原油価格急落 WTI低迷66ドル台 トランプ効果で下落見通し続く
WTIは13日に1.67%安。米国とEUの通商関係での対立が意識された。ロシアとウクライナの停戦の可能性も原油価格を下押ししている。

原油価格の低迷が続いている。原油先物市場の指標価格であるWTI(翌月渡し)の13日の終値は前日比1.67%安の急落。アメリカのドナルド・トランプ大統領が欧州連合(EU)との通商関係悪化をエスカレートさせる姿勢を示したことが悪材料となった。またトランプ氏がウクライナ支援を後退させる中、ロシアが停戦を受け入れる可能性を示唆したことも原油供給の増加を予想させる価格下落要因となっている。WTIは終値ベースでは66ドル台を維持しているものの、今後もトランプ氏を震源とする世界経済の混乱が続けば、さらに下落が進む可能性がありそうだ。
WTIは13日に1.67%安 トランプ氏就任から約2か月で16.85%の下落
WTI(翌月渡し、WTI原油)の13日のニューヨーク市場での終値は1バレル=66.55ドル。1月15日につけた直近の高値(80.04ドル)から、2か月で16.85%安となっている。トランプ氏が1月20日に大統領に就任して以降、原油価格の下落傾向が続いている形だ。

トランプ氏はEU産のワインなどへの200%関税を表明 貿易戦争懸念
WTIの13日の急落もトランプ氏の言動が背景となった。トランプ氏は13日朝に自身のSNSトゥルース・ソーシャルへの投稿で、EUが260億ユーロ相当の米国からの輸入品に関税を課す計画を発表したことを受け、EU産のワインやシャンパンなどに200%の関税を課すと表明。「EUは世界で最も敵対的で、税金と関税を乱用している経済圏のひとつだ」と批判した。EUの課税計画は、トランプ氏が鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税を課したことへの対抗策だが、トランプ氏はさらに対立をエスカレートさせる形で応じたことになる。
13日の金融市場ではトランプ氏発の「貿易戦争」が米国経済の見通しを悪くする筋書きが意識された。株式市場ではS&P500種株価指数(SPX)が前日比1.39%安となり、2月19日の最高値(6144.15)からの下落率が10.13%安となった。直近の高値からの10%以上の下落は、株価の調整局面入りとされる基準だ。金融市場では米国の景気が後退するとの警戒感が強く、原油需要の減少につながるとの見方が続いている。
ロシアのプーチン大統領がウクライナとの停戦受け入れの可能性を示唆
トランプ氏のウクライナ情勢をめぐる対応も原油価格を下押ししている。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、米国が続けてきたウクライナへの支援について、トランプ氏は消極的な姿勢をとりつつ停戦の実現に意欲を示してきた。欧米メディアによると、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は13日の記者会見で、米国が提案した30日間の停戦案について、「考え方自体は正しい。間違いなく支持する」と述べた。
プーチン氏は同時に「現在の危機の根本的原因を取り除く必要がある」としており、ウクライナ側からの大幅な譲歩を想定しているもよう。このため今後の見通しは定かではないが、米国が仲介する形でロシアとウクライナの停戦が実現すれば、ロシアに対する経済制裁の緩和が原油市場での供給増加につながるとの見通しも成り立つ。
こうした中、国際エネルギー機関(IEA)は13日に公表した3月月報の中で、2025年の原油市場では供給が需要を日量60万バレル上回るとの見通しを示した。サウジアラビアやロシアなどで作るOPECプラスが4月から段階的な増産を進める計画であることや、米国などOPECプラス非加盟国の増産も要因として挙げている。
WTIの値動きには粘り トランプ氏の動向次第でさらなる下落の可能性も
一方、原油価格の値動きには粘りも感じられる。WTIは5日の取引時間中には一時、1バレル=65.22ドルをつけ、2023年5月4日(63.64ドル)以来1年10か月ぶりの安値をつけつつも、終値では66ドル台を維持してきた。米エネルギー情報局(EIA)が12日に発表した7日段階での原油在庫量(戦略備蓄除く)は1週間前比で144.8万バレル増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の200万バレル増加を下回った。想定を下回る在庫の上積みは、原油需要の根強さの現れと受け止められ、WTIの12日の終値は前日比2.16%高となっていた。

ただしトランプ氏が高関税政策をめぐる貿易相手国との対立を鎮静化させなければ、米国の景気後退不安は治まらないとみられる。トランプ氏の今後の言動次第で、WTIが2024年9月10日につけた終値ベースでの直近の安値(65.75ドル)を下回る可能性も考えられそうだ。
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