原油価格、一時2.7％高　米英軍がフーシ拠点を攻撃　中東情勢混迷

原油先物市場で指標価格のWTIが急騰している。LSEGのデータによると、12日は1バレル＝73ドル台後半で推移。前日のニューヨーク市場の終値比では、一時2.7％高となる場面もあった。アメリカ軍とイギリス軍がイエメンの親イラン武装組織フーシの関連施設を攻撃し、中東情勢の緊迫化に対する懸念が強まっている。米英の攻撃はフーシが2023年11月以降繰り返している紅海を通過する民間船舶への攻撃への対応。紅海は原油や液化天然ガス（LNG）にとっての重要航路で、今後の情勢変化がエネルギー価格に影響を及ぼすおそれがある。

WTIは一時、1バレル＝73.97ドルまで上昇

LSEGによると、WTI（WTI）の先物価格（翌月渡し）は日本時間12日午前10時45分ごろに一時、1バレル＝73.97ドルをつけた。前日のニューヨーク市場の終値（72.02ドル）から２ドル近く上昇した形で、その後も73ドル台後半での取引が続いている。

WTIを急騰させたのは米英軍によるフーシに対する攻撃だ。米国のジョー・バイデン大統領は11日夜（日本時間12日午前）に発表した声明で、「イエメンにおけるフーシの数多くの拠点への攻撃に成功した」と明かした。攻撃は米英軍によって行われ、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダからの支援を受けたという。

フーシによる紅海船舶への攻撃は50か国に影響

声明はフーシが紅海における民間船舶に攻撃を繰り返していることを非難。今回の米英軍による攻撃は「前例のないフーシの攻撃に対する直接的な対応だ」としている。声明によると、これまでのフーシによる27回にわたる国際海運に対する攻撃で、50か国以上が影響を受けた。フーシは9日にも米国船を狙ったこれまでで最大の攻撃を行ったという。

また、オーストラリア、バーレーン、カナダ、デンマーク、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、韓国も11日、米英とともに共同声明を発表。「フーシによる11月中旬以降の24回以上にわたる商船への攻撃は国際社会に試練をもたらしている」とし、航行の自由や国際貿易の確保や、違法で不正な攻撃から船舶乗員の生命を守ることへの決意を示している。国連安全保障理事会は10日、フーシによる攻撃を非難し、即時の攻撃停止を求める決議を採択した。

紅海は原油やLNGの重要航路

米英によるフーシへの攻撃は、イスラム組織ハマスとイスラエルの間の戦闘長期化で混迷する中東情勢をさらに複雑化させる可能性がある。フーシはハマス同様にイランからの支援を受けているとされ、紅海上の民間船舶への攻撃をハマスとの連帯を示す行為だと位置づけているためだ。紅海は原油海運の12％、液化天然ガス（LNG）の8％が通過する重要な航路で、今回の米英軍の攻撃を受けてフーシからの反撃が激化すれば、エネルギー価格や物価情勢に影響が及ぶことも考えられる。