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米国株、大幅利下げに冷淡 S&P500最高値届かず 景気見通し不安

アメリカの18日のS&P500は、FBRの大幅利下げにも関わらず、小幅安で終わった。FRBが利下げで出遅れたとの懸念がくすぶっている。

米国株、大幅利下げに冷淡 S&P500最高値届かず 景気見通し不安 出所:Adobe Images

アメリカの株式市場が米連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利下げに冷淡な反応を示した。FRBは18日に連邦公開市場委員会(FOMC)を終え、政策金利の0.5%引き下げを決定。大幅な利下げは金利水準の低下を促す株高材料といえるが、S&P500種株価指数の18日の終値は前日比0.29%安で終わった。7月中旬につけた最高値の更新はならず、大手ハイテク株や半導体株の反応も鈍かった。株式市場の静かさの背景には景気の見通しに対する不安がある。ジェローム・パウエル議長は18日の記者会見で米国経済の健全性を強調したものの、長期間にわたって高水準に据え置かれた政策金利が景気を冷やす効果がこれから出てくるとの不安は拭えない。18日の金融市場では投資家心理の悪化もみられ、S&P500にとっての足かせになりそうだ。

【関連記事】米国株、熱狂なき最高値 S&P500上昇減速 長期金利の見通しは?(2024年9月21日)

FRBはFOMCで4年半ぶり利下げを決定 0.5%幅 

FRBは18日までのFOMCで政策金利を4.75-5.00%にすることを決めた。2023年7月以降続いてきた5.25-5.50%の水準から、0.5%幅での利下げとなる。政策金利の変動幅として一般的な0.25%よりも大幅な利下げは米国の金融政策が節目を迎えたことを意味する。パウエル氏はFOMC後の記者会見で利下げの理由について、「物価上昇率が上振れするリスクは低下し、雇用が下振れするリスクは高まった」と述べた。

FRBの政策金利と失業率、物価上昇率、S&P500の推移のグラフ

またFRBは利下げと同時に公表した経済見通しで、12月FOMC後の政策金利が4.4%になるとの方向性を示した。11月と12月のFOMCで合計0.5%幅の利下げが行われることが示唆された形で、金融市場で浸透していた、金利が今後も低下していくとの見通しを裏付けた。

FOMC参加者が示した政策金利の見通しのグラフ

アメリカのS&P500は小幅安 利下げ発表直後の勢い保てず

こうした発表を受けて18日の株式市場ではS&P500(SPX)は上下に動いた。S&P500はFOMCの結果発表後、一時、前日終値比0.98%高にあたる5689.75まで上昇。しかし勢いは30分ほどしか続かず、終値では0.29%安の5618.26まで沈んだ。7月16日につけた終値ベースでの最高値(5667.20)には届かなかった形だ。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

大手ハイテク株と半導体株はともに冴えない値動き

S&P500の上昇を引っ張ってきた大手ハイテク株の値動きも冴えなかった。半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価は4営業日続落の前日比1.92%安。マイクロソフト(MSFT)は8営業日ぶりの下落となる1.00%安だった。一方、アップル(AAPL)は1.80%高の値上がりをみせたが、FRBの大幅利下げが大手ハイテク株の見通しを明るくしたとは言い難い。

エヌビディア、アップル、テスラ、マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コムの株価の推移のグラフ

またエヌビディアと同様に、他の主要な半導体株でも値下がりが目立った。アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価は前日比1.68%安。半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も1.30%安と不振だった。S&P500構成銘柄ではない英半導体大手のアーム・ホールディングス(ARM)は1.11%高と健闘したが、やはりFRBの決定が半導体株全体の追い風になったわけではないようだ。

エヌビディアなどアメリカの主な半導体株の値動きのグラフ

アメリカ経済の見通しに懸念 FRBの利下げは出遅れか

S&P500の見通しが晴れなかった背景には、米国経済の悪化に対する根強い懸念がある。中でも労働市場をめぐる不安は大きい。8月の失業率は4.2%で、1月の3.7%からの上昇傾向は明らかだ。政策金利が1年2か月にわたって高水準に据え置かれたことが経済活動を冷やしていると考えれば、今になって利下げに踏み切っても簡単には労働市場の悪化を食い止められないおそれがある。

こうした懸念に対し、パウエル氏は記者会見で失業率は悪化しているとはいえ、歴史的にみれば低水準であると強調。「われわれは出遅れているわけではない」「利下げのタイミングはタイムリーなものだ」などと繰り返した。また景気後退の見通しについて問われた際には、「景気悪化の可能性が高まっていることを示唆する要素はみられない」とも述べた。

アメリカの投資家心理は悪化 物価上昇鎮静化にも不安

ただ、18日の株式市場の値動きはパウエル氏の発言が素直に受け止められなかったことを意味する。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の18日の終値は18.23で、前日から0.62ポイント上昇した。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数値が大きいほど今後の値動きが荒くなることに対する投資家の警戒感が高いこと示す。

VIX指数とS&P500の推移のグラフ

さらに米国経済をめぐっては、物価上昇率高止まりへの懸念もくすぶっている。パウエル氏は記者会見で、27日に発表される8月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率について、総合指数で前年同月比2.2%、食品とエネルギーを除いたコア指数で2.7%になるとの見通しに言及。総合指数は7月の2.5%から低下する一方、コア指数は2.6%から上昇するとの見立てだ。パウエル氏は記者会見で、物価上昇との闘いが終わったわけではないとも述べている。

FRBの大幅利下げにも関わらず、投資家の脳裏にはFRBが後手に回ったとの不安がつきまとっている。S&P500の今後の見通しは引き続き、労働市場と物価上昇の動向が投資家の懸念を解消できるかどうかにかかってきそうだ。


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