FRBの利下げ見通しに変化? 連銀総裁から慎重発言 ドル円は円高
4日には2人の連銀総裁が利下げへの慎重姿勢を強調。物価再燃不安は米国経済の見通しを悪くし、ドル円相場は円高ドル安に動いた。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しが揺れ動いている。4日にはミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁が物価動向によっては利下げの必要性がなくなる可能性を示唆。リッチモンド連銀のトム・バーキン総裁も利下げへの慎重論を口にした。FRBは3月の連邦公開市場委員会(FOMC)に際して、年内3回の利下げ見通しを維持したばかりだが、物価上昇再燃への不安は消えていないとみられる。ただ、ドル円相場では円高が進んだ結果、5日には2週間ぶりの1ドル=150円台で取引される場面もあり、米国経済の今後の先行き不透明感がリスク要因としてみなされているようだ。
2人の連銀総裁が利下げへの慎重な見通しに言及
カシュカリ氏は4日の米メディアとのオンラインインタビューで、利下げを始めるには「物価面でのさらなる進展が必要だ」と発言。「もしも物価上昇率の横ばいが続くなら、そもそも利下げが必要なのかという疑問がわくことになる」と指摘した。
またバーキン氏も4日のバージニア州での講演で、「物価上昇の再燃はだれも見たくない」と述べ、利下げに着手する前に経済の見通しがはっきりすることが必要だと強調した。家賃やサービス分野での物価上昇が高止まりしていることに懸念を示し、労働市場の強さを踏まえれば、時間をとって物価上昇の減速を待つだけの余裕があるとの見解を示した。
アメリカの物価上昇や経済活動は底堅さが目立つ
FRBは3月19、20日のFOMCに際して発表した経済見通しでは、年内3回の利下げの方向性を維持した。一方、その後の経済指標では物価上昇圧力の強さも目立つ。29日に発表された2月の個人消費支出(PCE)物価指数では総合指数の伸び率が前年同月比2.5%となり、5か月ぶりに前月(2.4%)を上回った。また4月1日に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した3月の製造業景況感指数は1年6か月ぶりに50を超え、業況拡大を示す領域に戻っている。原油価格の上昇も物価を引き上げる要因だ。
ドル円相場では円高ドル安が進展
しかしFRBの利下げ見通しをめぐる金融市場の反応は複雑だった。LSEGのデータによると、バーキン氏やカシュカリ氏の発言が伝わった後、ユーロドル相場(EUR/USD)やポンドドル相場(GBP/USD)はドル高で反応。一方、米国の長期金利(10年物米国債利回り)は上昇後に下落に転じ、4日のニューヨーク市場の終値は4.309%となった。前日よりも0.046%ポイント低い水準だ。こうした中、ドル円相場(USD/JPY)では円高が進み、日本時間5日の取引では3月22日以来となる1ドル=150円台をつける場面も出ている。
アメリカ経済はいずれは減速するとの見通しも
米国経済をめぐっては、底堅さが物価上昇の根強さを感じさせてはいるが、FRBが政策金利を5.25-5.50%という高水準に維持する中、いずれは経済が減速するとの見方も根強い。ISMが3日に発表した非製造業(サービス業)景況感指数は51.4となり、前月の52.6や事前予想の52.7を下回った。バーキン氏も講演で「FRBによる金融引き締めはいずれは経済をさらに減速させる」との見通しを示している。
政策金利の高止まりが続けば、それだけ経済活動に与えるマイナスの影響も積み重なっていく。物価上昇の根強さの結果、FRBの利下げが遅れていった場合には、その後の経済の落ち込みも大きくなると見通しも成り立ちそうだ。
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