米国株に新たな逆風? 半導体株が軒並み下落 S&P500見通しに影
アメリカのS&P500は13日は小幅な反発。大統領選挙後の楽観ムードは薄れてきた。半導体株の不振の背景にはTSMCの月次業績などがあり、不安はくすぶる。
アメリカの株式市場で楽観ムードが薄れてきた。13日のS&P500種株価指数の終値は小幅な反発。大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利で火が付いた電気自動車(EV)大手テスラの株価の急騰もこのところは落ち着きをみせている。また13日は半導体株大手NVIDIA(エヌビディア)をはじめとする半導体株が軒並み下落。人工知能(AI)ブームの継続への不安も漂い始めた。一方、13日に発表された10月の消費者物価指数(CPI)は市場予想通りの結果で、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測は強まった。しかし半導体株はS&P500上昇の原動力となってきただけに、足元の不振がS&P500の今後の見通しにとって逆風となる可能性もくすぶっている。
アメリカのS&P500はほぼ横ばい 大統領選挙後のお祭りムードは後退
S&P500(SPX)の13日の終値は前日比0.02%高の5985.38。前日の0.29%安から反発したものの、ほぼ横ばいといえる小幅な上昇だった。S&P500は大統領選挙当日の5日から11日にかけて5連騰してきたが、トランプ政権下での減税や規制緩和の見通しを材料視したお祭りムードは落ち着いてきた。
テスラの株価急騰も一服 トランプ氏はマスク氏の政権入りを公表
実際、大統領選挙後に急騰したテスラの株価(TSLA)は12日に前日比6.15%となった後、13日は0.53%の反発。5日から11日にかけての5連騰で44.13%増となった爆発的な値上がりにはブレーキがかかったといえる。トランプ氏は12日に「政府効率化省」を、テスラのイーロン・マスクCEOと実業家のビベック・ラマスワミ氏が率いることになると発表した。過剰な規制を廃止し、無駄な支出を減らすことなどが目的だというが、どこまでテスラの業績にプラス効果が及ぶかははっきりとしない。
半導体株の見通しの悪さの背景には台湾積体電路製造(TSM)が8日に発表した10月の総収入がありそうだ。前年同月比29.2%増の3142.40億台湾ドルは、9月の39.6%増から大きく成長が鈍化しており、2月(11.3%増)以来の低い伸びになった。TSMCはエヌビディアなどの多くの顧客企業を持つ、半導体受託製造の最大手なだけに投資家の不安を強めている。
またトランプ氏の対中外交政策も半導体企業には不安要素だ。トランプ氏は13日に国務長官候補としてマルコ・ルビオ上院議員を指名すると発表。ルビオ氏は中国に対する強硬姿勢で知られ、1月からのトランプ政権の対中政策が厳しくなることを感じさせる。エヌビディアをはじめとする半導体企業は中国向けの売り上げも多く、トランプ政権下での対中強硬姿勢は業績見通しを暗くしかねない。
10月CPIは市場予想通り FRBの利下げ見通しは強まる
一方、13日に発表された10月CPIの伸び率は総合指数が前年同月比2.6%、食品とエネルギーを除いたコア指数が3.3%で、いずれもLSEGがまとめた市場予想通りの結果だった。また、物価上昇の根強さの要因となっている家賃の伸び率は9月と同じ4.9%で、やはり過熱感はなかった。
こうした中、金融市場ではFRBが12月17、18日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに踏み切るとの見通しが強まっている。CMEグループのデータによると、12月の0.25%利下げについて投資家の動向から算出される確率は日本時間14日午前11時20分段階で約83%となっており、前日朝の60%程度から高まっている。S&P500の見通しにとっては好材料といえそうだ。
ただ、米国の株式市場はAIブームへの期待で押し上げられてきた側面があり、半導体株の不振はS&P500の今後の見通しを悪くすることは間違いない。エヌビディアは20日に2024年8-10月期決算発表を予定しており、結果次第では株式市場全体に動揺が走ることも考えられそうだ。
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