米国株、最高値再接近 S&P500週次反発 エヌビディアの見通しに影
S&P500は週次1.68%高で、最高値更新が近づいてきた。ただしFRBの年内利下げ確率は50%近くまで下がっており、今後の重荷になりえる。
アメリカの株式市場が急落を回避した。S&P500種株価指数の22日の終値は1週間前比で1.68%の上昇。2週ぶりに反発し、改めて最高値更新をうかがう水準まで回復してきた。ただし20日に決算を発表したエヌビディアの株価は週次でほぼ横ばいにとどまり、人工知能(AI)ブーム継続に対する投資家の期待の陰りも感じられる。また大手ハイテク株の値動きも明暗が分かれており、テスラを除けば株価上昇の勢いは乏しい。さらに金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の年内追加利下げが危ぶまれ始めており、S&P500の今後の見通しに影を落としている。
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アメリカのS&P500は2週ぶり反発 5営業日続伸で最高値接近
S&P500(SPX)の22日の終値は5969.34。エヌビディア決算への警戒感があった前週(11-15日)の2.08%安から反発した。22日の終値は前日比では0.35%高で、5営業日続伸となっている。ドナルド・トランプ次期政権への期待を背景に11日に記録した最高値(6001.35)までは、あと0.54%の上昇で到達する水準だ。
米国の株式市場では中小型株も活気づいている。中小型株の代表的な株価指数であるラッセル2000(RUT)は22日までの週次で4.46%上昇。S&P500をしのぐ勢いをみせ、見通しが明るくなった。
エヌビディアの株価には失速感 大手ハイテク株はテスラにのみ勢い
ただし中小型株の活況の裏側ではS&P500の上昇を引っ張ってきた主役の変調がある。エヌビディアが20日に発表した2024年8-10月期決算は実績と今四半期の予想がいずれも市場予想を超えたが、驚異的な成長ペースが鈍化する見通しも示された。翌21日の株価(NVDA)の終値は前日の時間外取引での下落を跳ね返して前日比0.53%高としたものの、22日は3.22%安と大幅な下落。週次では0.02%安となり、失速感も漂う。
またエヌビディアを含む大手ハイテク7社の株価も明暗が分かれている。テスラの株価(TSLA)は週次9.93%高と好調で、イーロン・マスクCEOとトランプ氏との蜜月関係が規制緩和を通じて業績の追い風になるとの期待が続いている。一方、アルファベットの株価(GOOGL)は週次で4.48%安。米司法省が20日にグーグルの検索市場独占を問題視し、ブラウザ「クローム」の売却などを求めたことが悪材料視された。2023年末比での上昇率でみても、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット、アップル(AAPL)の3社は上昇率が20%を割っており、S&P500の25.15%を下回っている。
FRBの年内追加利下げ見通しは後退 S&P500の重荷にも
こうした中でS&P500のさらなる重荷となりえるのがFRBの利下げ見通しの後退だ。CMEグループによると、12月17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間23日朝の段階で53%。13日段階での約81%から大きく低下が進んでおり、「五分五分」といえる状況が近づいてきた。ジェローム・パウエル議長が14日のテキサス州での講演で利下げを急がない姿勢を強調したことがきっかけだ。ブルームバーグによると、長期金利(10年物米国債利回り)の22日の終値は4.414%で、12日以降の4.4%前後での高止まりが続いている。
FRBの利下げ見通しがさらに後退し、長期金利の上昇が進んだ場合には、株式市場では悪材料として意識されそうだ。金利水準の高さは株式の投資先としての魅力を相対的に低くすることで、株価の重荷になりえる。
S&P500の今後の見通しはFOMC議事要旨やPCE物価指数が左右か
このためS&P500の今後の見通しは26日に発表される11月FOMCの議事要旨や、27日発表の10月の個人消費支出(PCE)物価指数に左右される可能性がある。議事要旨で追加利下げへの慎重姿勢が確認された場合は、利下げ期待のさらなる後退も予想される。また、10月PCE物価指数の伸び率をめぐっては、パウエル氏が14日の講演で、総合指数と食品とエネルギーを除いたコア指数でともに加速する見通しを示しており、やはり投資家心理を暗くすることも考えられそうだ。
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