ユーロ圏物価は上昇減速予想 ユーロ高は不変か ECB利下げ観測後退
ユーロ圏の2月CPIは上昇率が2.5%まで下がる予想。ただ、ECBは利下げに慎重で、足元の円安ユーロ高への影響は限定的か。
欧州連合(EU)統計局が3月1日に発表する2月の消費者物価指数(CPI)は物価上昇の大幅減速が予想されている。総合指数の伸び率は前年同月比2.5%が見込まれ、欧州中央銀行(ECB)の思惑通りの結果になりそうだ。ただ、ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は利下げへの慎重姿勢を示しており、金融市場が予想するECBの利下げ時期は6月まで後退。一方、日本銀行の金融政策をめぐっては大規模金融緩和の継続観測が浸透しており、ユーロ圏の物価上昇減速が確認されても、足元で進む円安ユーロ高の流れに変化がでない可能性がある。
ユーロ圏の2月CPIは総合指数の伸び率が2.5%の予想
EU統計局は日本時間の1日午後7時に2月のCPIを発表する。ロイターがまとめた事前予想によると、総合指数の伸び率は2.5%となり、1月の2.8%から大きく低下する見込み。また、食品、エネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数の伸び率は2.9%となり、やはり1月(3.3%)からの低下が予想されている。予想通りの伸び率になれば、総合指数は11月の2.4%以来3か月ぶりの低さ。コア指数は2022年2月(2.7%)以来2年ぶりの低さとなる。
こうしたユーロ圏の物価上昇減速は2%の物価上昇率を目標とするECBの思惑に沿った結果だ。ラガルド氏は15日、ブリュッセルで開かれた欧州議会での公聴会で、現在の政策金利を十分に長い期間にわたって維持した場合、「物価上昇率が適切な時期に2%へと戻っていくことの確度が高まる」と説明した。ECBは2023年9月まで利上げを進めた後、1月の理事会まで3会合連続で政策金利を据え置いている。
ただ、ラガルド氏は利下げの着手には慎重さもみせている。15日の公聴会では物価上昇の減速が今後も続いていくとの見通しを示しつつ、「物価上昇率が2%で持続されることに自信を持つ必要がある」とも付け加えた。
ECBの利下げ時期は6月まで後退
このため、金融市場で見込まれるECBの利下げ時期は6月まで後退している。LSEGのデータによると、6月理事会後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間28日午前11時30分段階で約78%。一方、4月理事会までの利下げ確率は約32%となっている。1月末には4月利下げ確率が80%を超えていただけにECBは容易には利下げに動かないとの見方が浸透した形だ。
こうした中、ユーロ円相場(EUR/JPY)ではユーロ高が進行。27日のニューヨーク市場の終値は1ユーロ=163.21円で、2日連続で11月24日以来約3か月ぶりとなる163円台を記録した。
日銀の金融緩和継続姿勢がユーロ高のきっかけに
ユーロ高の背景には、日銀の大規模金融緩和維持姿勢もある。ユーロ円相場は2月初めまでは160円前後で推移していたが、内田真一副総裁が講演でマイナス金利政策を解除したとしても緩和的な金融環境が続くことを強調した8日には1.31円の円安ユーロ高が進行。ユーロ高の流れを強めるきっかけとなった。
ユーロ圏の2月のCPIが大幅に減速したとしても予想の範囲内であればECBの利下げ観測拡大にはつながらない可能性がある。主要中央銀行の金融政策をめぐっては、米連邦準備制度理事会(FRB)も利下げに慎重だとの見方が強まっており、日銀の大規模金融緩和の継続が見込まれる中で円安の流れが根強くなることも想定されそうだ。
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