米国株に追い風吹かず エヌビディア決算不発 S&P500見通しに重荷
エヌビディアの8-10月期決算は急ピッチでの成長期待を後退させた。割高感や長期金利の上昇という悪材料もあり、S&P500の見通しには重荷となりそうだ。
アメリカの株式市場に追い風は吹かなかった。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が20日の取引時間終了に発表した2024年8-10月期決算は市場予想を超えたものの、ハイペースでの成長の継続には不安を感じさせる内容。半導体各社や大手ハイテク企業の株価の時間外取引での浮上にはつながらなかった。同時に米国の金融市場では株価の割高感の高まりや長期金利(10年物米国債利回り)の上昇といった悪材料も目立ち、S&P500の今後の見通しは晴れない。人工知能(AI)ブームを牽引してきたエヌビディアの成長鈍化は、米国の株式市場のムードを暗くする可能性がある。
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エヌビディアの急ピッチでの成長は減速か 時間外取引で半導体株が下落
エヌビディアの8-10月期決算発表は実績と2024年11月-2025年1月期の見通しが市場予想を超えた。ただし成長率の鈍化は避けられない見通しで、業績と株価が同時に急ピッチで上がっていくシナリオへの期待は薄れている。エヌビディアの株価(NVDA)は時間外取引で、20日終値から2%程度安い水準で取引された。3か月前の5-7月期決算時のような急落は免れたものの、株価上昇への期待は高まらなかった。
こうした中、20日の時間外取引ではエヌビディアと同業のクアルコム(QCOM)やブロードコム(AVGO)といった半導体株がそろって下落した。半導体株は20日までの取引でエヌビディア決算への警戒に加え、台湾積体電路製造(TSMC、TSM)やアプライド・マテリアルズ(AMAT)の業績が不安材料となって下落傾向が続いていた。
大手ハイテク株も浮上せず 各社決算発表後の株価は明暗分かれる
また、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるエヌビディアを含む大手ハイテク企業の株価も20日の時間外取引ではほぼそろって値下がりしている。エヌビディア以外の6社は10月下旬に相次いで7-9月期決算を発表。それぞれの決算発表日を起点としてた20日までの株価の騰落率は、マイクロソフト(MSFT)とメタ・プラットフォームズ(META)が4%程度のマイナス。アップル(AAPL)も1%台の小幅な値上がりにとどまっている。大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利が追い風になったテスラ(TSLA)の60.09%高や、アマゾン・コム(AMZN)の8.84%高などと明暗が分かれた。
S&P500の水準には割高感も 長期金利上昇も重荷か
同時に米国の株式市場には割高感への懸念もありそうだ。ブルームバーグによると、S&P500(SPX)の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は、S&P500が最高値(6001.35)をつけた11日に23.90倍となり、2022年2月22日(24.00倍)以来の高さとなった。20日時点では22.51倍まで下がっているが、今後のS&P500の上昇にとっては重荷といえる水準だ。
さらに米国株には金利高という逆風も吹く。ブルームバーグによると、米国の長期金利は20日のニューヨーク債券市場の終値で4.412%となり、12日以降、4.4%前後での推移が続いている。トランプ氏の政権運営が物価上昇圧力として働く見通しに加え、連邦政府の財政悪化を招くことへの警戒感が影響しているともみられている。
AIブームの見通しへの懸念くすぶる 期待が失望にかわるリスクも
エヌビディアはAI開発に不可欠な高性能半導体で圧倒的な強みを持つ。ブルームバーグによると、時価総額は20日時点でマイクロソフトやアップルを超える3.57兆ドルに達しており、米国の株式市場を牽引する存在だ。エヌビディアのジェイスン・ファンCEOはAIが新たな産業を創出すると強調し、長期的な成長に自信を示している。ただ、一般消費者からのAIに対する需要が高まり、巨額の投資を続ける大手ハイテク企業が利益を伸ばすことができるかには不透明感もつきまとう。S&P500の今後の見通しにとっては、AIブームへの期待が失望に変わるリスクがくすぶり続けていきそうだ。
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