米国株の見通しに明るさ　S&P500が6連騰　財務長官指名を歓迎

アメリカの株式市場の見通しが明るくなった。S&P500種株価指数は25日の終値で6営業日続伸を記録。11日につけた最高値まであと0.2％程度まで接近している。長期金利（10年物米国債利回り）は約3週間ぶりの低さとなっており、中小型株はS&P500をしのぐ勢いだ。株式市場の追い風となったのは、ドナルド・トランプ次期大統領が22日に発表した、著名投資家のスコット・ベッセント氏を財務長官に指名する人事。ベッセント氏は財政規律に厳格な主張が報じられており、金融市場の安心材料となった。ただ、ベッセント氏は高関税も支持しており、米中の経済対立の深まりも予感させる。こうした中で半導体大手NVIDIA（エヌビディア）の株価は25日に大きく値下がりしており、S&P500の今後の見通しに微妙な影を落とす可能性もありそうだ。

アメリカのS&P500は6連騰　長期金利は大統領選挙当日以来の低さに

S&P500（SPX）の25日の終値は前週末比0.30％高の5987.37。18日から6営業日連続での値上がりで、この間の上昇率は1.99％高となった。11日につけた最高値（6001.35）まではあと0.23％の上昇で到達する水準だ。また、ブルームバーグによると、長期金利の25日のニューヨーク市場の終値は4.275％で、大統領選挙当日の4.273％以来の低さとなり、投資家心理を明るくしたようだ。

長期金利の低下は中小型株の追い風にもなった。中小型株の代表的な指数であるラッセル2000（RUT）の25日の終値は前日比1.47％高の2442.03で、S&P500と同様に6営業日続伸。この間の上昇率は6.00％高となっており、S&P500を大きく上回っている。

財務長官指名のベッセント氏を歓迎　財政規律重視がS&P500の見通しに安心感

株式市場の見通しを明るくしたのはトランプ氏が22日の取引時間終了後に公表した財務長官人事だ。ベッセント氏はジョージ・ソロス氏の投資ファンドで手腕を発揮した著名投資家として知られる。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）によると、「2028年までに財政赤字をGDPの3％まで引き下げる」ことをトランプ氏に提言。「規制緩和を通じた成長率3％の達成」「日量300万バレルの相当の原油などの増産」とあわせて、「3-3-3」と称する政策の枠組みを主張しているという。

大統領選挙後の米国の長期金利上昇の背景は、トランプ氏が目指す減税路線や高関税政策が物価上昇圧力や財政悪化につながりかねないとの見通しがあった。財政赤字にも目を配るベッセント氏の起用は投資家にとっては安心材料だといえる。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数（VIX）の25日の終値は14.6で、14日（14.31）以来の低さとなった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数字が大きいほどS&P500の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを意味する。

エヌビディアやテスラは大きく下落　トランプ氏は中国への追加関税を表明

ただ、ベッセント氏の存在はトランプ氏の政権運営に伴う見通し不透明感を強める可能性もありそうだ。WSJによると、ベッセント氏はトランプ氏の高関税政策を交渉のツールとして支持する立場で、中国の通商政策を批判している。財務長官就任が米国と中国の通商対立激化の確度を高めることも否めない。トランプ氏は日本時間26日午前8時35分、自身のSNSである「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、中国からの輸入品に10％の追加関税を課すと表明した。

25日の株式市場では、半導体大手エヌビディアの株価(NVDA)が前週末比4.18％安、電気自動車大手テスラ(TSLA)も3.96％安となった。エヌビディアは米政府の中国向け輸出規制の影響への懸念がくすぶっており、テスラは中国に工場を持ち、販売面でも中国市場の重要度が高い。

一方、25日はテスラと同様に生産や販売で中国との関連が深いアップル（AAPL）が1.31％高となっているほか、半導体大手のアドバンスド・マイクロ・デバイセズ（AMD）などの半導体株は値上がりしている。このため、株式市場で米中対立の懸念だけが材料視されているとはいえなさそうだが、S&P500や個別銘柄の今後の見通しはトランプ政権の動向で上下に揺さぶられることになりそうだ。