NY金相場、反落も「米国売り」で安全資産としての存在感が増す、金価格の見通し
トランプ関税リスクによる「米国売り」で、安全資産としてのゴールドの存在感が増している。金価格は強気地合いを維持することが予想される。反落の局面では押し目買いを狙いたい。

記事のサマリー
週明け14日のNY金相場は反落スタートとなった。しかし、トランプ関税による「米国売り」が安全資産としてのゴールドの存在感を高めている。中銀の買いも金相場を下支えする要因となろう。今週も強気地合いを維持する場合、スポット金価格は3,300ドルを視野に上昇幅が拡大する展開を想定したい。一方、調整売りで相場が反落する局面では、押し目買いを狙いたい。
スポット金価格、週間で20年3月以来の大幅上昇
トランプ米政権の相互関税を受け貿易戦争への懸念が強まっている。特に米国と中国の間で関税引き上げの応酬が激化していることで、安全資産の買い需要が強まっている。
特に選好されているのが金(ゴールド)である。この点を示唆しているのが、スポット金価格の動向である。先週の国際商品市況でスポット金価格は、史上初めて3,200ドル台へ上昇した。1トロイオンス=3,245ドル(IGレート)まで上昇し、最高値を更新した。週間の上昇率は6.56%。2020年3月以来の大幅上昇となった。
スポット金価格 週間変動率:2020年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 2025年4月11日の週までの動向
「米国売り」が高めるゴールドの存在感
先週、スポット金価格の上昇幅が拡大した主因は、「米国売り」にある。現在は、貿易戦争の激化で米景気の先行き懸念が意識される状況にある。本来であれば、安全資産の米国債はゴールドと同じく買い需要が強まる局面にある。しかし、実際は米国債の売りが続き、先週11日に10年債利回りは先週4.586%まで上昇する局面が見られた。週明けは米国債を買い戻す動きが見られたが、4.37%台で高止まりしている。米国債の予想変動率「MOVE指数」も一時2023年10月以来の水準(141.67)まで上昇する局面が見られた。その後は低下しているが昨日は132.46と、米大統領選挙が行われた昨年11月の高水準で推移する状況にある。今週も突然の米国債売り(金利の上昇)を警戒したい。
一方、外為市場では米ドル売りが進行している。本来であれば、上で述べた米金利の上昇は米ドル買いの要因である。しかし、ドル指数(DXY)は2022年4月以来の水準まで急落する状況が見られた。米国債の売りに連動し米ドルまでが売られる今の状況は、金融市場がトランプ関税のリスクを意識した「米国売り」の状況に陥っていることを示唆している。そしてこの米国売りは、安全資産としてのゴールドの存在感を高めている。
米国10年債利回りとドル指数:1時間足 4月7日以降

出所:TradingView
中銀の買いも金価格の下支え要因に
「米国売り」の他にも金価格を下支えする要因がある。それが中銀の買いである。米国との貿易戦争が激化している中国の金保有量が増加している。中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した3月末の外貨準備の内訳によれば、5カ月連続で増加した。金準備は米ドル換算で2,296億ドルとなり、外貨準備の総額(米ドル換算)に占める割合が6%に達している。中国と同じくロシア中銀の金保有も2024年以降、増加の傾向にある。3月末時点での金準備は米ドル換算で2,289億ドルとなった。
中国やロシアの他にも米国と対立する国がある。これら国々の中銀は、米国と対立する際の制裁圧力緩和を目的に今後も金の保有量を増やしていくことが予想される。中銀の買いも中長期的に金価格を下支えする要因となろう。
中国とロシアの金準備(米ドル換算):2016年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
金価格の見通しと注目のテクニカルライン
2つのレジスタンスライン
日足のMACD、DMI、ADXのトレンドは、スポット金価格(以下では金価格)が強気地合いにあることを示唆している。今週もこの地合いを維持する場合、金価格は2つのフィボナッチ・エクステンション100%の攻防に注目したい。
その一つが、現在レジスタンスラインとして意識されている3,244ドルである。このテクニカルラインを突破すれば3,250ドル、3,260ドルと10ドルのレンジで上値の攻防を見極めながら、もう一つのフィボナッチ・エクステンション3,291ドルのトライを想定したい。後者のテクニカルラインの突破は、節目の3,300ドルをトライするサインとなろう。
レジスタンスライン:日足
・3,300:レジスタンスライン
・3,291:フィボナッチ・エクステンション100%
・3,244:フィボナッチ・エクステンション100%
金価格のチャート:日足 2月下旬以降

出所:TradingView
3,167の攻防に注目
調整売りで金価格が下落する場合は、以下にまとめた3つのサポートラインの攻防に注目したい。特に、4月3日の高値3,167ドルの攻防に注目したい。この水準がサポートラインへ転換すれば、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準3,180ドルの下方ブレイクは、3,167ドルをトライするサインとなろう。
金価格が3,167ドルを下方ブレイクする場合は、11日のIGコモディティレポートで取り上げた3,140ドルのトライを想定したい。この水準は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%戻しの水準にあたる。
今回取り上げたサポートラインを金価格がトライする局面で、ストキャスティクスとRSIがともに売られ過ぎの水準まで低下している場合は、ゴールド買いを考えたい。
サポートライン:45分足
・3,180:23.6%戻し
・3,167:4月3日の高値
・3,140:38.2%戻し
金価格のチャート:45分足 4月8日以降

出所:TradingView
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