原油価格は下落基調か　WTI反発停止　米大統領選挙の見通しも影響？

原油価格の反発にブレーキがかかった。原油先物市場の指標価格であるWTI（翌月渡し）は日本時間23日午前の取引で71ドル台前半で推移。前日の72ドル台から後退している。原油価格は中国経済への楽観的な見方を背景にして、68ドル台の底値から反発していたが、勢いが途絶えているようだ。金融市場で注目が集まる11月5日のアメリカ大統領選挙ではドナルド・トランプ前大統領が優勢になっているとの見通しも出始め、高関税や米国内での原油開発促進を目指すトランプ氏の勝利が原油安につながるとの見立てが影響している可能性もありそうだ。

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原油価格の反発停止　23日のWTIは71ドル台で推移

LSEGのデータによると、WTI（WTI原油）は日本時間23日午前に一時、1バレル＝71.30ドルをつけた。22日のニューヨーク市場の終値（72.09ドル）から1.10％の値下がりにあたる水準だ。原油価格はイスラエルが検討しているイランへの攻撃が限定的になるとの見通しなどを背景にして、18日には一時68.69ドルまで下落。その後、21日と22日は続伸して72.66ドルをつける場面もあったが、23日は反発にブレーキがかかったといえる。

中国の原油需要に「強気」な見方も　米国の需要にも底堅さ

22日までの原油価格の反発には中国での原油需要回復への楽観的な見方があった。中国政府は12日に国有大手銀行への資本注入を含む景気刺激策を発表。21日には中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が企業向け貸し出し金利の指標となる最優遇貸出金利（LPR）の引き下げを発表した。ロイターによると、サウジアラビア国営石油会社のサウジアラムコのアミン・ナセルCEOは21日、シンガポールでの国際会議に際して、中国の原油需要について「かなり強気だ」と言及。長期的な世界全体の原油需要についても、再生可能エネルギーの増加だけでは必要なエネルギーを賄えないとの見方を示した。

また、米国でも原油需要の底堅さがみられている。米エネルギー情報局（EIA）によると、11日時点の米国の原油在庫（戦略備蓄除く）は1週間前から219.1万バレル減少。ロイターがまとめた市場予想の183.5万バレル増加とは対照的な在庫の取り崩しで、原油需要の強さを印象づけた。23日午前10時30分（日本時間23日午後11時30分）に発表される18日時点の在庫は27万バレルの増加となる見通しだが、在庫の減少が確認されるなどすれば原油価格に上昇圧力がかかる可能性がある。

アメリカ大統領選挙はトランプ氏が優勢か　原油価格下落見通しも

ただ、金融市場で注目が集まる米国大統領選まで2週間を切り、トランプ氏の勝利を見込む報道も目立ち始めた。米紙ウォールストリート・ジャーナル（WSJ）は22日に「ウォール街の投資のプロがトランプ氏の勝利で利益を生むポジションをとっている」と題する記事を掲載。英紙デイリー・テレグラフも22日に「ドナルド・トランプ氏勝利の確率は66％」とする記事をアップした。

実際に株式市場では「トランプ銘柄」と位置付けられる企業の株価が上昇している。米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスの世論調査のまとめでも、大統領選の勝敗を左右する接戦州でトランプ氏が選挙戦を有利に進めているようだ。

トランプ氏が打ち出す高関税政策は米国内の物価高や金利高を連想させ、原油価格の下落要因とみなされるドル高を招く可能性がある。またトランプ氏が米国内の原油開発を進めるとしていることも、原油供給を増やして原油価格に下落圧力をかけるとの見通しを意識させる。接戦州の行方は今後、変化する可能性があるものの、現段階では「トランプ氏有利」のシナリオが相場を動かしているといえそうだ。