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円高再加速の可能性 米国景気拭えぬ不安 日米金融政策の見通しは?

ドル円相場は17日は148円台後半で推移。しかし米国経済の景気後退への懸念は根強く、2月小売売上高などで円高が再進行する可能性がある。

円高再加速の可能性 ドル円148円台 米国景気と日米中銀会合に注目 出所:ブルームバーグ

ドル円相場で円高が再加速する可能性がある。ドル円相場は17日の東京市場では1ドル=148円台後半で推移。一時146円台まで進んだ5か月ぶりの円高水準からは遠のいたものの、引き続き円高圧力は根強い。アメリカではドナルド・トランプ大統領が高関税政策を前進させており、物価上昇と景気後退が同時に進む米国経済にとっての悪いシナリオが意識されやすい状況だ。こうした中、17日発表の2月小売売上高で消費の弱さが感じられれば、円高が進む展開が想定される。また日本時間19日から20日未明にかけては日本銀行と米連邦準備制度理事会(FRB)が相次いで金融政策を発表。日銀の利上げへの積極姿勢やFRBの景気後退への警戒が感じられた場合には、やはりドル円相場の今後の見通しに円高圧力がかかると考えられる。

ドル円相場は148円台後半 5か月ぶりの円高からは後退

ドル円相場(USD/JPY)の14日のニューヨーク市場の終値は1ドル=148.64円。週明け17日の東京市場でも148円台後半で取引されている。ブルームバーグによると、ドル円相場は11日には146.54円をつけ、2024年10月4日(145.92円)以来の円高水準をつけていたが、円高の流れは一服している。

ドル円相場の日足チャートを主な出来事のグラフ

トランプ氏の高関税政策は前進 物価上昇と景気後退が同時に進むおそれが円高材料

ただしドル円相場での円高圧力は根強い。トランプ氏の高関税政策が、物価上昇と景気後退が同時に進む悪いシナリオを投資家に意識させているからだ。トランプ氏は12日には鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する25%関税を発動させ、欧州連合(EU)が示した対抗関税計画にもひるむ様子はない。高関税による物価上昇が現実になっていけば、消費を下押しする米国経済にとっての悪い材料といえる。

実際、米国では物価上昇と雇用の悪化が同時に進む兆しも見え隠れする。12日発表の2月の消費者物価指数(CPI)は伸び率が市場予想を下回ったものの、翌13日に発表された2月の卸売物価指数(PPI)では、個人消費支出(PCE)物価指数との関連が強い医療関連の項目が前月比でプラスに転じた。PCE物価指数はFRBが物価動向の判断基準とする重要指標だ。また、7日発表の2月雇用統計は非農業部門の就業者数の伸びが市場予想を下回るなど、冴えない結果だった

米国の雇用統計の推移のグラフ

一方、こうした中でも金融市場でのFRBの利下げ見通しが極端に拡大しているわけではない。CMEグループのデータによると、FRBの2025年末までの利下げ回数が2回以上になることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間17日午前11時の段階で84%程度。2月CPI発表前の90%程度から低下している。また、ブルームバーグによると米国の長期金利(10年物国債利回り)は14日のニューヨーク市場の終値で4.317%となっており、2月24日(4.401%)以来の高さだ。日米の長期金利の差は14日終値段階で2.803%ポイントで、10日につけた2年7か月ぶりの低水準(2.642%ポイント)からは拡大している。

日米の長期金利差とドル円相場の推移のグラフ

米国の2月小売売上高が予想より弱ければ景気後退懸念で円高再進行も

とはいえ、米国経済の先行き不透明感が強い中、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、米国の経済指標の結果で円高が進むことが想定される。米商務省が17日午前8時30分(日本時間17日午後9時30分)に発表する2月の小売売上高は、ブルームバーグがまとめた市場予想では前月比0.6%増へと回復する見通し。実際に発表される結果が予想を下回れば、米国の景気後退シナリオが円高材料となる可能性がある。

米国の小売売上高の伸び率の推移のグラフ

日銀の植田総裁は追加利上げに意欲見せるか FRBの景気見通しの判断は?

また、日銀が18、19日に開く金融政策決定会合は追加利上げへの意欲がみられるかが焦点。決定会合の結果自体は政策金利の維持が確実視されているが、声明文や植田和男総裁の記者会見の内容次第で円高が進みそうだ。労働組合の連合が14日に発表した春闘の第1回回答集計では、ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率が平均5.46%となり、2024年の第1回回答集計時(5.28%)を超える高い伸びだった。日銀にとっては追加利上げの必要性を裏付ける結果といえる。

さらにFRBは日銀と同じ18、19日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、やはり政策金利を維持する見通し。19日午後2時(日本時間20日午前3時)に発表される声明文や経済見通し、30分後に開かれるジェローム・パウエル議長の記者会見で、景気後退への警戒感がみられるかが注目点となる。パウエル氏は7日に行った講演で2月雇用統計の結果を踏まえ、「労働市場は強固だ」と述べていたが、19日の記者会見で景気に弱気な姿勢が感じられれば、円高材料となる可能性がありそうだ。


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