原油価格じわじわ上昇 中東情勢悪化で80ドル迫る 物価上昇に影響も
原油の指標価格であるWTIは1バレル=80ドル台が目前。中東情勢悪化が要因だが、需要増加減速見通しなどの下押し要因もある。
原油先物市場で指標価格のWTIがじわじわと上昇を続けている。LSEGのデータによると、16日の終値は79ドル台をつけ、約3か月半ぶりの高値。2023年末比で10%超の値上がりとなった。背景のひとつとなっているのは、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘のさらなる長期化への懸念。一方では、原油需要増加の減速見通しやFX市場でのドル高といった値下がり要因もあるが、上昇圧力が勝っている形だ。原油価格が今後も値上がりしていけば、アメリカの物価上昇に影響を及ぼす可能性もあり、80ドル超での推移につながるかどうかに市場の注目が集まりそうだ。
WTIの2023年末比の上昇率は10.52%
LSEGによると、WTI(WTI)の16日の終値は前日比1.49%高の1バレル=79.19ドル。2月に入ってからの12営業日中、下落は3日だけで、上昇気流にのっている。2023年末比での上昇率は10.52%に達し、2023年11月6日以来の80ドル台が近づいてきた。
原油価格上昇の背景にあるのは中東情勢の悪化だ。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相がハマスが提示した休戦案を拒否した翌日の8日には、原油価格は3.20%値上がり。1月3日(3.30%)以来の大きな上昇率となった。原油価格は1月11日に米英軍がイエメンの親イラン武装組織フーシの拠点を攻撃したと発表した後にも上昇が続いており、イスラエルの休戦拒否が改めて中東の地政学リスクの大きさを意識させたとみられる。アメリカやカナダの厳冬で原油生産が落ち込んだことも値上がり要因として働いている。
2024年の原油需要の増加は減速の予想
一方、原油市場をめぐってはこのところ下押し要因も目立つ。国際エネルギー機関(IEA)は15日発表の原油需要見通しで「原油需要の増加は勢いを失っている」と分析。2024年の需要増加量は日量約120万バレルとなり、2023年の約230万バレルから減速するとした。また、サウジアラビアやロシアなどで作る石油輸出国機構(OPEC)プラスの参加国が減産を続ける中でも、アメリカなどの非参加国の増産の結果、2024年の原油供給量は日量170万バレル増えるとみている。
FX市場で進むドル高も原油市場の下押し要因だ。LSEGによると、ドルの相対的な強さを示すドルインデックス指数(DXY)は16日に104.30となり、2023年末(101.33)から2.93%上昇。ドルが強くなれば、アメリカ以外の市場参加者からみた原油価格は割高になり、買い圧力を弱めるとされる。さらに米エネルギー情報局(EIA)が14日に公表した9日時点の原油在庫が4億3945万バレルで、市場予想を上回ったことも値下がり要因といえる。
こうした中、今後の原油市場の焦点はWTIが80ドルの節目をクリアするかどうかだ。中東情勢の緊迫化はこれまで原油価格に対する継続的な上昇圧力にはなってこなかったが、混乱が長期化していけば改めて値上がり要因として意識される可能性もある。原油価格が80ドルから90ドル台へと上昇していった2023年8月や9月には、アメリカの物価上昇率が加速する事態も起きただけに、今後の動向に対する金融市場からの注目が高まりそうだ。
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