ECB利下げ後にユーロ高 追加見通しは示さず 物価予想は引き上げ
ECBが4年9か月ぶりの利下げを決定。ただし物価上昇率の見通しを引き上げ。ラガルド総裁は追加利下げを明言せず、ユーロが買い戻された。
欧州中央銀行(ECB)が6日に4年9か月ぶりの利下げを決めた。物価上昇率がピークの4分の1程度まで下がったことを踏まえ、政策金利を0.25%引き下げる。ただ、ECBが示した経済見通しでは2024年と2025年の物価上昇率の予想が引き上げられた。クリスティーヌ・ラガルド総裁は記者会見で、今後の利下げのタイミングは経済指標次第だとし、利下げ局面に入ったわけではないと強調している。こうしたECBの決定を受けて、FX市場では利下げ発表後にユーロを買い戻す動きが強まった。一方、金融市場では依然として年内1-2回の利下げが見込まれており、引き続きユーロ圏の物価動向に注目が集まりそうだ。
ECBが4年9か月ぶりの利下げ決定 物価動向に自信
ECBの決定で政策金利の下限にあたる中銀預金金利は12日から、現状の4.00%から3.75%に引き下げられる。その他2つの政策金利についても0.25%下げられる。ECBが利下げを行うのは2019年9月以来。この際は中銀預金金利がマイナス0.4%からマイナス0.5%に下げられた。今回の0.25%利下げは市場予想通りだった。
ECBが利下げを決めたのは物価上昇率が目標とする2%に向かう道筋にあると判断したためだ。ユーロ圏の消費者物価指数(CPI)の総合指数の伸び率は2022年10月には前年同月比10.6%に達したが、2024年5月には2.6%まで低下している。ECBは2022年7月から2023年9月にかけて政策金利を4.5%ポイント引き上げており、経済活動を冷やす効果が物価上昇圧力を弱めたとみられる。ラガルド氏は記者会見で「物価動向の見通しは目覚ましく改善した」と述べた。
ただ、ユーロ圏における物価上昇率の低下がスムーズに進むわけではなさそうだ。ECBが6日に示した経済見通しでは、2024年のCPI総合指数の伸び率は前年比2.5%とされ、3月時点に予想していた2.3%から引き上げられた。2025年の伸び率も3月時点より0.2%ポイント高い、2.2%と見込まれている。
ECBは追加利下げの見通しを保証せず ユーロ高に
ラガルド氏は記者会見で、利下げ局面に入ったかとの質問に対して、その可能性は極めて高いとしながらも「確かさを保証することはできない」と強調。利下げのペースや利下げ完了までにかかる時間は「極めて不確かだ」とした。ユーロ圏の物価上昇が沈静化していると確信するには、今後数か月の間の経済指標発表ごとにデータの分析を進めることが必要だとしている。ラガルド氏は今回の利下げ後も政策金利は引き続き引き締め的な水準だとして、推移を見極める方針だ。
こうしたECBの決定を受けて、FX市場ではユーロを買い戻す動きが出た。ユーロドル(EUR/USD)相場の6日のニューヨーク市場での終値は前日比0.18%のユーロ高水準だった。これに対してユーロ円相場(EUR/JPY)の終値は1ユーロ=169.44円で、前日比0.21円の円高ユーロ安水準。ドル円相場(USD/JPY)で円高が進んだことの影響を受けた。ユーロ円相場は7日は169円台後半で取引されている。
一方、金融市場ではECBが今後も利下げを進めるとの見通しは維持されている。LSEGによると、12月理事会後の中銀預金金利の水準は日本時間7日正午の段階で3.312%と見積もられており、今回の利下げを除けば、0.25%幅の利下げがあと1-2回あると見込まれている形だ。ユーロ圏の物価上昇の動向がこうした見立てを裏付けていけば、ユーロには下落圧力がかかっていくとみられる。
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