が非公認とした候補の党支部に2000万円の活動費を支出したことの是非が論点として浮上し、与党(特に自民党)がさらに厳しい状況に追い込まれている。

「政治と金の問題」により、自民党と公明党(与党)が過半数の233議席を維持できない場合は、週明けの株式市場で国内政治の先行きリスクがメインテーマとして浮上することが予想される。

すでに日経平均と東証株価指数(TOPIX)は衆院選前に下落幅が拡大しているが、選挙で政局不安がさらに高まれば、週明けの市場は急落で始まる可能性がある。そして、今週は株安の一週間となる可能性もある。

TOPIXと日経平均の動向:10月15日~25日

TOPIXと日経平均の動向:10月15日~25日

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 10月11日の終値を100として指数化

一方、今月に入り外為市場では円安が進行している。特に対米ドルでは6%近く下落している。ゆえに、株安がさらに進行する場合は、ポジション調整(リスク回避で円を買い戻す)の口実に使われる可能性があろう。

円相場の騰落率:10月1日~25日

円相場の騰落率:10月1日~25日

ブルームバーグのデータで筆者が作成

シナリオ2:政治のリスク後退による円高

円高シナリオとしてもう一つ注目しておきたいシナリオがある。それは、与党が233議席の過半数を維持する場合である。

10月の第3週目以降のドル円と日本株の動向を確認すると真逆の展開となっている(下のチャート、赤ラインを参照)。円安と株安が同時に進行している状況は、「日本売り」ともいえる。

ゆえに、衆院選で与党が233議席の過半数を維持し政治リスクが後退する場合は「日本売り」の逆回転、つまり円と日本株が買い戻される展開が予想される。

ドル円、TOPIX、日経平均の動向:10月15日~25日 ※ドル円は14日~25日

ドル円、TOPIX、日経平均の動向:10月15日~25日 ※ドル円は14日~25日

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 10月11日の終値を100として指数化

衆院選後の展望:円安のシナリオ

冒頭で述べた政治リスク(シナリオ1)は、円安の要因にもなり得る。この点を示唆しているのが、上のラインチャートで示したドル円(USD/JPY)の動きである。

上で述べたとおり、10月の第3週目から与党過半数割れの可能性についての報道が見られるようになった。歩調を合わせるようにドル円が上昇(米ドル高・円安が進行)すると同時に日本株が下落した。

衆院選で政治リスクが顕在化すれば、この「日本売り」がさらに進行する展開も想定しておきたい。

結局は「アメリカ次第」

衆院選が円高の要因となりドル円(USD/JPY)が下落しても、その動きは一過性で終わると筆者は考えている。今のドル円のトレンドは「アメリカ次第」の状況にあるからだ。この点を示唆しているのが、下のラインチャートで示した矢印である。

10月に発表された重要なアメリカの経済指標は、いずれも各市場でソフトランディング期待を高める内容だった。特に米債市場では、景気の先行きを織り込んで動く10年債利回り(以下では長期金利)が、7月下旬以来となる4.2%台まで上昇している。

また、金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りも4.1%台まで上昇している。この動きは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが緩慢になる可能性を意識した動きと考えることができる。

米金利の上昇は米ドル高の圧力を高めている。同時に、日米利回り格差の拡大も促している。これら市場の動きがドル円を153円台まで押し上げる土台となった。ゆえにこの土台が崩れない限り、衆院選が円高の要因となっても、それは「調整の円高」で終わる可能性が高いだろう。

米長期金利、ドル指数、ドル円の動向:2024年6月以降

米長期金利、ドル指数、ドル円の動向:2024年6月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 10月25日までの動向

焦点は米国の雇用指標

「アメリカの土台」がさらに強固となるのか?今週、その鍵を握るのが雇用関連の経済指標である。今週29日に9月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数、30日に10月のADP雇用統計、31日に第3四半期の雇用コスト指数、そして11月1日に10月の雇用統計が発表される。

これらの雇用指標でアメリカ労働市場の底堅さが確認される場合は、米金利と米ドルの高止まり、または上昇の要因となろう。強い雇用指標は、ドル円(USD/JPY)の押し上げ要因となろう。

一方、今週の雇用指標、特に雇用統計が労働市場の軟化を示唆する場合は、利回りが4%台にある米債の投資妙味が増すだろう。このケースでは「米金利の低下→米ドル高の調整(ドル安)→ドル円の下落」を想定しておきたい。

米国の雇用統計 各項目の動向:2023年10月以降

米国の雇用統計 各項目の動向:2023年10月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:10月の市場予想


ドル円の週間展望とテクニカル分析

153.30の突破と155.00のトライ

ドル円(USD/JPY)は10月25日の時点で、7月11日の高値161.76と9月16日安値139.58のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準153.30レベルがレジスタンスとして意識されている(下の日足チャート、黒矢印を参照)。

日本の財務省サイドから円安をけん制する発言が聞かれたことで、先週24日の市場では反落する局面が見られた。しかし、200日線がサポートラインとして意識された。また、10日線は100日線との間でゴールデンクロスへ転じている。日足のMACDが上昇トレンドにあることも考えるならば、ドル円は地合いの強い。

この状況で衆院選が円安の要因となるか、またはアメリカの雇用指標が米ドル高の要因となれば、ドル円は153.30レベルを突破することが予想される。円安と米ドル高が同時に発生すれば、154円台へ一気に上昇する展開を想定しておきたい。

ドル円が154円台の攻防へシフトすれば、155.00のトライが視野に入ろう。7月下旬にこの水準は、レジスタンスラインへの転換が確認されている(下のチャート、赤矢印を参照)。

ドル円のチャート:日足 2024年6月下旬以降

ドル円のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

下値の焦点は150円ミドルの維持

今週、ドル円(USD/JPY)が下落する場合は、150円ミドルの維持が焦点となろう。

先週25日時点で10日線は150.60台へ上昇している(上の日足チャート、緑ラインを参照)。100日線は150.58レベルで推移している(上の日足チャート、青ラインを参照)。また、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準が150.65レベルにあたる(下の1時間足チャートを参照)。テクニカルの面で150円の半ばを、今週の重要なサポートポイントと想定しておきたい。

ドル円が150円のミドルを目指すサインとして、フィボナッチ・リトレースメント38.2%と半値戻しの攻防に注目したい。後者の半値戻し151.14の下方ブレイクは、ドル円が150円台へ下落するサインと捉えたい。

なお、上で取り上げたフィボナッチ・リトレースメントの水準はいずれも相場をサポートした経緯がある。

分足(このレポートでは45分足を採用)のMACDで相場のトレンド、RSIで短期的な相場の過熱感を追いながら、これらの指標がデッドクロスへ転じる場合は、上で取り上げたフィボナッチ・リトレースメントの攻防を意識したい。これらテクニカルラインの攻防でMACDとRSIが一転してゴールデンクロスへ転じる場合は、ドル円の押し目買いを考えたい。

ドル円のチャート:45分足 10月21日以降

ドル円のチャート:45分足 10月21日以降

出所:TradingView


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