原油価格が5か月ぶり高値 中東情勢悪化で85ドル台 需要は減少?
原油価格の上昇は産油国間の対立も落ち着かせている。たた、アメリカでは需要減少を感じさせる数字も出ている。
原油価格が5か月ぶりの高値で推移している。原油先物市場の指標価格であるWTIの3日の終値は2日連続で1バレル=85ドル台を記録。イスラエルがシリア首都にあるイラン大使館を攻撃したとの報道が原油供給への不安を高めた結果だ。一方、サウジアラビアやロシアなどで作る産油国グループのOPECプラスは3日に開かれた会合に際して参加国の結束を強調しており、原油高に満足感を抱いているようだ。ただ、アメリカでは原油需要の衰えを予感させるデータも出ており、今後も値上がりが続くかどうかには不透明さも残る。
原油価格は4営業日続伸で5か月ぶり高さに
LSEGのデータによると、WTI(WTI)の3日の終値は前日比0.33%高の1バレル=85.43ドル。4営業日続伸で10月27日(85.54ドル)以来の高水準に達した。イスラエルがシリア首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺にミサイル攻撃を加えたと1日に報じられたことが影響している。イスラエルはパレスチナのガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマスとの戦闘が長期化しており、ハマスを支援するイランとの対立がさらに深刻化すれば、戦火の拡大も懸念される。
原油価格はOPECプラスの減産延長を背景に9月27日に93.68ドルをつけた後、今度は減産が拡大しないことが嫌気されて値下がり傾向に転換。しかし2024年に入ってからは米英軍がイエメンの親イラン武装組織フーシの拠点を攻撃したことなどをきっかけに上昇基調が続いていた。2月にイスラエルが休戦案を拒否した際も原油価格上昇を加速させている。
OPECプラスは参加国間の結束を強調
こうした中、OPECプラスは3日に開いた合同閣僚監視委員会(JMMC)後に発表した声明で参加国が割り当てられた減産規模を順守していることを歓迎。イラクとカザフスタンが過去の超過生産分を帳消しにする措置に合意したことも明らかにした。
またロシアは4-6月期について、輸出量と生産量をベースとした供給削減を約束してきたが、他の参加国と同様に生産量だけに基づいた約束に切り替える。ロシアのアレクサンダー・ノバク副首相は3日、「4-6月期に日量47.1万バレルの自主的な生産量減産を行う」と発表した。
OPECプラスをめぐっては、11月30日の閣僚会合に際して、サウジアラビアが目指した協調減産に合意できず。実質日量90万バレルの追加的な自主削減を発表したが、12月にアンゴラが脱退を表明するなど、産油国内での足並みの乱れが指摘されてきた。ただ、その後は原油価格が上昇する中で、参加国同士の対立は落ち着いているようだ。
アメリカの原油在庫は7月下旬以来の高さまで増加
ただ、今後の原油価格は需要面から下押し圧力が強まる可能性もある。3日に米エネルギー情報局(EIA)が公表した3月29日時点の原油在庫は4億5142万バレルで、7月下旬以来の高さになった。
アメリカ経済に対しては、物価上昇を抑えながらも景気後退を回避する軟着陸(ソフトランディング)への期待が続いているが、金利の高さが今後の経済活動を下押し、原油需要が減少する筋書きも考えらえる。原油価格の上昇自体も経済活動の下押し要因といえるだけに、今後、米国経済の悪化が表面化して原油市場の動向を反転させる可能性もある。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。