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米国株に反発期待も S&P500は4週続落 エヌビディアは底打ちか

S&P500は週次で2.27%安。一方、エヌビディアには反発の兆しもあり、見通しに光も差している。ただ米国経済への不安は依然として重荷だ。

米国株に反発期待も S&P500は4週続落 エヌビディアは底打ちか 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場に反発への期待が出てきた。S&P500種株価指数の14日の終値は1週間前比で2.27%安の5638.94で、7か月ぶりの4週続落。一方、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価には底打ちの兆しがみられるなど、明るい動きも出ている。S&P500の割高感は薄れてきており、見通しへの過度な悲観は後退したもようだ。ただしドナルド・トランプ大統領の高関税政策による混乱が治まったわけではなく、米国の景気後退懸念も消えていない。週明け17日以降は2月小売売上高の発表や連邦公開市場委員会(FOMC)も控えており、個人消費や物価上昇への不安が高まれば、S&P500の今後の見通しが改めて暗くなる可能性もありそうだ。

アメリカのS&P500は14日に前日比2.13%高 4週続落も来週の反発に期待

S&P500(SPX)の14日の終値は前日比では2.13%高で、大統領選挙翌日にあたる2024年11月6日(2.53%)以来の高い伸びだった。S&P500は3月13日終値(5521.52)では、2月19日の最高値(6144.15)からの下落率が10.13%安となり、「調整局面」入りの基準となる10%安を割り込んだが、大きく反発した形だ。4週続落は、雇用統計が円キャリートレードの巻き戻しを引き起こすなどした2024年7月中旬から8月上旬にかけて以来の悪い記録だが、反発への期待をもたせる値動きだ。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

エヌビディアは4週ぶりに上昇 急落の3分の1を取り戻す

株式市場でのAIブームを象徴する銘柄であるエヌビディアの株価(NVDA)にも底打ちの期待が出てきた。14日の終値は週次で7.97%高の121.67ドルで、4週ぶりの反発。10日に106.98ドルをつけた段階では、1月6日の最高値(149.43ドル)から28.41%もの下落となっていたが、足元ではこれまでの下落幅の3分の1強を取り戻した形だ。この結果、最高値からの下落率は18.58%安まで改善しており、見通しに光が差してきた。

エヌビディアなど半導体株の値動きのグラフ

S&P500の反発が期待される背景には割高感の和らぎがある。ブルームバーグによると、S&P500の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は14日段階で21.0倍。2020年以降の平均値(20.7倍)の水準まで下がっている。S&P500が最高値から8.22%安となる中、今後12か月の1株当たり利益に関する予想は4%超上がっており、S&P500が反発するとの期待を裏付けているといえそうだ。

S&P500と予想株価収益率(PER)の推移のグラフ

アップルなど大手ハイテク株の値動きは冴えず 景気後退への不安継続

ただしエヌビディア以外の大手ハイテク株の値動きには不安も根強い。アップル(AAPL)の株価は14日までの週次で10.70%安。電気自動車(EV)大手テスラの株価(TSLA)も週次4.83%安で、8週続落だ。このほかアルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(META)、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン・コム(AMZN)も週次で下落しており、エヌビディアとは異なり、期待が回復しているとは言い難い。

エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、アルファベット、アップル、マイクロソフト、テスラの株価の推移のグラフ

投資家の期待が完全には戻ってこない背景には、米国経済への不安がある。トランプ氏は12日に鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する25%関税を発動させると同時に、欧州連合(EU)が発表した260億ユーロ相当の米国製品に対抗関税をかける計画に猛反発。13日にはEU産のワインやシャンパンなどに200%の関税をかけると言及し、対立をエスカレートさせている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は14日の終値で21.77となっており、10営業日連続で20を超える高水準となった。

S&P500とVIXの推移のグラフ

2月小売売上高やFRBの追加利下げ見通しもS&P500を下押しする可能性

また米国経済をめぐっては、物価上昇圧力再燃への懸念も消えていない。13日発表の2月の卸売物価指数(PPI)では、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する個人消費支出(PCE)物価指数との関連が深い医療関連の項目が前月比でプラスに転じた。前日の12日に発表された2月の消費者物価指数(CPI)は物価上昇圧力の和らぎを示したが、トランプ氏の高関税の物価への影響はこれから広がっていくとみられることもあり、物価上昇が加速するとの見通しも成り立つ状況だ。

こうした中、S&P500の今後の見通しをめぐっては17日に発表される2月小売売上高が注目される。ブルームバーグがまとめた事前予想では、小売売上高の前月比伸び率は0.6%増となる見通し。個人消費の弱まりの現れとして悪材料視された1月の0.9%減からの回復が見込まれている形だが、2月分の結果が期待外れに終われば、S&P500への下落圧力が強まることも考えられる。

アメリカの小売売上高の伸び率の推移のグラフ

さらにFRBの追加利下げをめぐる思惑もS&P500の見通しを左右しそうだ。CMEグループのデータによると、日本時間15日午前の段階で、18、19日のFOMCでは政策金利の維持が確実視されているものの、年内2回以上の利下げ確率は83%程度あるとみられている。しかしジェローム・パウエル議長の記者会見で物価上昇圧力への懸念が示されれば、利下げへの期待が大きく縮小することも考えられ、やはりS&P500が下押しされる展開も想定されそうだ。


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