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円高再進行も 5か月ぶり146円台 米2月CPIは物価上昇減速見通し

10日のドル円相場は147円台前半。1月毎月勤労統計でも円高の流れは変わっていない。米国の2月CPIの結果次第で円高が再進行する可能性がある。

円高再進行も 5か月ぶり146円台 米2月CPIは物価上昇減速見通し 出所:ブルームバーグ

ドル円相場で円高再進行の可能性がくすぶっている。10日の東京市場は1ドル=147円前半で推移。7日につけた5か月ぶりの146円台からは円高が緩んだものの、引き続き、円高圧力は続いている。朝に発表された1月の毎月勤労統計(速報値)で基本給が高い伸びとなり、日銀の利上げ見通しが揺らがなかったことも円高圧力につながっているもようだ。一方、このところのドル円相場での円高は「ドル安」の側面も強く、今後の見通しをめぐっては、アメリカで12日に発表される2月の消費者物価指数(CPI)の重要度が増す。金融市場では物価上昇減速が予想されており、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しが強まれば、ドル円相場での円高圧力として働くことが考えられそうだ。

ドル円相場は7日に146.95円 5か月ぶり円高水準

ドル円相場(USD/JPY)は日本時間10日午前11時段階で1ドル=147円台前半で推移している。ブルームバーグによると、ドル円相場は7日のニューヨーク市場では146.95円をつけ、2024年10月4日(145.92円)以来、5か月ぶりの円高水準だった。10日の水準はやや円安に戻った形だが、ドル円相場では引き続き、円高圧力の強さが意識されている。

ドル円相場の日足チャートと主な出来事のグラフ

1月の毎月勤労統計では基本給の伸びが32年3か月ぶりの高さ

円高圧力の要因のひとつが日銀の追加利上げ観測の根強さだ。10日朝に発表された1月の毎月勤労統計では、基本給にあたる所定内給与の伸び率が前年同月比3.1%増となり、1992年10月以来、32年3か月ぶりの大きさとなった。同時に、実質賃金は1.8%減となって3か月ぶりのマイナスになっているが、要因は物価上昇率(CPIの持ち家の帰属家賃除く総合)が4.7%という2023年1月(5.1%)以来の高さだったことにある。このため1月の毎月勤労統計の結果は、日銀が利上げで物価上昇を抑え込む必要性を裏付ける結果とみることもできる。

こうした中、金融市場では日銀が9月までに追加利上げを決断するとの見方が強い。ブルームバーグによると、9月の金融政策決定会合までに利上げが行われることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間10日午前11時段階で100%を超えている。日本の長期金利は6日には1.549%を付け、2009年6月12日(1.563%)以来の高さに到達。日米の長期金利(10年物国債利回り)の差は、7日終値段階で2.786%ポイントとなり、円が買われやすい状況を作っている。

日米の長期金利差とドル円相場の推移のグラフ

アメリカ経済への不安も円高要因 トランプ氏の高関税政策で見通しが混迷 

また、ドル円相場の円高はドル安の側面も強い。ドナルド・トランプ大統領の高関税政策をめぐる混乱は米国経済の見通し不透明感を強めており、FX市場では円以外の通貨もドルに対して強くなっている。ブルームバーグによると、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)の7日のニューヨーク市場の終値は直近の4週間で4.77%のユーロ高。同様に、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)は3.89%のポンド高となった。同じ期間に3.47%高となった円の対ドル相場を上回る強さだ。一方、豪ドルは米中対立がオーストラリアと関係が深い中国経済の不安要因となっていることもあり、対ドル相場(AUD/USD)の1月末比での伸び率は0.33%の豪ドル高にとどまっている。

円、ユーロ、ポンド、豪ドルの対ドル相場の推移のグラフ

アメリカの2月CPIは物価上昇が減速する見通し 円高進行の可能性も

米国経済の混乱が材料視される中、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、米国で12日午前8時30分(日本時間12日午後10時30分)に発表される2月CPIに注目が集まる。ブルームバーグがまとめた市場予想では、総合指数の伸び率は前月比2.9%となり、前月(1月)の3.0%から物価上昇が減速する見通し。また、食品とエネルギーを除いたコア指数では3.2%となり、やはり前月(3.3%)から物価上昇が緩和するとみられている。実際の結果が物価上昇の落ち着きを示したと受け止められれば、FRBの利下げ観測の強まりを通じて、ドル円相場が円高に動く展開も想定されそうだ。

アメリカの消費者物価指数の伸び率の推移のグラフ

一方、米国経済に対する過度な悲観は落ち着く可能性もある。米国で7日に発表された2月雇用統計は非農業部門の就業者数が市場予想を下回る前月比15.1万人増にとどまるなど、冴えない結果。しかしFRBのジェローム・パウエル議長が7日の講演で「米国の労働市場は強固だ」と述べたことで、一方的な円高にはつながらなかった。米国の物価情勢に関する見通しは、2月CPIとあわせて、13日に発表される2月の卸売物価指数(PPI)でも左右されるとみられ、ドル円相場の流れがぶれる可能性も考えられる。


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