原油価格、1年10か月ぶり安値 WTIが65ドル台 経済混乱見通し
WTIは5日に一時、1バレル=65ドル台。トランプ大統領の高関税政策をめぐる混乱が要因で、今後も先行き不透明感が原油価格を下押ししそうだ。

原油価格の下落が続いている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)は5日のニューヨーク市場で4営業日続落。一時、1バレル=65ドル台をつけ、1年10か月ぶりの安値となった。アメリカのドナルド・トランプ大統領の高関税政策が原油需要を停滞させる可能性が意識されているうえ、OPECプラスの段階的増産計画が原油供給を増やす見通しであることも背景となっている。トランプ氏の高関税政策は今後、トーンが弱まる可能性もあるが、見通しの不透明感は原油価格の下押し圧力として働いていきそうだ。
WTIは一時、65.22ドルまで値下がり 2023年5月以来の安値
WTI(翌月渡し、WTI原油)の5日のニューヨーク市場の終値は前日比2.86%安の1バレル=66.31ドル。ブルームバーグによると、取引時間中には65.22ドルを付け、2023年5月4日(63.64ドル)以来の安値となった。WTIは2月28日から4営業日連続で値下がりしており、この間、5.74%安となっている。

トランプ氏の高関税は原油需要を抑制か 米国の原油在庫は改めて増加
原油価格下落の要因はトランプ氏の高関税政策だ。トランプ氏は4日にメキシコとカナダからの輸入品に対する25%関税を発動。中国製品に対する追加関税を20%に引き上げる措置も決めた。5日にはメキシコとカナダからの自動車輸入に関しては高関税を1か月猶予することも公表されたが、トランプ氏の高関税が経済活動を混乱させ、原油需要の低下につながるとの筋書きが意識されている。
原油需要の減少見通しは5日に発表された米国の原油在庫量でも裏付けられた。米エネルギー情報局は5日、2月28日時点の原油在庫(戦略備蓄除く)が1週間前から361.4万バレル増えたと発表。ブルームバーグがまとめた市場予想の80万バレル増を上回る在庫の積み増しとなった。前回発表分では原油在庫が233.2万バレル減少していたが、改めて在庫増加に転じた形だ。

OPECプラスは段階的増産の4月開始を確認 リスク回避姿勢も原油価格を下押しか
原油市場をめぐっては、供給量の増加も値下がり要因として位置付けられている。サウジアラビアやロシアなどで作る産油国グループのOPECプラスは3日、参加8か国が4月からの実施を計画している段階的増産を予定通りに行うことを確認した。段階的増産はこれまで3度延期されており、4度目の延期の可能性も報じられていたが、OPECプラスの増産の意思は変わっていないようだ。
一方、トランプ氏の政権運営は予想が難しく、今後、高関税政策が緩和される可能性もある。事業家としてのキャリアを持つトランプ氏は経済活動の停滞を容認できず、高関税政策も通商関係を米国有利に動かすための手段であるとの見方も根強い。
ただ、トランプ氏を震源地とする世界経済の混乱は容易には治まらないとみられ、投資家のリスク回避姿勢を高めることも考えられる。またトランプ氏自身、原油価格の引き下げで物価上昇の抑制を目指す立場を強調しており、トランプ氏の政権運営は今後も原油価格にとって下押し圧力として働く可能性がありそうだ。
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