米国株、AI投資追い風　S&P500週次連騰　エヌビディアの見通しに光

アメリカの株式市場が人工知能（AI）開発投資に前向きな反応を示した。24日のS&P500種株価指数の終値は1週間前比で1.74％高。20日のドナルド・トランプ大統領の就任を挟んだ2週連続での上昇で勢いをみせた。トランプ氏がAI投資に意欲をみせる中、AI開発に積極姿勢をみせたメタ・プラットフォームズなど大手ハイテク株や半導体大手NVIDIA（エヌビディア）などが値上がりしている。ただし来週（27-31日）にはメタをはじめとする大手ハイテク各社の決算が予定され、S&P500の勢いが削がれる可能性もありそうだ。また、28、29日には米連邦公開市場委員会（FOMC）も開かれ、米連邦準備制度理事会（FRB）の情報発信次第で、S&P500の今後の見通しが下押しされることも考えられる。

アメリカのS&P500は2週連続で上昇　トランプ政権発足を歓迎

S&P500（SPX）の24日の終値は前日比では0.29％安の6101.24。23日につけた1か月半ぶりの最高値（6118.71）からは後退したが、6100台を維持する底堅さをみせた。S&P500はトランプ氏の就任を前にしてムードが明るくなった前週（13-17日）も2.91％高となっており、トランプ政権の発足は前向きに受け止められたといえる。

S&P500の見通しにとって安心材料となったのはトランプ氏が就任直後に中国からの輸入品に高関税をかけるといった極端な対決姿勢をとらなかったこと。トランプ氏は24日のインタビューでも中国への高関税について「むしろ使いたくない」と述べており、投資家の不安は和らいだようだ。

メタは2025年に600億-650億ドルの設備投資　株価は上昇

投資家の楽観ムードはメタの値動きにも表れている。マーク・ザッカーバーグCEOは24日にフェイスブックへの投稿で、「今年（2025年）は600億-650億ドルの設備投資を計画している」との見通しを表明。24日のメタの株価（META）は5営業日続伸の前日比1.73％高となった。24日までの週次では5.67％高という好調さだ。メタは29日に2024年10-12月期決算を発表するが、事前に設備投資額の見込みを公表する異例の対応でAI投資に意欲をみせたといえる。

メタは2024年10月30日の7-9月期決算発表では設備投資負担の重さが嫌気されて株価が下落した。ザッカーバーグ氏が示した2025年の見込み額は2024年よりも6割前後高くなる水準で、株価を下押しする可能性もあったが、今回の発表では投資家に歓迎された形だ。

トランプ氏はAI開発に意欲　エヌビディアは週次で3.57％高

メタの株価の値上がりはトランプ氏によってお膳立てされていたともいえる。トランプ氏は21日にソフトバンクグループ（9984）の孫正義社長らとの会見で、AI開発拠点の建設などで米国内に5000億ドルを投じる「スターゲート・プロジェクト」を発表。テクノロジーパートナーに名を連ねたエヌビディア（NVDA）の株価は24日までの週次で3.57％高、マイクソフト（MSFT）の株価も3.50％高となっている。S&P500構成銘柄ではないものの、ソフトバンクグループの子会社でやはりテクノロジーパートナーとなっている英半導体大手アーム・ホールディングス（ARM）の株価も週次8.88％高となっており、半導体株の見通しには光が差している。

こうした中、トランプ氏の就任前に個人投資家の間で膨らんでいた見通しへの不安は解消されたようだ。米個人投資家協会（AAII）が23日に発表した週次調査では、今後6か月でS&P500が上昇するとみる強気の投資家の割合は全体の43.4％となり、前週の25.4％から一気に増えた。

メタやマイクロソフトの決算発表はS&P500の見通しを左右

ただ、S&P500の今後の見通しは大手ハイテク企業の決算発表で左右される可能性がある。巨額の設備投資が歓迎されたメタも、決算発表で総収入が伸び悩むなどすれば、投資負担が重荷になるとの見方が株価を下押しすることも考えられそうだ。ブルームバーグのデータによると、AIブームが本格化した2023年以降、足元までにS&P500の水準は約1.6倍になっているものの、予想1株当たり利益（EPS）は約1.2倍にしかなっておらず、株価の過熱感は否めない。メタと同じく、29日にはマイクロソフトとテスラ（TSLA）も10-12月期決算を発表。30日にはアップル（AAPL）も決算発表を予定している。

さらにFRBが29日まで開くFOMCも相場を動かす要因だ。金融市場では政策金利の維持が確実視されているが、ジェローム・パウエル議長の記者会見などで2025年の利下げペースが緩まる見通しが強まれば、S&P500にとっては逆風になりえる。トランプ氏が打ち出す減税路線や規制緩和は経済活動を刺激して物価上昇の材料となりえるだけに、AIブームへの期待で勢いづくS&P500に冷や水がかかる可能性も拭えない。