ユーロ安圧力高まる ECB追加利下げ見通し拡大 物価上昇減速
ユーロ圏では物価上昇が減速。ECBは10月と12月の理事会の両方で利下げするとみられている。ユーロ安圧力が強まっていくことが想定される。
ユーロに下落圧力がかかっている。ユーロ円相場では1日のニューヨーク市場で1円以上のユーロ安が進行。欧州連合(EU)統計局が発表した9月の消費者物価指数(CPI)で物価上昇の減速が確認され、欧州中央銀行(ECB)が10月の理事会で3度目の利下げに踏み切るとの見方が強まったためだ。ユーロは対ドルでも下落しており、ECBの利下げ見通しの強まりを裏付けている。一方、日本銀行の金融政策をめぐっては、追加利上げ観測の後退が円高圧力を緩める方向に作用しているが、今後もECBの利下げが進んでいけばユーロ安圧力がさらに強まる可能性がある。
ユーロ円相場では1日に1円超のユーロ安が進行
ユーロ円相場(EUR/JPY)は1日のニューヨーク市場の終値が1ユーロ=158.88円となり、前日比1.04円のユーロ安となった。ユーロ円相場は自民党総裁選挙で高市早苗氏の勝利への期待が強まった9月27日には163.48円をつける場面もあったが、4円以上のユーロ安が進んだ形となっている。
ユーロ圏の9月CPIは伸び率が減速 総合指数は1.8%に
ユーロ安の背景になったのは1日に発表された9月CPIだ。総合指数の伸び率は前年同月比1.8%となり、2021年6月(1.9%)以来3年3か月ぶりにECBが目標としている2%を割り込む水準となった。食品、エネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数の伸び率は2.7%で、8月の2.8%から物価上昇が減速。ロイターがまとめた事前予想(2.8%)も下回った。いずれも物価上昇が鎮静化していくとの見通しを強める内容だ。
またECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は9月30日にベルギーの欧州議会での公聴会で、ユーロ圏の物価情勢について目標を適切なタイミングで実現できる自信が深まっていると言及。「このことを10月の理事会で考慮する」と述べた。
ECBは10月と12月の理事会で連続利下げの見通し
こうした中、金融市場ではECBが10月17日の理事会で0.25%幅の利下げに踏み切るとの見通しが強まっている。LSEGのデータによると、ECBの利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間2日午後4時の段階で約96%だ。ECBは6月の理事会に続き、9月12日の理事会で追加利下げを決定。政策金利の下限にあたる中銀預金金利を3.50%としたばかりだが、3度目の利下げがほぼ確実視されている形だ。
また、LSEGによると、金融市場ではECBの12月理事会後の中銀預金金利は2.9%になるとも見込まれている。10月理事会での0.25%幅に加え、12月理事会でも0.25%幅か0.50%幅の利下げが行われる見通しだといえる。
ユーロは対ドルでも下落傾向 成長鈍化などの懸念も
こうしたユーロ圏の金利の先安観はユーロの対ドル相場(EUR/USD)の値動きにも表れている。LSEGによると、ユーロドル相場では9月27日から10月1日まで3営業日連続でユーロ安が進行。直近の4週間の値動きは、ポンドや豪ドルと比べても弱さが目立っている。
一方、足元のFX市場では、日銀の追加利上げが遠のいたとの見方が円安圧力として働いている側面がある。植田和男総裁が9月20日の金融政策決定会合後の記者会見で、追加利上げを判断する「時間的な余裕がある」との見通しを示したためだ。ドル円相場(USD/JPY)は10月2日は1ドル=143円台後半で推移しており、自民党総裁選での高市氏の敗北をきっかけとして141円台まで進んだ円高水準からは円安に戻している。
ただしユーロ圏経済は成長鈍化や雇用の悪化という懸念も抱えており、今後もECBの利下げ観測が強まる可能性がある。こうした経済の見通しの悪さは、ユーロ円相場ではユーロ安圧力の強まりとして現れることが想定されそうだ。
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