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米国株、景気後退不安は消えず S&P500小反発 エヌビディア続伸

S&P500は12日に3営業日ぶりの反発。エヌビディアは1か月半ぶりの上昇率となった。ただ、トランプ氏の高関税政策をめぐる懸念は消えない。

米国株、景気後退不安は消えず S&P500小反発 エヌビディア続伸 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場が不安を拭い切れずにいる。S&P500種株価指数の12日の終値は前日比0.49%高で、3営業日ぶりの反発。朝方に発表された2月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を下回り、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの可能性を維持する結果だったことが好材料となった。半導体大手NIVIDIA(エヌビディア)の株価も大きく続伸するなど、割安感も意識され始めているようだ。ただしドナルド・トランプ大統領の高関税政策をめぐる混乱は鎮静化しておらず、景気後退への不安は投資家心理を暗くしている。13日に発表される2月の卸売物価指数(PPI)が物価上昇懸念を改めて強める可能性もあり、S&P500の今後の見通しをめぐっては、引き続き下押し圧力の強さが意識されそうだ。

アメリカのS&P500は3営業日ぶり反発 最高値からは8.87%安に

S&P500(SPX)の12日の終値は5599.30。2月19日の最高値(6144.15)からの下落率は8.87%安となった。ブルームバーグによると、S&P500は11日の取引時間中には5528.41をつけ、最高値からの下落率が10.02%安となる場面もあったが、下落が小休止した形だ。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

2月CPIは物価上昇率が市場予想を下回る FRBの利下げの環境を整える結果

S&P500の12日の反発の要因は2月CPIの結果だ。総合指数の伸び率は前年同月比2.8%となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の2.9%を下回る結果。また、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は3.1%となり、やはり市場予想(3.2%)よりも弱い結果となった。物価上昇の落ち着きが事前の見通しよりも進んだことは、景気後退が現実になった場合、FRBが物価上昇再燃を心配せずに利下げを進めることができる環境を整える株式市場にとっての好材料といえる。

アメリカの消費者物価指数の伸び率の推移のグラフ

エヌビディアの株価は6.42%高 1月下旬以来の高い伸び率で見通しに光

また株式市場での人工知能(AI)ブームを象徴する銘柄であるエヌビディアの株価(NVDA)の12日の終値は前日比6.42%高の115.74ドルで、1月28日(8.93%高)以来の上昇率。前日の1.66%高に続く値上がりとなった。エヌビディアの株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は10日段階で24倍程度となって、1月6日につけた最高値(149.43ドル)時点の38倍程度から大きく低下していただけに、反発見通しが強まったといえる。

エヌビディアの株価と予想PERの推移のグラフ

エヌビディア以外の半導体株でも12日はアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)が前日比4.16%高と続伸。ブロードコム(AVGO)もやはり続伸となる2.18%高となった。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価は1.09%高で、3営業日ぶりの反発となっている。AIブームの見通しをめぐる不安も後退した可能性がある。

エヌビディア、ブロードコム、アーム・ホールディングスなどの株価の推移のグラフ

さらに12日は大手ハイテク株の値上がりも目立った。電気自動車(EV)大手テスラの株価(TSLA)は12日に前日比7.59%高となり、前日(3.79%高)に続く大幅高。SNS大手のメタ・プラットフォームズ(META)も2.29%高となり、やはり続伸している。

エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、アルファベット、テスラ、アップル、マイクロソフトの株価の推移のグラフ

トランプ関税による景気後退見通しへの不安は継続 EUは対抗関税を発表

ただしトランプ氏の高関税政策をめぐる混乱が米国景気を後退させるとの見通しはくすぶり続けている。欧州連合(EU)は12日、トランプ氏が発動した鉄鋼とアルミニウム輸入に対する25%関税への対抗策として、260億ユーロ相当の米国製品に関税を課す計画を発表。4月1日から中旬にかけて発動するとした。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は発表文の中で、トランプ氏の関税発動を「残念なことだ」と非難しつつ、「EUは消費者と企業を守るために行動せねばならない」と対抗関税の正当性を強調した。EUはトランプ政権と協議する用意があるとしているが、米国とEUの通商関係も悪化したといえる動きだ。

こうした中、S&P500の反発にも関わらず投資家の不安は治まっていない。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の12日の終値は24.23。10日の27.86から2日連続で低下したとはいえ、依然高水準だ。

VIX指数とS&P500の推移のグラフ

2月PPIがS&P500の見通しに影響も 物価上昇懸念再燃の可能性

S&P500の今後の見通しは、13日午前8時30分(日本時間13日午後9時30分)に発表される2月PPIでも揺れる可能性がある。1か月前は、1月CPIが物価上昇懸念を高めた後に発表された1月PPIが物価上昇の落ち着きを示唆する内容となり、株式市場で投資家の安心感につながった。2月PPIのデータの中で、物価動向の指標としてFRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数と関連が深い、医療関連や航空関連の卸売物価が上昇するなどしていれば、S&P500が下落する展開も想定されそうだ。


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