円高圧力、雇用統計で再上昇も アメリカ経済に弱さ 利下げ見通し深まる
ドル円相場は4日、再び144円台を記録。米国経済への不安が背景にあり、今後の雇用関連指標の結果でも相場が動く可能性がある。
ドル円相場で円高圧力が改めて強まった。4日の東京市場での取引は一時、1ドル=144円台後半をつけ、3日につけた147円台前半から2円超の円高が進んでいる。アメリカの製造業の景況感に関する指標が市場予想を下回る弱さだったことが要因だ。金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しが深まり、利上げを見据える日本銀行との対比が円買いにつながっている。今後は、米国で6日に発表される雇用統計などの注目経済指標の結果で、さらに円高圧力が強まる可能性がある。
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ドル円相場は一時、144円台 製造業の景況感悪化が影響
ドル円相場(USD/JPY)は4日午前の東京市場で一時、144.87円をつけた。3日午前には147.20円をつける場面もあったが、2.33円の円高が進んだ形だ。ドル円相場は8月5日に141.66円の円高を記録した後、7月小売売上高などで経済の堅調さが確認された15日には149円まで円安に振れたが、その後は改めて円高圧力が強まっている。
3日から4日にかけて円高を引き起こしたのは米国経済の見通しに対する不安だ。米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した8月の製造業景況感指数は47.2となり、ロイターがまとめた事前予想の47.5を下回った。市場予想を超えられなかったのは5か月連続で、米国経済のムードの悪化が示された。
FRBの9月利下げ見通し深まる 0.5%幅の確率上昇
こうした中、金融市場ではFRBの利下げ見通しが深まった。CMEグループのデータによると、FRBによる9月17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅が0.5%になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間4日午前11時現在で41.0%。前日午前の31.0%から高まっている。米国の金利の先安観がドル円相場での円高につながったといえそうだ。
一方、ドル円相場での円高の背景には、日銀の利上げ見通しが続いていることの影響も大きい。日銀の植田和男総裁は3日の経済財政諮問会議で、日本経済が日銀の見通し通りに推移すれば「引き続き政策金利を上げ、金融緩和の度合いを調整」するとの見方を改めて提示し、日銀が利上げを進めていく可能性を示唆した。日米の長期金利差は3日終値段階で2.923%ポイントまで縮まっている。
実際、3日のFX市場では円がドルに対して買われたものの、ポンドや豪ドル、ユーロは買われなかった。これらの国・地域の中央銀行は利下げに着手したり、今後の利下げが見込まる局面に入っており、日銀が利上げを示唆している円はより買われやすい状況にあるようだ。
雇用統計など労働市場をめぐる経済指標で円高の見通しも
今後のドル円相場では米国の雇用関連指標が焦点となる。4日午前10時(日本時間4日午後11時)には7月の雇用動態調査(JOLTS)が発表されるほか、5日午前8時30分(日本時間5日午後9時30分)には週次の新規失業保険申請件数も発表される。このうち新規失業保険申請件数は、ロイターがまとめた市場予想で23.0万件となる見通し。結果が大きく上振れれば、米国経済悪化への懸念が円高を後押ししそうだ。
また6日発表の7月雇用統計も相場を大きく動かす可能性がある。7月初めから8月初めにかけて、161円台から141円台まで一気に進んだ円高は、雇用情勢への不安が利下げ観測を強めたことの影響が大きいだけに、市場の注目度は高い。
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